7話 井の中の蛙地獄へと落ちる。
目を覚ますと目の前にはどこまでも続く暗闇。
背中にはゴツゴツとした地面の感触。
体中を鈍い痛みが支配しており、ひどい頭痛で今にも吐き出しそうだ。
ここは……?
『リエール地下迷宮88階層です。 勝手ではありますが緊急時につき衝撃耐性スキルLv.5をスキルポイント50と毒牙スキルLv.6をスキルポイント40に還元し、合計90スキルポイントで習得しまました。』
なるほど、衝撃耐性をマユが取ってくれたおかげで助かったのか。
(ありがとうマユ。)
俺はすぐにステータスを表示する。
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名前:
種族名 ドクドフロッグ
Lv.8
HP:1/25
MP:28/28
SP:5/15
スキルポイント:0
*スキル*
【マユの声】【痛み耐性Lv.6】【衝撃耐性Lv.5】new【腐食耐性Lv.1】【鑑定Lv.7】【毒生成Lv.6】【成長Lv.5】【毒無効】【隠密Lv.8】【気配察知Lv.3】【暗視Lv.4】
*称号*
【愛に生きる者】【共喰い】【毒使い】【殺し屋】
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HPが残り1か。
まずいな。
すぐに身を隠さないと。
ここが本当に88階層だとしたらどれだけ強い魔物が出るのかわかったもんじゃない。
俺は痛む身体を引きずりながら壁を毒で溶かし拠点を作る。入り口はできるだけ小さくし空気穴をいくつか開けておく。
そして大の字に寝転ぶと、また意識を失うかのように目を閉じた。
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目を覚ます。
体の痛みは随分と軽減されていた。
『おはようございます。 睡眠中に痛み耐性スキルがレベルアップしました。 スキル【自然治癒Lv.1】を取得しました。』
どうやらスキルのおかげで痛みが治まっていたようだ。
それに自然治癒というスキルのおかげでHPが半分程回復していた。
レベル1でこの回復量から考えるとかなりの長時間眠っていたらしい。
取り敢えずは現状の確認だな。
俺は拠点から出て警戒しながら道を進む。
するとすぐに気配察知で魔物の気配を感じた。
いつものように天井に張り付いて近づいていくとそこにいたのは二つ首の狼のような魔物だった。
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種族名:ツインヘッドウルフ Lv.102
HP:958/958
MP:856/856
SP:1053/1053
*スキル*
【嗅覚強化Lv.6】【焔纏Lv.3】【凍纏】【威嚇Lv.4】【咆哮Lv.6】【属性付与Lv.5】【氷結耐性Lv.9】【火炎耐性Lv.9】【異常属性耐性Lv.8】
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あぁ、だめだ。
死んだわ俺。
勝てるわけねぇじゃん!!
あの勇者程じゃないけどさ!
強過ぎるよ!
俺レベル8だぜ!?
どうやって100越えの相手と戦えってんだよ。
(ちなみに勝率は?)
『戦闘、暗殺共に0%です。』
ですよねー。
さて、逃げるか。
俺はそのまま気がつかれないように二つ首の狼から離れる。
そして他の魔物を探すが……
群れて行動している兎に追いかけられ……
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種族名:リエールエンドデスラビット Lv.85
HP:758/758
MP:582/582
SP:595/595
*スキル*
【聴覚強化Lv.6】【逃げ足Lv.5】【群生Lv.6】【脚力強化Lv.8】【遠吠えLv.5】【気配察知Lv.7】【異常耐性Lv.3】
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水場があったと思えば巨大なワニみたいなやつに襲われそうになり……
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種族名:リエールデスクロコダイルLv.105
HP:1058/1058
MP:820/820
SP:1033/1033
*スキル*
【顎力強化Lv.8】【隠密Lv.3】【暗視Lv.8】【威嚇Lv.7】【デスロールLv.9】【異常耐性Lv.2】【雷砲Lv.5】
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命からがら逃げて拠点へと帰ってきたときには絶望感で心が折れそうでした……
だが俺は鑑定で魔物を調べまくったおかげであることに気がついた。
まず1つはレベルのわりにスキルが少ないこと。
2つ目はすべての魔物の異常耐性が低い事。
つまりは毒や麻痺に対して耐性が思ったよりも高くないのだ。
おそらく強過ぎる個体が多いので単純に戦闘力だけで生きていけるのだろう。
とはいってもスタミナや体力が多すぎて俺の毒では全くもって話にならない。
(なぁマユ。 俺が今日見た魔物に効く毒を得るにはどうすればいい?)
『毒生成スキルがMAXになれば猛毒生成スキルへと変化します。 猛毒生成スキルを魔物の持つ異常耐性スキルより高いスキルレベルまで上げることができれば睡眠毒で眠らせて、長時間掛けて麻痺毒で身体を動かなくし、長時間かけて猛毒で殺すことは可能ではあります。 毒生成スキルのレベルを上げるには魔力が無くなるまで毒液を作り続け魔力を回復し、また作り続けるのが一番効率の良い方法であります。 先ほどこちらから南西35.6メートルの位置に生えていたビダンカの花は食すと魔力を回復することができます。 またこちらから北東128メートル先に生えていたメルゴンゾーラという植物は強い毒性を持ちますが毒無効のスキルを持つ主様なら体力の回復に役立ちます。』
おぉ!
それは吉報だ。
とりあえず草でも食べておけば死ぬことはないだろう。
それにしてもやはりこの【神の声】改め【マユの声】は本当にチートすぎるスキルだな。
情報や知識だけでなく確率や生き残るための術までも教えてくれる。
俺は早速ビダンカの花を摘みに行くと、口に溜め込めるだけ溜め込んで拠点へと戻る。
そして毒液を生成、壁へ吐き出す。
生成。
吐き出す。
生成。
吐き出す。
魔力切れる。
めちゃくちゃ気持ち悪くなる…………
ビダンカの花を食べる。
めちゃくちゃまずい……
え、ほんとにまずい。
待って無理こんなまずいの?
あ、でも魔力全快してる。
余計に気持ち悪くなったけどまぁ頑張ろう。
生成。
吐き出す。
生成。
吐き出す。
魔力切れる。
気持ち悪い。
食べる。
まずい。
余計に気持ち悪い。
でも全快。
生成。
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俺は永遠とその作業を繰り返していった。