10
走る走る走る
本日2回目の猛ダッシュin階段
てか、アパートに逃げるって詰みでしょう!
籠城するの?
「清美ちゃん!鍵すぐ出せる?」
振り向いて走りながら話しかけられる
「はい!カバンにつけてるんで」
と言って勉強道具を入れていたカバンを見せるとミツキさんは
「貸してっ」
と言うのと同時に乱暴に私のカバンを取る
少しびっくりはした
そして階段を駆け上がると鍵を開ける
開かない
「ミツキさん!うちの家 上下共に鍵をかけてます」
我が家はツーロックだ
こんな所であだになってしまう
私も以前は上だけロック派だった
ミツキさんが慌ててしゃがんで二段目を開ける
まっくろいやつがもう階段のすぐそこにきている
ガチャリ
2人で駆け込む
…けど間に合わない
まっくろい手が玄関に入っている
「うっわぁぁあぁ」
ミツキさんはドアを閉める手を緩めない
そしてまっくろさんの手は玄関に入っている
そう、まっくろさんが挟まってるぅう
でも緩めた瞬間このまっくろさんだかいうやつは入ってくる
黒い手が伸びてくる
私は玄関脇の傘が目に入った
私はそれを掴んでまっくろさんをぶったたく
が、腕は止まらない
ドアを抑えるミツキさんの手をギリギリとしめつけはじめた
それでもミツキさんはしっかりとドアを握りし閉め続ける
男子にしては細いその腕から ぎりぎりと嫌な音が聞こえる
やらなくちゃ このままじゃミツキさんが…
私はまっくろさんの体を叩くのをやめた
そして、傘を斜め上に向ける
その傘を、
目に向かって、思いっきり突き刺した
私が目だと思って突き刺した所は目だとは限らない
全身まっくろいのだから顔なんてよくわからないし、そもそも顔があるんだろうか
でも、そのまっくろい体から
赤い赤い赤い赤い血が 溢れ出る
まっくろさんがドアから離れた
素早くドアを閉めた
ガンガンと蹴られるたび、揺れるドア
震えが止まらない
家の奥に走ろうとしたとき
何かの破壊音が聞こえた
ハッとしてドアをみる
チェーンロックは壊れていない




