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第2章『ベース整備兵・マリナ視点』-2

 十一月三日。

「そこで隊長の指をパクっとねー」

 食堂でサンドイッチをほお張りながら、サヤは相変あいかわらず能天気のうてんきにヘタレ武勇伝ぶゆうでんかたってみせた。

 ホーム訓練学校からの同期どうき。そこそこの付き合いになる友人。そして今も昔も無敵のドジっ子。

 本当によく卒業できたよな、こいつ。あたしじゃ真似まねできないレベルのおバカだよ……。いや、真似まねしたくもないけどさ。

「で、コユキさんを食べた感想は?」

「おいしかったよおー」

 サンドイッチを目一杯めいっぱいモグモグしながら遠い目をするサヤ。

「ウットリすんな!」

 それどころかヨダレれてるし。自覚じかく症状がないだけ危険だよ、確実に。

 コユキさんも変な子に愛されたもんだ……。

「でへへーっ」

「はいそこ! 妄想が脳かられてるぞ! すぐに置き忘れた脳ミソ拾ってこい!」

「あ、ヨダレ」

 気づくのおそっ!

「制服のそでくな、おバカ。ハンカチとか持ってないの?」

「うん、無くした」

 子供かっ、お前!

「あーもー、あたしから離れろ。これ以上サヤの近くにいたらドジっ子が感染かんせんする」

「人のことウイルスみたいに言わないでよお」

「うっさい、ドジっきん。むしろ劇物げきぶつ!」

「ひどーい」

「楽しそうだな」

「あら、コユキさん」

「ぶっふぉーっ」

 サンドイッチ爆発。

 彼が来るとは予期よきしていなかったらしく油断しまくっていたサヤが、不意ふいに声をかけられて食べかけのサンドイッチを豪快ごうかいにぶちまけた。

 違和感なく彼の隣に立っていたカノコが、心底しんそこいやそうな顔をする。

 コユキさんの近くには同じ部隊の人たちがいた。赤い髪のカノコと白い髪のトウケン。特徴的な外見だから直接の面識がなくてもすぐに顔を覚えてしまった。それにしても……この三人いつも一緒にいるイメージがあるなー。

「あーん、すみませーん」

 あたしは慣れた手つきでテーブルの上を掃除そうじ、完了。この程度では動揺しない。サヤとの付き合いが長いのはダテではないのだ。すかさずこいつの片腕かたうでを取って強引に立たせる。

「失礼しまーす」

 無害な笑顔を張り付けて、サヤを引っ張り食堂を脱出。爆心地ばくしんちからの退避たいひミッション・コンプリート。

「……ちょ、ちょっと! なんで食堂から追い出したの! せっかく隊長と一緒いっしょにゴハン食べるチャンスだったのに!」

 口からサンドイッチぶちまけた女がナニを言う?

「マリナのバーカ、バーカ」

 あたしの金髪に手を伸ばし、ムギュっと人の前髪をつかむサヤ。

「なんだと、妄想バカーっ」

 すかさず反撃。サヤの黒いツヤツヤ前髪をフンっとひとつかみ。

 両者、同時に髪を引っ張りかけて……。

 周りの人たちの冷たい視線に気づいて、しぶしぶ手を離した。

 このまま食堂付近ふきんの廊下でさわぐと、またあのメンバーに遭遇そうぐうするかも。

 次はどんな失敗をやらかすか予測できない。

 しかたないわね……。なんとかサヤをここから離すには……。

「それよりさ、さっき言ってた訓練の話。あんたそんな状態で次の戦闘、大丈夫なの?」

「うー。一応いちおう、今日もこれから隊長と訓練なんだけど……」

 すっかりいきおいをうしない、へこみモードに。


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