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5話

 魔物による襲撃が発生したのは、目的地であるリスータの町が見渡せる丘の上であった。

 町から見て丘の影、街道沿いの森に潜んでいた奴らが通り過ぎた俺達の背後から襲い掛かって来たのである。


「町までの道にゴブリン共の姿は無い!馬車はそのまま走ってリスータに飛び込め!」

 エイスの判断により、俺達を降ろした馬車が町に向けて走り出す。

「全く、こんな町に近い場所に現れるとはね!討伐しに行った連中は無能かしら!」

 文句を言いつつ、オイルランタンを持ったチャムリが呪文詠唱を始め、メイスを構えたビルケが彼女を守る壁となる。


 リスータの町近郊でゴブリンの群れが現われたという話は道中に聞いていた。情報元はここに来るまでに出会ったリスータからの行商人達だ。

 内容は『街道側の森林に中規模なゴブリンの群れが出没、だが退治を請け負った冒険者によって討伐は済んでいる』との事だったのだが。

 討伐時に多くの逃走を許したのか、それとも別の群れなのか判断に迷う所である。


 視線の先には、襲撃時に俺達のすぐ後ろに居た一台の荷馬車。

 その馬車は襲撃時に真っ先に破壊され、今は俺達と対峙するゴブリン共の簡易な砦となっていた。

 幸いにも御者は無事であり、俺達が降りて保護すると同時に隊商責任者によってこちらの馬車に押し込まれている。


「つまり貧乏くじって奴ですね」

 ビルケの身もふたもない一言。

「そう言うなよ、それよりも俺達が防衛線だ!町から応援が来るまで食い止めるぞ!後退しつつだがな!」

 町と丘の間に広がる畑と道には農民を始めとする町の住人達の姿がまだ見える。

 その状況でリーダーであるエイスの下した判断は『この場で迎え撃ち被害を抑える』であった。


「おいおい、まるで勇者様だな」

 槍を構えた俺のその軽口にエイスは苦笑いしつつも。

「そりゃそうだ、誰しも勇者になれる瞬間ってのはあるもんだからよ!」

 剣を構え、はっきりとそう答えた。



 接敵、ゴブリンとの戦闘が始まる。

 こちらに向かってくるゴブリンの数は見えるだけで十五体、だが近くにはまだそれなりの数が潜んでいると考えていいだろう。

 それぞれが棍棒や古びた短剣を武器に突撃を仕掛けてくる。例え一体一体は弱くてもその数は非常に厄介だ。


「行くわよ!炎精よ敵を穿て!」

 射程圏内に入った先頭のゴブリン集団に対し、チャムリが先制の“炎精の矢”を行使。ランタンの炎から飛び出した数条の炎がゴブリンに向かって飛んで行く。

 しかしそれなりに距離が開いている為か、ゴブリンの少ない頭でも『見てから避ける事が出来る』と思われたらしい。

 ゴブリン達は自身に向かって飛んでくる炎の矢の軌道から横へ逸れる事で逃れようとするが。

「グギャッ!?ギャアア!」

 避けたと思った炎が突如軌道を変え、真横からゴブリンの脇腹に突き刺さる。

 炎の矢の一撃はゴブリンの胴部に深く食い込み、その臓腑が炎精によって焼き尽くされその命を喰らいつくす。


「まずは三匹!」

 最初の一撃は目標を仕留める事の出来る威力を。魔法攻撃の基本だ。

 贅沢を言えば更に高範囲攻撃術式が望まれる場面ではある。だが彼女はまだその域に微妙に届かないらしい。

 それでも確実に三体を倒し、数を減らす事には成功した。

 それでも尚、数的にはこちらが不利ではあるが。


「チャムリとビルケは後退!行くぞクルツ!」

「おう!」

 魔法職二人を後退させ、前衛である俺とエイスが前に出る。

 仲間の死を気にしないのか、ゴブリン共は怯まずに突っ込んでくるようだ。


「シッ!」

 俺は槍を目標と定めたゴブリンの喉元に向け突き立てる。

「グガッ!」

 喉を貫かれたゴブリンはその一撃で絶命するが、その隙を狙った他のゴブリンが俺に向けナイフを振りかざした。

「させるかよ!」

 カバーするように俺とゴブリンの間に割り込んだエイスの剣が一閃。ゴブリンのナイフを持っていた腕と首が胴から斬り飛ばされる。

「ヒューッ!流石はエイス!」

 俺は仕留めたゴブリンから槍を抜かずにそのまま持ち上げ、振りかぶる要領で穂先の死体を迫りくるゴブリンに向けて投げつけた。

 槍から抜けて飛んで行った死体とゴブリンが激突し、絡まるように転倒。

 下敷きになったゴブリンを死体の上から踏みつけ、その心臓に向けて穂先を突き下ろし二匹目を仕留める。


「クルツ!下がるぞ!」

「はいよ!」

 もう一匹を斬り伏せたエイスからの指示。俺はその指示通りエイスと共に数メートル後方へと下がる。

 突然開いた距離を詰めようと追いかけてきたゴブリン達の中央、そこへ先に後方に下がって準備をしていたチャムリの魔法が炸裂した。ゴブリン共の悲鳴が響く。

「殺傷力はイマイチ低いけど、動きを阻害するなら充分よ!」

 指定した地点を中心に広がる、沸騰しきって蒸気となった湯のように熱を持つ空気の領域。

 その熱はゴブリンの皮膚だけではなく、同時に目と気管を煮えさせる。


「それでも一匹は瀕死状態になったようだけどな」

 エイスの指摘通り、一番熱量の高い中央に居たゴブリンがその場に倒れて痙攣している模様が見て取れた。


「ほらさっさと残りを潰してくる!」

「武運を」

 魔法職二人は再び後方に下がりながら檄を飛ばす。

「言われなくてもそうするさ!」

 エイスのその返答に俺も頷き、動きの悪くなったゴブリンに向け突入するのであった。


~~~~


(この調子やったら大丈夫かも知れんな)

 クルツに筋力微増強や防御微増強、更に知覚微増強の補助魔法を常に重ね掛けしながらそう感じる。

 見知った連中とは言え、そのコンビネーションは悪くは無い。

 クルツもリーダーであるエイスの指示を聞いて的確に動く事が出来ていた。

 それは、クルツが彼等を腕の立つ良き先輩として尊敬していると言うのも要因の一つだろう。


(自らは驕る事無く、まずは相手を立てて行動する。ワシの処世術の教えが生きているようで嬉しいで)

 クルツ達は順調にゴブリンを倒していき、やがて町の方から鬨の声と共に兵士達がこちらに向けてやって来るのが分かった。

 そしてようやく不利と悟ったのか、ゴブリンの生き残りは背を向けて森の方へと逃走を開始。

 一先ずはこれで終わったようである。


(でもこういうんはめっちゃ疲れるわ、おっちゃんははよ楽したいでクルツ)

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