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ぼくたちは支配されたあと  作者: かたち
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あるはおぼろけ わたしはなし

 限りなく違うなにかになりたかった。わたし。わたしになりたかった。

 全て。考えたこととか思ったこととか。全部わたしに結びついていて。いまのわたしになるにはこういうことをしたらなるんだなって。そういうことはわかってた。

 まあでもすぐには変わることなく。ちょっとちょっとずつ。少しのわたししか。変えていけない。ほんとに出来てるかはわからないけれど。出来ているように思う。


あるものをあるってぼくはそう簡単にいうんだけど実際ほんとにそうだったかを問われるとぼくは次第に暗転する。

 全部そういうことにして生きてきたから。それを崩されてしまうと全部がおぼろけでしかなくて生きていくなとはっきりと述べられた気がする。するってもんじゃない。決定。ぼくはおぼろけ。すぐになくなる。

 でもそんなことおもっていても。ぼくは確実に揺らがなく消えなくて。いまにも消えてしまいたくても消えない。

 もう既にぼくはここにはいない。いられない。だからだれか消してほしい。手伝ってほしい。

 いなくなったぼくといるぼく。おぼろけになってまたつみあげていく。またあるってことを。でもぼくはただ曖昧にうなづいている。こっちのほうがどれだけおぼろげなんだろう。そうおもいながら。

 こういうことを続けていくこと。気づいても気づけられない自分。どんどんおぼろけさは増していく。

 ふたつのわたし。存在していて。もうひとつはずっとあるんだけどぼくは忘れたふりをしていて。気づいたときにどうしようもなく嘘つきになる。それに断定するのを恐れる。なんてことないのに。

 いままでのわたしはいまのわたし。だから別に大丈夫。あなたはそこにいる。いますから。だからいなくなることなんてない。

 でも緩い思い込みで恐怖しなければいけない。わたしは恐れなければならない。そういう付き合いを続けてきて。わたしはおぼろけになった。なってしまった。

 わたしのまわりにはなにもない。わたしは、あるということすらいっていなかった。ただあれということに殉じてきた。

 あれなわたし。まわりはあれた。わたしはあろうとする。あるふりをする。

 わたしが確実にあるといえばあれれない。あるということをなくす。

 自分のいままでのあれに殴られつづける。そういうことを恐怖した。そのいまを。いまはいや。いまはいや。そうやって。わたしはあれた。

 ただわたしにはあるはない。そうやってあるといわなかったから。なにもない。あると勘違いして泣けなかった。

 わたしは泣いた。それに気づいて。これがわたしが気づいた、あるといえたただひとつのある。むなしかった。

 もう殴られてもいいから。あるといわなければいけない。これは断定。わたしは断定する。

 わたしは勘違いして泣きたかった。あることがないと知りたかった。おぼろげになりたかった。いままでとは違うあるといいつづけて。わたしの勘違いと出会いたかった。


 


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