ヤー、チャイカ
あの日から、ニーナは私のかなり近くまで寄ってくるようになった。今まで私のベンチとニーナの手摺りの中間地点に置いたものを食べていたのだが、最近はベンチの反対の端で私がご飯をあげるのを待っている。
今まで以上に親しみを感じる反面、なんだか急かされているような気がして落ち着いて食事が出来なくなったので、食べ残しをあげるのをやめて私が食べてる途中に一枚ずつ渡すことにした。
だから今、私と彼女はベンチに並んで一緒にビスケットをかじっている。
何処となく不器用にビスケットと格闘しているニーナより一足早く食事を終えると、私は周りをぐるりと見渡した。相も変わらず空は厚い雲で覆われてしまっており、海にも生き物の気配はない。
夜はまだ怖い。取り巻く状況も変わりなし。
それを確認して、再びノートに向き合った。書いているのは手紙。ここではないどこかにきっといる誰かに向かって。
私の横でビスケットに夢中になっているニーナが嫌がらなければ、彼女に配達してもらおうと思っている。伝書鳩ならぬ、伝書カモメ。
私は考え、考えしながら一言ずつ言葉を積み上げていく。遥か彼方の誰かに向かって、
アロー、アロー。ヤー、チャイカ
読了、ありがとうございました。