序章
この世界は滅びる。これは決定事項である。
――星暦二八〇年。
『ブリーズ』と呼ばれる生命体が、人類に襲撃を開始した年である。
ブリーズとは、簡単に言えば得体の知れないバケモノだ。
発生当初はゼリーのような軟質をしていたのだが、人間たちに駆逐されていくうち徐々に進化。より強く、より攻撃的に変化していった。すなわちより良い「ベター」な形に姿を変えていったのだ。
戦車に敗北すれば似たような形状となり、ミサイルで爆撃されればブリーズたちも爆発物を扱うようになっていった。
結果、当時の人類はしだいにブリーズという正体不明の生命体に戦略的に押されていった。
無尽蔵に湧いてくる敵の存在。
そこで崖っぷちに追い込まれた人類は、多くの知識や技術を駆使して人型ロボットを開発した。
対ブリーズ用・人型兵器。
『ウィッシュ』と名付けられた人型ロボットは、ブリーズを見事に撃退することに成功した。
ただし……。
勘の良い人ならば気がつくだろう。
ブリーズもすぐにウィッシュをコピーしたのだ。
戦況はふりだしに戻り、人類とブリーズの収拾のつかない戦争は今も続いている。
ブリーズ発生から二年が流れて。
星暦二八二年。
人類は諦めることなく戦場をウィッシュで駆け抜ける。
だが忘れてはいけない。
この世界は滅びる。……絶対に。