第5章『クレナイ・パイロット・カノコ視点』-4
「あの子を、死なせるわけにはいかないわね。絶対に」
「しっかしよォ、あの十一月七日のブリーズも相当多かったぞ。あの新人を生かしたまま、あの日を乗り切れるのか?」
「いっそのこと、あの子をしばらく監禁しておくとか? 戦闘に出なければ死亡することはない…………って、なによ。その目は」
コユキとトウケンが同じ半眼でアタシを見ている。
いや、言いたいことは分かるけど……。
「監禁はまずいだろう。カノコにそんな趣味があったなんて……」
「きっと狙撃のやりすぎだなァ」
「あ、アンタたちねえ……。それじゃ他に良い方法でもあるの? サヤを戦闘に参加させつつ、あの十一月七日を乗り切れる作戦とか」
「ねえな」
「ハッキリ言ってくれるじゃない。このカタナ馬鹿」
「ほーう、オレにケンカ売るつもりか狙撃屋?」
「あーら、戦闘中に背後から撃たれたいのかしら、トウケンさーん?」
「ああん? ここで切り刻んでやろうか、オイ」
「相手してやろうじゃない、かかってきなさい」
アタシとトウケンが同時に立ち上がった途端、コユキの腕が伸びて、二人の頭を押さえつけた。
「くだらない争いならランスに帰ってから好きなだけやってくれ。それより時間がないんだ、十一月七日を乗り切るアイデアはないか?」
露骨に疲れを表しているコユキの深い深いため息。弱々しい風がアタシの前髪を揺らした。
「あっ」
「どうした、カノコ?」
風だ。
ふと思いついたアイデア。
「ものは試しよね。……たとえば、こんな作戦どうかしら?」
ブリーズも具現化するまではただの風。それを利用した作戦を三人に説明する。
やや複雑な表情のトウケンとコユキ。
「けっこう強引だよなァ、それ」
「だが……やる価値はあるな」
<だったらボクのほうで必要な物を準備しておくよ>
イスケと作戦について相談し、コユキの判断で決定。
決戦は十一月七日。
正直、ひと息つきたい気分だったが、ベース全体にあの警報が鳴り響く。あの子にとっての初戦闘がはじまるのだ。
すかさずコユキのところへ、テンションの高いサヤの叫びが届いた。
<たいちょおおおーっ、えっとえっと、どうしたらいいんですかーっ!>
タンポポが出現。相変わらずのサヤがバタバタと慌てている。
「落ち着け。まずは戦闘服に着替えろ。ハンガーで待ってる」
<はいいっ、了解でっす!>




