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第1章『コクト・パイロット・サヤ視点』-3

 今さらレーダーを確認しなくても分かる。操縦席から見える全面スクリーンにはどんどん近づいてくる敵機の数々。ここで「ジッとしていろ」とゆーのはかなりのプレッシャーだったりするんですけど……。あれ? 気のせいか指先が震えているような……。いや、だって怖いし、近いし、武器無いし! はやく助けてくださいよーっ。

<……爆殺!>

 高速で上空をよぎったのは、青。コユキ隊長の『セイバーン』だ!

「たいちょおおおーっ」

 上空から白煙を吹いてミサイルが降ってくる。ヘリに搭載とうさいされているロケット弾が正確にターゲットを捕捉し着弾。一機が粉々に爆裂ばくれつ四散する。爆風をかき分け『セイバーン』が急激に高度を下げて私の前方から急接近。前にいるのは三機のブリーズ。

<せいぜい足止めが限界だ、トドメは頼む!>

 高度を下げたコユキ隊長がヘリの『機銃・ライウ四式よんしき』を放つ。空中という不安定な世界からヘリは機体を斜めにかたむけ速射。その狙いは私が乱射する場合とは大違いで、敵機の膝、それも関節部分のみを器用に撃ち抜いていった。あしを潰されたブリーズがなすすべもなく前のめりに倒れていく。

<これで終わりだ、ボケーッ!>

 先行していたトウケンが急旋回で戻り、地べたに倒れていた三機の胴体をなんなく切り裂く。

 ほんの数秒でブリーズは残り二機。

<去りなさい>

 カノコのささやき。必殺の精密射撃は私の左側面そくめんからジワジワ接近していた敵機を貫通。たった一撃でほうむってしまった。

 最後の一機が背後から迫る。ブリーズの手にはツナミ七式が握られ……。

 同時に、操縦席の内部に響き渡るアラーム音。当然のことながら後ろからロック・オンされた。

「うあ、あー。えっと、えっと……」

 もはやパニック寸前。操作レバーをガチャガチャと揺らしていると、コユキ隊長の声が鋭く耳に突き刺さる。

<伏せろ、サヤ!>

「むひーっ」

 考えている暇などない。かろうじて『コクト』を地べたにへばりつかせる。

 同時に背後からの銃声。

 今となっては、この機体は動かない的と同じ。いくつもの銃撃を浴びて機体も操縦席もガタガタ揺れる。こーゆー時、見たくもないのに映像スクリーンはしっかりと現実を見せてくれた。

 残酷にも。銃撃を浴びて豪快に吹き飛ぶ『コクト』の右腕。

「……はうううっ」

 死んじゃう。絶対、死んじゃうってば。もーダメ。もーヤダ。目、つぶっちゃってもイーデスカ?

 いいよね? 

 だって怖いし。

 あーもー誰でもいいから早く助けてーいっ。

<トウケン! 六式を貸してくれ!>

<レンタル料は安くしてやらァ!>

<そいつは助かる!>

 真っ正面から『セイバーン』が超低空飛行で接近。そのままこっちに来ると私に……あ、ぶ、ぶつかるんですけどーっ!

 同じタイミングで『ケンパク』がフウセツ六式の一本を空中へぶん投げて走りだす。しかし投げた先には誰もいない。刀は放物線を描いてブリーズの前に……。

<サヤ、カウントしろ! 三秒で助ける!>

 隊長の言葉を信じて、震える声音でカウント開始。

「い、いーちいい……」

 『セイバーン』が私の機体をかすめてギリギリ上空を通過。さらに高度を下げていき……つ、墜落するうーっ! と思った時、ヘリの一部が変形した。ボディの下半分からニョキっと二本の腕と脚が生えたのだ。

 ……忘れてた。なぜ普通のヘリが『ウィッシュ空戦型くうせんがた』と呼ばれているのかを……。

 あの機体は戦闘ヘリを基本に地上でも活動できるように限界まで軽量化された腕と脚を内蔵している。地上戦の『ウィッシュ』と空中戦の『ヘリ』。その両方の特性を持った機体なのだ。ただし可変機能を追加した結果、ヘリの強度はかなり弱く、戦場において装甲は紙切れも同然。つまりパイロットには回避率・百パーセントが要求される、とんでもなく危険な機体なのだ。

「に、にいいーいっ」

 『ケンパク』が信じられないスピードで敵機の側面に近づきフウセツ六式を横に構える。

 ブリーズがすかさず反応し、私からターゲットを『ケンパク』に変更、即射撃。トウケンはそれを予測していたのか、白い機体が踊るように側転して回避。

えろ、ライウ!>

 敵機の銃口が『ケンパク』に変更された途端、『セイバーン』がライウ四式で攻撃。機銃による牽制でブリーズがバランスを崩した。

<これで終わりにする……トウケン!>

<おうよ!>

「さあああーんっ」

 空中から地上へとハイスピードで着地した『セイバーン』は、勢いもそのままに変形した脚で疾走する。最高のタイミングで、さきほどトウケンが投げた刀がちょうど『セイバーン』の頭上に。コユキ隊長は迷わずフウセツ六式を二本の腕でキャッチ。目前には最後のブリーズが一機。

 敵機の前方と側面から『青』と『白』が接近、密着。それぞれの刀が薙ぎ払われブリーズの胴体と頭部が吹き飛んだ。お互いのスピードを殺さずに二機は交差して、私の前をまたたに駆け抜ける。……目前で起きた爆発を、呆然と見つめて数秒。

「ふにゅ、ほ……ほあー……」

<終わりだ、サヤ。……生きてるかい?>


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