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ぼくたちは支配されたあと  作者: かたち
3/5

瞬間 あなたに触れるために

 おもわず手を伸ばしたくなった。惹かれてしまった。有無を言わせない。触って、触れて。感触を確かめたかった。温かく触れてやさしく確かめて。ただみつめたかった。忘れて。みていたかった。

 ぼくはふりをした。知らないふり。そんなことする暇なんてなかったんだ。通り過ぎて振り返ったらもうそこにはなかった。崩れていた。失っていた。なくなっていた。なかった。

 ぼくは後悔するだろう。思いだしたら。ぼくはなにかいいものがあったよな ぐらいの程度で。もうすぐに歩いていたから。もう出会えないことなんて忘れて。だから出会えなかった。いつか後悔したら思い出す。愚かさ。忘れようとしない。ずっと離さない。それができない。ただ歩いて。みて。それでいてなにもみてなくて。その連続で。わたしは出来上がっていて。もう忘れて下さい。そんなしょうもなさで。わたしはどうしようもなくわたしを殴り。あのなにも思い描けないそんな記憶だけがかたちな。もう嫌だなとはおもってもそれがわたしで。もし手を伸ばせる生き方だったなら出会っていなかった。不幸中の幸いとか。どうしようもなくわたしをちらつかせまたどんどんと。わたしは傷をつけていく。鈍感さを覚えていく。

手を伸ばす。そうおもって伸ばす。練習。惹かれたあなたに目を逸らさない。 

もうあなたはいない。あなたをしらない。しらないあなたに手を伸ばす。殺される。練習生は本番をしらなかった。練習で死んだ。本番を夢見ながら。いつも嘘をついて。

 ずっと本番だった。現実だった。わたしだった。ほんとは惹かれていなかった。そういう生き方で出会えるものなんてそういう惹かれもの。輝きなど霞んでる。

 わたしは輝いていますか? 輝いていない。輝きは輝きと。霞みは霞みと。わたしはわたしをしっている。わたしなら。雑踏でも出会える。もしかしたら。そういう出会いが。幾多とも重なりすれ違う。

 わたし聞こえていますか? あなたがちらっとかすかにみたわたしはもしかしたらあなたをみていたかもしれません。ちらっとですが。

 でもあなたもおんなじでしょうがあなたのかおなんてしりませんしそういうこともわすれました。そういうものを積んでいった。これがこれだけ積んだ。そういうふうなはなしだけが。わたしたちの関係です。

 そしてこれもまたあなたとおんなじでしょうが、わたしはあなたとは違うあなたと出会いたい。もう限りなくわたしからは離れなくどこまでもそういう認識を貼ってごまかして。そうでしかいられない。こうはなすことすら無駄なんだ。思い込む瞬間なんていらないんだ。あなた、わたしにわたしのこえを。聴きたいんじゃなくて言いたいんだったら。聴こえるまでもなく言わなくちゃいけない。それをしようともせず、なんとなくまた貼り付けていきているわたし、あなたには無理。これもまたそうなのですが。でもわたしはいいたい。がんばりましょう、がんばりますからって。いつかすれちがってもみなくなる。すれちがうことすらなくなるそういう関係になりましょう。わたしは別のあなたと。あなたは別のわたしと。すれちがうことすらなくまっすぐ出会い触れるために。



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