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第1章『コクト・パイロット・サヤ視点』-9

「お、おひゃにゃあーごっざいます!」

「お、おはよう……と言いたかったのか?」

 いきなりんだ。

 ひかえめなコユキ隊長の苦笑いがなんともまぶしい。

 予定通り隊長とウィッシュのシミュレーター訓練。場所はシミュレータールームの前で待ち合わせ。朝の基本は挨拶から……と思って気合をいれたら失敗した。

 ここは格納庫……すなわちハンガーが近くにあり、時折、整備兵の叫びや機体の修理音が派手に響き渡り、さながら戦場を連想させる。

「第二の戦場だな」

「そうですねー」

「彼らがウィッシュの整備を完璧にこなしてくれるから俺たちは安心して命を預けられる。今はずいぶんと性能が良くなったよ」

「昔は違ったんですか?」

「俺がこのベースに来た頃、あのマシンガンタイプは『一式』と呼ばれていたからな。あれは本当にひどかった。連射するとすぐに銃身がゆがんで弾丸はまっすぐ飛ばないし、暴発するし、故障なんてあたり前。一回いっかい出撃すれば武器が必ずこわれる状態だった。それに比べて今の『ツナミ七式』はかなり使いやすくなってるんだ。手ブレが減って命中率も上がっている……はずなんだが」

「私が撃つとなぜか外れるんですよー」

「今さら実戦で試すわけにもいかないからな。ひたすらここで練習するしかない」

 ドアに手を触れた時、隊長のタンポポが咲いた。

<コユキ、時間あるかい?>

 映像にはメガネをかけた茶髪の男性が映っていた。年齢は隊長と同じくらいかな?

「イスケか。状況は?」

<直接こっちに来てほしい。プランの説明をしたいんだ>

 隣にいた私に、申し訳なさそうにコユキ隊長がウインクひとつ。

「すまない、サヤ。先に開発部に行きたいんだが……」

「あ、私のことなら気にしないでください。まだ時間はありますし……」

「それじゃ一緒に行こう」

「はいっ」

 ちょっと予定は狂ったけど彼のそばにいられるし、開発部の用事が終われば今度こそ二人きりになれる!

 ……はずだと信じて、歩きだした隊長の背中を追いかけた。

 ベースの四階でエレベーターは停止した。

 フロア全体に漂う不思議な空気。

 ――兵器・開発部。

「私、はじめて来ました」

「俺もしょっちゅう来るわけじゃないけどな」

 いくつものデスクが並び、白衣を着た人たちが設計図や機体データを示してなにやら討論している。

 そこから少し離れた場所で書類を整理しているメガネの男性が一人。さっき通信してきたイスケだ。

 隊長が片手を上げると、向こうもすぐに気がついて軽く手を上げて応えた。

「すまないね、いきなりの呼び出しで」

 イスケの視線がチラっと私を見た。

 どうリアクションしていいのか分からず、とりあえず曖昧あいまいな愛想笑いを返す。

 雰囲気は……なんとなく良い人そうな感じ。

 ただし、茶色で四角のメガネフレームと神経質そうなしゃべかたのせいで全体的におかたいイメージが漂う。

 ……うーん、六十五点。

 あ、ちなみにコユキ隊長は断然だんぜんトップで千点くらいね。


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