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転生蛙の異世界冒険譚  作者: メロン男爵
1/11

1話 転生

気がつくと真っ白な空間にいた…………



辺りを見回すが何も無い。

いや、あるのかすらわからない。

それくらいにただ視界が白いのだ。

自分の身体を見ると裸ではあるが、いつも通りの自分の姿が映った。


ここはどこなのだろうか?


「ここは精神の世界。 貴方達人間が死んだ後に訪れる世界です。」

「だれだ!?」


頭に直接届いたかのように響いたその声音は甘美で風鈴を連想させるかのようなものだった。


「私は愛の神ライブラ。 この世の愛を統べる神です。」

「愛の神……?」


突如として目の前に現れたそれは神々しいと意外に言葉に形容できないものだった。

人間の女性の形をしてはいるが人間でないことだけはわかる。

美しすぎて触れてはいけない。

そう思えるほどだ。


「あなたは前世でとても凄惨な道を歩みました。 貴方達小さき人間の器では耐えられないほどに。 しかしあなたは最後まで愛に生き、そして愛に死にました。 あなたの生き方は美しかった。 だから私はあなたにもう一度人生を歩むチャンスを与えます。」

「それは所謂転生というやつですか?」

「えぇ、ただし今までの世界とは別の世界。 そこでもう一度生きてくださるというのであればあなたの願いを一つだけ叶えましょう。」

「願いを…………」

「えぇ、もう一度生きる気はありますか?」


俺は考えた……。


もう一度の人生。

前世はいい人生とは言えなかった。

もう一度生きるのなんてごめんだ。

あんなに辛い思いをするくらいなら……


だが俺には叶えたい願いがある。


「それじゃあーーーをーーーにしてください。」

「…………そう、あなたはやはりそう願うのね…… 他には望みはない?」

「じゃあ、俺がーーーにしてください。 そしてーーーがーーーなかった世界に……」

「その願いを叶えるのにはかなりの力が必要です。 もしその願いを叶えるのであればあなたは転生したときに前世の記憶のほとんどを失い人間という種族にはなれないでしょう。 それでもよろしいのですか?」

「構いません。」

「そうですか。 愛の神としてあなたに心からの敬意を…… 

最後の選別です。 このスキルを受け取ってください。 それでは良い一生を…………」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ーーここはどこだ?


視界に映るのはボヤけた景色。

草のようなものが生い茂っているように見える。

しかし、ボヤけていてほとんど見えない。


記憶にあるのはあの愛の神と名乗った女性によってどこかの世界から転生されたということだけ。

前世の記憶は…………なかった。


俺は一体何者なのだろう。


突如、頭の中に言葉が浮かぶ。



==================================


名前:

種族名 リエールフロッグ(幼体)

Lv.1

HP:4/4

MP:5/5

SP:3/3


スキルポイント:0


*スキル*

【神の声】

*称号*

【愛に生きる者】


==================================


(な、なんだぁ!?)


突如として現れたそれはどう見てもゲーム画面にしか見えない。

しかし見ているわけではなく頭の中に浮かんでいるのだから不思議だ。


『これはステータスです。 この世界の全生物にはステータスが存在します。』


そして俺の問いに答えるかのように声が頭に響いてくる。

愛の神とやらの声と同じで直接響いてくる感じだ。


(え、だ、だれですか?)


『回答不可。スキル神の声によって主様の思考とリンクしております。』


神の声。 

確かにステータスに存在する。 

これが愛の神とやらがくれたスキルか。


(神の声とはどのようなスキルなんですか?)


『この世界の情報を提供できます。』


世界の情報?

じゃあ、試しに質問してみるか。


(ここはどこですか?)


『ダンジョン名:リエール地下迷宮10層の水中

        リエールフロッグの卵中。』


これはまたざっくりとした情報が来たな。

水中ときたか。

それに先ほどのリエールフロッグという名前から連想するに…………蛙だな。

俺は蛙でここは迷宮。

ということは俺は魔物の子供か?

まぁなんか人間にはなれないとか言ってた気がするな……


あれ?なんでだっけ?

まぁいっか。

面白いからどんどん質問していこう。


(ここはどんな世界ですか?)


『主様の理解できる方法で表すと、剣と魔法の世界です。 またはリアル版ファンタジーRPGといったところです。』


ほぅ、ファンタジーとな?

じゃあやっぱり……


(俺は魔物ですか?)


『はい。』


だよね。

わかってました。

わかってましたとも。

蛙の魔物かー。

ハエとか食べるの嫌だなー。


そう言えばハエとかが前世にいたことは覚えてるんだよな。

ただ、自分のことだけがわからない……

変な感じだ。


(まぁいいや、でどうやったら卵から孵れるんですか?)


『残り105時間35分26秒で自然に孵化します。』


え、長すぎん?

四日もこのまま?

退屈すぎて死んじゃうよ……


まぁでもこの神の声とやらに質問しとけば時間くらい潰せるか。


それから俺は色々と質問してみた。


この神の声とやら、なんでも答えてはくれないらしい。

女性の声なのだが、神の声とは?という質問には『回答不可』。 

神の声に関する質問も効果以外は回答不可だった。

場所や名前は聞けば答えてくれるのだが、俺が何者なのか?という問いには『回答不可』と返事が来る。

前世の話も基本的に回答不可らしい。


(称号とは?)

『称号:多くの者や力を持つ者に畏怖や敬愛などを持って呼ばれた、または与えられたもの。 称号によって取得できるスキルが変動する。』


(スキルって?)

『スキル:スキルポイントによって自ら取得、または称号や経験により自動的に取得する力。 MPや SP、HPを消費して発動するもの、消費しないもの、生まれた時から与えられたものも存在する。 現在確認されているスキルは77652865。』


(スキルポイントってなに?)

『経験によって与えられるポイント。 ポイントを用いてスキルを習得可能。』


なるほどな。

つまりここはゲームの世界を現実にした感じなのか。

なかなか面白そうだ。


それでこの神の声…………呼びにくいな。

何か名前をつけよう。


(えっと神の声……さん? 貴方を呼ぶ時に神の声では呼びにくいので名前をつけてもよろしいですか?)

『…………名前ですか?』


神の声が少しキョトンとした声音をあげる。

声だけだが、少し可愛い。


そうだな、名前、名前…………


(じゃあ、マユなんてどうでしょう? 前世だと一般的だったのですが。)

『っ!!!!』


一瞬神の声は驚いたような声を上げる。

しかし、すぐにもう一度声が聞こえてくる。


『あ、主様が呼びやすいのであれば構いません。』


よし、じゃあこれからはマユって呼ぼう。

名前の意味は特にない。

なんとなく思いついたから適当につけただけだ。

もう敬語も堅苦しいな。

そう思い俺はこう口にする。


(これからよろしく。 マユ。)

『はい。よろしくお願いいたします。』


こうして俺の転生譚は幕を上げた……




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