最後のトラ
もし僕が生まれ変わって、
地球で最後のトラになったら。
多分ね、動物園に入れられてしまうんだろう。
そして、日がな一日好奇と可哀そうの目にさらされながら生きるんだろう。
でも生まれた時からそうだったから、
僕は自分が地球にたったいっぴきの孤独ないきものとは知らずに、
馬鹿みたいな絶滅論のいつもさなかにいて死んでいくんだろう。
もし自分がこの世にたったいっぴきしかいないって知らされたって、
納得もしないしどうもしない。
かつていっぱいいたやつらが減っていく。
絶滅する、何が怖いの。
いつか自分たちもこうやって絶滅してしまうんだって思うのが怖いの。
だからもう殺さない。
昔からずっと信じていた宗教の神様が、
「あなたはもう何も絶滅させなかったからあなたは絶滅させないよ」って
天国の門で待っていてくれると思っているの。
きっと何もかも変わってしまうんだ。
どんなに栄華を誇ったって、
運が悪ければ明日死んでしまう。
僕は最後のトラ。
でも、そのことを信じていない。
リョコウバトの最後の一匹も、オーロックスの最後の一頭も、
ステラーカイギュウもドードーもブルーバックもニホンオオカミも、
誰も信じていなかった。
最後の○○を殺した人間だって、
そんなこと信じていなかった。
明日顔を出す。
またいつもみたいに秋になれば降りてくる。
そう信じて疑わなかった。
地球の広さが仇になったね。
誰も信じないまま絶滅して、
そして今になっても「生きている」と言われ続ける奴だっている。
人間は絶滅を信じたくないんだ。
最後のトラだった。
学者たちが僕をいろいろ研究すると思うけど、
結果、早く言えば死ぬ。
死んだように生きた僕は、
死んだ後は生きたように展示されるんだろう。
中に綿でも詰められて。
そして今度こそ伝説になる。
絶滅動物のロマンが好きです。最近トラが絶滅しそうらしい。
いつか竜とならんで本物の伝説上に生き物になってしまうのだろうか。




