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hello goodbye  作者:
22/27

面談しましょう

武生くんが追いついてこないように、とアサは全力で走った。目から零れそうになる熱い雫をこぼさないように、見せないように、袖で乱暴に拭い取りながら。息を切らして教室に駆け込むと、智大がびっくりしたように目を丸くしていた。

「あ、れ…?おはよ、アサちゃん。え、涼と一緒じゃないの?てか、あれ、泣いてる?」

「わ、私……武生くんと別れる…」

「え、ええ!?ちょ、ちょちょ待って!落ち着こ、ね?何があったの?」

そこまで言って、智大は言葉を詰まらせる。周りからの視線が痛い。もしかして、今自分は大変な状況なのでは、と智大は焦った。下手したら泣かせたのは自分だと思われている。

「アサちゃん、ちょっと、うん。ここじゃなんだから向こう行こう」

完全に顔色が悪いアサに気を遣い、教室から出た。どこに行こうと迷って、結局学校から出ることにした。仕方がない、親友とその彼女の危機である。近くの公園まで行くと、弱々しく声を漏らし、俯いて泣いているアサをベンチに座らせた。

「はい、これ」

とりあえず近くの自動販売機で、ジュースを買って渡す。アサは赤い目でそれを眺めた後、一瞬申し訳なさそうに眉を下げ、それから遠慮がちに受け取った。

なんか、おかしい。

アサが智大に対して遠慮がちにしているのはいつものことである。それは、涼もしかり。ていうか、同年代の人にはみんなこんな感じ。でも、最近は少しだけ強張りがとれたと思った。自惚れでも、幻でもなく、アサは明るくなったと感じた。

なんだ、この感じ。

いつにも増して、一線をひかれている感覚。私とあなたの世界は違いますよ、と言われている気分。

アサが泣いていたのも関係あるのかな。

ていうか、この状況。涼が見たら殴られるのは智大である。あれ、涼が見当たらない。一緒に登校してこなかったのか。

違和感が絶えず浮かんだから、とりあえずアサに問おうと思って口を開くと、智大より先にアサが言葉を発した。

「あ、の!」

切羽詰まったような声、相当緊張してる。ほんとに、どうしたんだろう。

「わ、私……」

「ん」

ゆっくりでいい、ゆっくり聞き出そう。智大は、なかなか喋らないアサに根気良く相槌を打った。

アサはその様子に少し落ち着いたのか、意を決したように喋り出した。





「あら?」

大きな目を丸くした真冬は、視線をある一点に集中させた。長い睫毛をぱしぱしと瞬かせ、可愛らしく小首を傾げる。ふわりと揺れる艶やかな髪が、さらりと肩から落ちた。

真冬は形の整った桃色の唇で綺麗に弧を描き、楽しそうに笑った。

「りょーうちゃんッ」

かつっと軽い足取りでヒールを鳴らすと、一際でかく目立っている目つきの悪い不良に声をかけた。

「…?」

かけたのだが、返事がない。それどころか涼は硬直したまま微動だにしない。真冬は首を傾げ、肩を叩いてみる。が、やはり応答はない。何故だか、固まったままである。

「んー、この状況は一体」

真冬は珍しく困惑した表情を浮かべると、涼の体に手を回した。そして、自分の身長よりずっと高い涼をひょいっと軽く持ち上げると、歩き出した。

かつ、かつ、とヒールは軽快に鳴り響く。が、異様な光景。大きな図体をした金髪坊主を、軽々しく俵担ぎする容姿端麗なオネエさん。人々の視線を集めるのは、当たり前だった。

「とりあえず、うちに持って帰るか」

ほっとくわけにもいかないしな、と真冬は呟く。まったく、世話が焼ける。真冬は、幼馴染の慌てふためく様子を頭に浮かべ、深く、けれどもどこか楽しそうに、ため息をついた。

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