2話 蛙の子は蛙?
この世界に転生してから4日が過ぎた。
時間でいうと103時間くらいだろうか?
あと少しでめでたく俺が誕生する。
俺は暇な時間を神の声であるマユとの会話で潰していた。
そしてついに誕生の時が訪れる。
卵が自然と裂けていき、俺は頭で無理矢理裂け目を広げると水中へと飛び出した。
視界に映ったのは沢山の水色のオタマジャクシ達が一斉に尻尾を動かし水面へと向かっていく姿だ。
俺は今まである勘違いをしていた。
それは……
「よく考えたら蛙の子はオタマジャクシじゃん! 俺、オタマジャクシじゃん!」
そう、俺もその水色のオタマジャクシ達の中の一匹だったのだ。
まだ手も足もない身体を必死に動かし水面へと向かう。
水面から顔を出すギリギリのところで、自分が水中でも息ができることに気が付いた。
これがエラ呼吸か!
水中で息ができるというのは元人間の俺にとってはかなり特別なことで中々良い気分だった。
さぁ、これからどうしようか!
そんなことを考えているとオタマジャクシ達が一斉に動き出す。
なんだなんだと思っていると最後尾のオタマジャクシの後ろからなにかが追ってきているのが見えた。
あれは……サンショウオ……か?
そして最後尾のオタマジャクシはサンショウオの口の中へと吸い込まれていく。
そして俺はようやく状況を理解した。
あのサンショウオは捕食者なのだ。
そしてその対象は……
「俺たちかよー!!!!!」
俺はオタマジャクシ達の流れに逆らわず全速力でサンショウオから逃げた。
だってサンショウオめちゃくちゃでかいんだもん。
ほんと怖い。
10分ほど逃げたところでオタマジャクシ達の動きが緩やかになる。
ようやく逃げ切れたらしい。
ふぅ…… 危なかった……
さすがは大自然。
敵がいっぱいだな。
俺が危機から脱したところで一息ついていると尻尾がピリピリと痺れる。
なんだ?と尻尾の方を見てみると……
オタマジャクシが俺の尻尾に噛み付いていた……
「ノォォォォ!!!!!!!」
しかも少し食いちぎられてしまっている。
これはあれか!?
共食いってやつか!?
辺りを見渡すとオタマジャクシ達の大戦争が幕を開けていた。
死体が辺りに転がっている……
やらなきゃやられる……
俺はそう判断するとマユに声をかける。
(マユ! どうやったらこいつらに勝てる!?)
『リエールフロッグの幼体は最弱の魔物の一種です。 知能のある主様であれば勝率は低くないでしょう。』
つまり考えて戦えば勝てるってことか!
よしっ!
俺は気合いを入れると今噛み付いてきた奴に後ろから襲い掛かる。
小さな口でまずは尻尾に噛みつき、徐々に食べていく。
「うっげぇ!!! まじぃぃ!!!」
オタマジャクシの尻尾はお世辞にも美味しいとは言えないものだった。
というか味覚あるのか……
尻尾を半分ほど食べたところで敵のオタマジャクシは泳げなくなる。
尻尾が無ければ浮くことしかできないのだ。
そして全てを食べ終えると頭に効果音が鳴り響いた。
ピロピロリーン!!
『レベルが上がりました。 スキル痛み耐性を取得しました。 称号共喰いを取得しました。』
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名前:
種族名 リエールフロッグ(幼体)
Lv.2
HP:3/5
MP:7/7
SP:5/5
スキルポイント:5
*スキル*
【マユの声】【痛み耐性Lv.1】
*称号*
【愛に生きる者】【共喰い】
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おぉ!これはレベルアップか!?
変化しているのはレベルと称号、そしてスキルポイントだ。
【共喰い】って称号なんか嫌だな……
それに神の声がマユの声に変化している?
名前をつけたからか。
痛み耐性は噛み付かれたときかな?
まぁいいか。
それよりスキルポイントだ。
1レベルでスキルポイント5か……
あ、そうだ!
そして俺はあることを思いつく。
(マユ! スキルポイントでスキル取得出来るんだよな!?)
『はい。 現在交換できるスキルは以下のものになります。』
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【鑑定】 必要ポイント5
【毒牙】 必要ポイント9
【泳ぎ上手】必要ポイント8
【カナヅチ】必要ポイント3
【成長】 必要ポイント5
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おぉ!
結構取れるじゃんか!
(ん?このカナヅチってなんだ?)
『カナヅチスキルを取得すると泳げなくなります。 主様が取得した場合の死亡率100%。』
ふぁっ?
誰が取るんだこんなスキル?
しかも死亡率100%って!
こんなスキルとって死ぬのは馬鹿すぎる……
ここはやっぱり……
今あるポイントで取れるのは……
(【鑑定】だな!)
『【鑑定】を取得します。よろしいですか?』
(おっけー!)
『スキル【鑑定】を取得しました。』
よし、スキルを取得できたぞ!
早速確認してみよう。
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名前:
種族名 リエールフロッグ(幼体)
Lv.2
HP:3/5
MP:7/7
SP:5/5
スキルポイント:0
*スキル*
【マユの声】【痛み耐性Lv.1】【鑑定Lv.1】new
*称号*
【愛に生きる者】【共喰い】
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おぉー!
早速使ってみよう。
俺は目の前に沢山いる、オタマジャクシに【鑑定】を使ってみた。
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種族名:リエールフロッグ(幼体)
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え?これだけ?
『鑑定スキルはレベルを上げると開示される情報が増えます。 スキルレベル最大値は10です。』
なるほどそういうことか。
ありがとうマユ先生。
とりあえずはオタマジャクシ達を食べてレベルアップ。
そして【鑑定】を色々なものに使ってスキルレベルもあげちゃおう!
そして俺は目の前にいる数百匹のオタマジャクシの一匹に噛み付く。
食べる。
噛み付く。
食べる。
を繰り返した。
そしてあたりからオタマジャクシが居なくなり俺はオタマジャクシを食べ尽くした。
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名前:
種族名 リエールフロッグ(幼体)
Lv.5
HP:10/12
MP:15/15
SP:5/12
スキルポイント:15
*スキル*
【マユの声】【痛み耐性Lv.2】【鑑定Lv.2】
*称号*
【愛に生きる者】【共喰い】【幼体の王】
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こうなった。
そしてレベル5に上がったとき体に劇的な変化が現れる…………
あ、熱い……
尻尾の付け根が熱い……
この感覚はもしや進化!?
ついに俺もオタマジャクシからカエルに!!!
熱が収まった身体をみると俺の体には…………
後ろ足が生えていた。