4話 オタマジャクシ蛙になる。
俺は最近大発見をした。
それは池の中に落ちている紫の石のようなものを鑑定したときのことだ。
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種族名:リエール貝 Lv.3
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それは石ではなくれっきとした魔物だったのだ。
俺は毒牙を使い攻撃してみる。
軽くなら傷付けることができたので少し待つと……
貝は口を開けて動かなくなる。
そして中には身があった。
見た目は帆立のようなそれは間違いなく転生してから一番うまい食べ物だ。
俺は貝を探し食べるという生活を一週間ほど繰り返している。
体もかなり大きくなってきた。
前足も生えたのでものを掴んだりできるようになったのは大きい。
そんな今の俺のステータスはこんな感じだ。
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名前:
種族名 リエールフロッグ(幼体)
Lv.9
HP:18/18
MP:20/20
SP:18/18
スキルポイント:20
*スキル*
【マユの声】【痛み耐性Lv.3】【腐食耐性Lv.1】【鑑定Lv.4】new【毒牙Lv.3】new【成長Lv.2】new【毒耐性Lv.3】new
*称号*
【愛に生きる者】【共喰い】【幼体の王】【毒使い】
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毒で殺した貝を食べたことで自らの毒を受けてしまい毒耐性がついた。
あとは少しずつレベルアップしただけだ。
(マユ、俺はいつ蛙になれるんだ?)
『…………』
(あれ? マユ?)
『誰ですか?』
(えぇ!?)
『あぁ、主様でしたか。 最近声をかけてくださらないので忘れていました。』
なんだこの刺々しい物言いわ。
もしかして拗ねてるのか?
か、可愛いじゃないかこのやろう。
(ご、ごめん! 美味しい食べ物に夢中だったんだ!)
『Lv.10で進化可能です。』
俺の謝罪は完全にスルーされたが先程の問いの返答は返ってきた。
Lv.10で進化ということはあと1レベル上げるだけか!?
こうしちゃいられねぇ!
俺はレベル上げの為敵を探す。
30分程でザリガニが見つかった。
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種族名:リエールロブスター Lv.10
HP35
MP13
SP20
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お、いたいた。
鑑定のレベルが4に上がったことで体力なども表示されるようになったのだ。
このレベルなら戦えるぞ!
よし!
このザリガニの攻撃手段は恐らくあのハサミ。
あれにだけ気をつけよう。
それに対してこちらの攻撃手段は毒牙だけだ。
じっくりと毒で狩らないといけない。
長期戦になりそうだ。
俺はまずザリガニの背後から近づき思い切って噛み付く。
しかし殻が硬く歯が通らなかった。
殻が頑丈なため噛み付かれたことにすら気がついていないようだ。
助かった。
さて、柔らかい部分はあるのだろうか?
俺はザリガニの体をじっくりと見てみるも全身を殻が覆っているため歯が通りそうな部分は見つからない。
どうしようか?
そんなことを考えていると突如としてザリガニが動き始める。
気がつかれたか!?
しかしザリガニは俺の方向ではなく真正面に向かって威嚇を始めた。
そこに現れたのはあのサンショウオだ。
ザリガニですら俺の数倍のでかさなのにサンショウオは更にその倍の大きさはある。
鑑定!
