絵本風(子供向け?)
どこか小さな町に少女が住んでいました。
少女の家の隣には、仲良しの少年の家があります。
少女と少年は、毎朝一緒に学校に登校していました。
でも、今日はいつまで待っても、少年が家から出てきません。
少女は、少年を呼びにいきました。
すると、少年の母は、
「昨日から帰って来ていない。」
と泣きながら言いました。
それを聞いた少女は学校へ行かず、少年を探しに行きました。
少女は町中を探します。
でも、少年は見つかりません。
少女はそのまま隣町に来ました。
知らない人がたくさんいる道、少女の住む町と少し違う景色、歩いたことのない道を行くけれど、少年は見つかりません。
周りをキョロキョロと見ている少女は、大きな穴に落ちてしまいました。
しかし、驚いたことに少女が落ちた先には、見慣れた景色が広がっていました。
見慣れた建物、見慣れた道、見慣れない生き物たち、見慣れない茶色の空がある不思議な地下世界です
少女はそこの生き物達に、
「少年がここに来ましたか?」
と聞くけれど、少年は来ていません。
どうやって地上に戻ろうか困り果てた少女に、親切な生き物達は地上に帰り方を教えてくれました。
少女が地上に戻ると、空はすっかりオレンジ色になっていました。
少女は家に帰ることにしました。
帰る途中、カンカンカン……と踏み切りは音を鳴らして少女を立ち止まらせます。
ガタンゴトン……と電車が踏み切りを通りすぎ、そして、少女は何かに背中を押されたように走り出しました。
少女が来たところは、白い煙の立ち上る火葬場でした。
そこで少女は少年を見つけました。
――――そうです。少年はあの白い煙になったのです。
少年は昨日、あの踏み切りで少女を助けて死にました。
そして、少女はひたすら泣きました。
泣いて、泣いて、泣き続けて、少年が死んだ現実を認めたくなあまりに、少女は記憶を失いました。
────少年が死んだ日、その1日の記憶を────
記憶を取り戻した少女は、白い煙を見上げたまま座り込んで泣き叫びました。
泣き止んだ少女は、花を持って少年の家に来ました。
少女は少年の母にすべてを話しました。
少年が死んだ理由を、記憶を失っていたことを、そして、少年への想いを。
すると、少年の母は微笑み、こう言いました。
「────きっとあの子のことだから、
あなたに悲しんで欲しくなくて、
あなたを記憶喪失にしたと思うわ。」