第6章『ベース開発部・イスケ視点』-6
奴もあの光を放つ気だ。撃たれたら最後。部隊は全滅する。
――祈り。未来を信じるための祈り。
サヤの投げた刀が、カノコの放った弾丸によって威力を増して。
<貫けえええーッ!>
トウケンの叫びを乗せて。
間に合わなければ……。
――『コウキ』に光が集約される。
あの刀は。
<ひゃーっ、ふーせつが飛び出しましたよーっ!>
サヤの緊張感のない叫び。フウセツ六式が……敵機を貫通した。
しかし同時に『コウキ』が。
「間に合わ……ないのか?」
自分の声すらもどかしい。
――『コウキ』の光が。
内部に籠もる。光の爆発。
大地を激しく揺らす衝撃。ベースさえも激震させて。
死を覚悟する。
作戦の失敗……。
あまりの眩しさに視界がゼロになる。
…………?
「ん」
ゆっくり、ゆっくり。
目を開けて。
――そこには。
輝きを天に垂れ流し、徐々に空中で自壊していく『コウキ』の姿があった。
<……撃破、しちまったのか?>
<どうやら、そうらしいな>
<壊れる様は……きれいね……>
<ホントですねー>
地上に落ちるまでの時間で……あの機体は粉々に砕けて散っていった。
<作戦成功だな、トウケン>
<やっと、ひと息つけるってことかよ……>
タンポポに映るみんなの表情がしだいに柔らかくなる。
――だが。
まだ終わらない可能性もある。敵にはペインが絡んでいる。『コウキ』が撃破されることを予想して、さらに次の手を用意しているかもしれない。
次は何が来る? またザコの大群か。再度『コウキ』でも呼び出すのか。
どちらにしても、勝てない相手ではない。
ここには全部隊が集結している。大量のブリーズでも、なんとか戦えるはず。
<どうなるかしら>
<分からない。様子を見よう>
カノコとコユキも同じ答えに辿り着いていたらしい。
「……ペイン……次はどうする?」
ひたすら待つ。ハンガーに設置されている索敵レーダーを睨みつけたまま。
――反応した。
サーモグラフィーが、一斉に真っ赤に染まった。
地上にはなんの気配もない。
ならば、空か?
だが『コウキ』ならば、あの大型ライフルで……。
<あ、はは……>
カノコの乾いた笑い声。
<そんな……>
コユキも似たような反応だった。
確かに、その程度の言葉しか出てこなかった。
空には『コウキ』があった。
この状況なら撃破できる可能性もあった。
ターゲットが、ひとつだけならば……。
<な、なんですか……アレ?>
サヤの質問に答える者はいなかった。
空にある、数え切れない大量の銀色。
違う。もう空なんて見えない。
見えているのは敵機の脚の裏だけだ。まさに無数の敵。
空を覆いつくした『コウキ』が輝く。
地上に向け、発射される光。
抵抗は無意味だった。
容赦なく降り注ぐ破壊の雨。
絶望は、あまりに強大すぎた。
戦場のウィッシュを砕き。
ボクたちがいるベースにも光の刃が突き刺さる。
待機していた整備兵や医療兵が悲鳴を上げて逃げ惑うが、もはやこの世界に安全な場所など無い。もうじきこの世界は終わる。
どんな作戦を考案しても奴らはこちらの上をいく。
情報をペインに流しているのは誰だ?
誰がブリーズを操作している?
犯人は……。
――犯人は誰だ?