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種族名:リエールオオサンショウオ Lv.25
HP 75
MP 55
SP 69
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くっ!強い。
流石に俺では勝ち目がないな。
そう思い岩陰で様子を伺う。
ザリガニは勇敢にもその巨大な鋏を用いてサンショウオに挑む。
サンショウオの顔をがっちりと挟むがサンショウオの尻尾攻撃でザリガニは吹き飛ばされた。
そのままサンショウオはザリガニの体に噛み付くとその半身を噛み砕く。
あれほど頑丈だと思っていた殻が見るも無残に粉々になっていた。
サンショウオはそんなザリガニに興味を失ったのかどこかへ泳いで行ってしまう。
俺はザリガニへと近づくと様子を伺った。
どうやらまだ息はあるようで微かに動いている。
経験値が入るかどうかは怪しかったが傷口の柔らかい身の部分に噛みつき毒を流し込んだ。
そして数秒でザリガニは息絶えた。
頭にいつもの効果音が鳴り響く。
『レベルが10に上がりました。 進化可能です。』
続いてマユの声が聞こえてくる。
どうやらようやく進化できるようだ。
ステータスを確認する。
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名前:
種族名 リエールフロッグ(幼体)
Lv.10
HP:20/20
MP:22/22
SP:20/18
スキルポイント:25
*スキル*
【マユの声】【痛み耐性Lv.3】【腐食耐性Lv.1】【鑑定Lv.4】【毒牙Lv.4】new【成長Lv.2】【毒耐性Lv.3】
*称号*
【愛に生きる者】【共喰い】【幼体の王】【毒使い】
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やはりきちんと戦闘をしたわけではないのでスキルはほとんど変化していないようだ。
(マユ、進化ってどうやればいいんだ?)
『現在主様の進化可能個体が複数存在します。その中から一つを選んでいただくことで進化が開始します。』
なるほどな。
進化先が複数あるのか。
どれどれ?
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リエールフロッグ(成体)
ドクドフロッグ
プロパンフロッグ
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そして、進化先を鑑定っと!
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リエールフロッグ(成体):リエール地下迷宮に生息する蛙型の魔物。 特に際立った能力はなく平均的な個体。
ドクドフロッグ:毒を用いて獲物を狩る蛙型の魔物。 毒を生成する器官をもっており、個体によって毒の種類も多種にわたる。戦闘力は低い。
プロパンフロッグ:ガスを出す器官をもっており口から火を吐く蛙型の魔物。 蛙型の魔物の中では戦闘力が高い。 火山など火があるところで生息している。
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リエールフロッグの成体は前回戦ったあの蛙。
普通に進化すればあの個体になっていたはずだ。
しかし他の2つはなんだ?
この進化の仕方はおかしくはないだろうか?
変異種といったところなのだろうか?
そもそも魔物とは自ら進化先を選べるのか?
『魔物は環境やそれまでの経験により自動的に進化します。 主様のように進化先の選択肢があることが分かるのはユニークスキル【マユの声】による情報統制の結果です。』
なるほど、ユニークスキルというのはよくわからないが【神の声】改め、【マユの声】というのは
俺の知らないところで情報統制をしてくれているのだろう。
鑑定の結果やステータスも俺にわかりやすい形で情報を整理してくれているのかもしれない。
ありがたやマユ先生。
んー。
この中だとやっぱりドクドフロッグかプロパンフロッグの二択だよな。
戦闘力が高そうなのはプロパンフロッグだが、知能があるのならドクドフロッグのほうが上手く使えそうな気がする。
火を使えるのは羨ましいけどな。
特に食べ物方面で。
でも今まで生き残ってこれたのは毒のお陰でもある。
なんとなく毒に親近感が湧いていた俺はドクドフロッグに進化することを決めた。
毒に親近感ってヤバそうだけどな。
早速俺は進化する旨をマユに伝えようとして思い留まる。
(進化ってどれくらいかかるんだ?)
『ドクドフロッグへ進化するには45時間7分28秒の時間を要します。 その間は休眠状態に入ります。』
あぶねーっ!
こんな何も無いところで進化なんてしたら喰われてしまうところだった。
いくら水中に魔物が少ないとは言っても言語道断だろう。
俺は進化出来そうな岩陰を探す。
水草を噛み千切り、新しく生えた腕で岩陰へと集めると外からは見えない空間が出来上がった。
水中だと蛙になったときに溺死しそうなので水面近くに作った。
よし、これなら大丈夫だろう。
俺は岩陰に身を潜めマユへと宣言した。
(ドクドフロッグへ進化する!)
『了承しました。 個体リエールフロッグ(幼体)はドクドフロッグへと進化します。』
その声を最後に急激な眠気と共に俺は意識を手放した。