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7話

 扉を開け、ギルド会館内に入る。

 ギルドの玄関口であるホールはどこの支部も基本的によく似た作りをしており、このリスータ支部も数組のテーブルと椅子が置かれ、壁際には依頼書が貼られるボード、奥に職員の座る受付と言った標準的な作りであった。

 そんなホールで数人の冒険者達がテーブル席で談笑をしていたが、俺を見かけると彼等は手を上げて挨拶をしてくれる。

 こちらも手を上げて挨拶を返し、カウンターの職員にカードを提示して呼ばれて来た事を伝えると。

「お待ちしておりました、どうぞこちらへ」

 職員の案内でギルドの2階に上がり、来客用の部屋に通される。

 異国風のカーペットが敷かれ、幾つかの調度品が置かれた室内には俺を待っていた二人の人物。

 その内の一人、ソファに座っていた男が口を開く。

「よく来てくれた、クルツ・オプファン君」


 歳の頃なら40代ぐらいの男である。

 見ただけで分かるぐらいの上質の服に、嫌味にならない程度の装飾品。

 それらをごく自然に着こなしている様子からどこかの貴族だろうか?


「あの、貴方は」

「エルディス・ファルウ様。この地域を治める領主様だ」

 俺の問いに応えたのは、彼の座るソファの後ろで控えるように立っていたもう一人の男だ。

「タリスン支部長、私の事は後にして先に君の用事を済ませておこう」

 エルディスは温和な微笑で自身の後ろに立っている男、この冒険者ギルド、リスータ支部で一番偉い人である『タリスン・ティラン』にそう言って話を進めさせる。

「あ、はい」

 タリスンは素直に従い、後ろの棚から冒険者カードに情報を書き込む為の魔道具を取り出して準備を始めた。


「え?領主?て言うか、支部長?」

 タリスンは元冒険者であり実力は折り紙付き、新人冒険者に戦闘技術を教える教官を経てこの支部を任されるようになった叩き上げの男だ。

 各地の支部長にはそう言った経歴を持つ者が就く事が多いが、共通するのはどこの支部長も根は武闘派だと言う事。

 このタリスンも結構な武闘派で通っている筈ではあるのだが、今は妙に低姿勢。


「言うな、とりあえず早くお前の冒険者カードを出せ」

 俺の心の疑問を読んだのか、それを遮るようにしてカードを要求してきたので素直に渡す。

 俺のカードを手にした支部長は魔道具を操作し、カードの情報を書き換えて。

「おめでとうクルツ君、キミは今日からランクDに格上げだ」

 俺にカードを返してそう言った。


「えっと、ありがとうございます…?」

 恐らくはゴブリン襲撃を防いだ功績でのランクアップなのだろう。

 ランクが上がったという事は受ける事の出来る依頼の質も報酬額も上がった訳であり、それは冒険者稼業の自分としては嬉しい筈なのだが。

「………」

 だが今は微妙に喜べない。

 色々と怪しいのだ。

 そもそもランクアップするにはどのレベル帯でも幾つかの審査等があり、このようにあっさりと作業感覚で終わるような物では無い筈なのである。


「さて、次は私の話を進めようか」

 傍らで俺のランクアップを待っていた、微妙に喜べない最大の原因である彼が動き出す。


「まずはクルツ君、町への襲撃を防いでくれた事を領主として深く感謝する」

 エルディスはソファから立ち上がり、俺に手を差し伸べて握手を求めて来た。

「いえ、戦う力を持つ人として、皆と当たり前の事をしただけです」

 俺はその手を握り返し、素直に思った事を口にする。

 その答えに満足したのか、エルディスは握手の手に力を込めて。

「いい返答だクルツ君、これからの君の活躍に期待するとしよう」

 そして良い笑顔でこう続けた。


「では、私と冒険者ギルドから君に依頼したい事がある」


~~~~


(あかん、これ絶対あかんヤツや)

 いくら町を救った功労者の一人だとしても貴族、しかも領主が一冒険者に直々に会いに来ると言うのはおかしな話である。

 そうでないのなら一緒に戦ったエイス達も、たとえ冒険者ギルドに所属していなくてもこの場に呼ばれる筈だ。


(無理難題な事を言われるのが目に見えとる)

 勿論依頼を断る自由も冒険者にはある。

 仕事を受けてから途中で放り出すのは流石に問題ではあるが、要は了承さえしなければいい話なのだ。

 だが、先程のランクアップの件とか握手とかもう完全に逃げ場を無くす為の布石としか思えなく。


(しかし、貴族とギルド双方からってどういう事やねん)

 とりあえず、妙な方向に行かないよう注意しないと命が幾つあっても足りない状況に陥りかねない。


(クルツ、『いのちをだいじに』の心構えで行くんやで)


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