落ちこぼれと天才 1
大丈夫、大丈夫と六花は自分に言い聞かせた
あんなに練習したんだから、大丈夫!
1つ、深呼吸
そして言葉を紡いだ
ドゴンッ
・・・・・・途端に小爆発
肩までの黒髪が風に巻き上げられ、紅い瞳は淡い期待を砕かれ、歪んだ
「・・・またか」
呟いたのは1人や2人ではない
そして思っているのは多分、その場にいる全員
絶望的な呻きを漏らす六花に、半ば呆れ、半ば諦めたように、しかし容赦なく繰り出された言葉は
「白峰さん、毎回のことですが課題です」
それに山積みにされた冊子の山
10パーセントの哀れみと、20パーセントの同情と、70パーセントの侮蔑を込めて誰かが呟いたことには
「まーた新記録ね、教室爆破の」
「ほっといてよっ!!!」
私立マルーン学園 魔女科C組 白峰六花
教室破壊記録数2年にして67件 魔女レベル、最低クラスの新月 立派な落ちこぼれである
同時刻 剣士科演習場にて
金属音と共に片方の剣が宙を舞った
隙に、剣を手にした方は相手ののど元にその切っ先を突きつける
「勝者 シェイド!!!」
教官の声と同時に、驚きと感嘆、そして納得の声が至る所で上げられた。
・・・もちろん嫉妬の視線も
シェイドは汗で張り付いた茶髪を掻き上げ、対戦相手に手をさしのべた。
相手も苦笑混じりでそれを取る
「流石、つーかお前強すぎ」
「別に、これくらい当然」
自信過剰とも取られる発言に相手は苦笑を深めた。
「それはわかってるけどさ・・・んなこと言ってるからまた睨んでるぜ、カーディ坊ちゃん」
シェイドは視線も向けず、ただ淡泊に言い放つ
「俺には関係ない」
そのままさっさとその場を離れ、今度は見学席に移動する。しかし次の演習には目もくれなかった
彼にとって、同学年との演習など最早なんの意味もないのだ
私立マルーン学園 剣士科2年A組 シェイド・ラ・ティエンラン
剣士科きっての秀才で、演習成績全戦無敗 騎士レベル、2年最高記録の伯爵 人は彼を天才と呼ぶ
相反する2人
未だ面識のない彼らの『歴史的邂逅』はすぐ、そこに
しかし誰も、その意味を知るものはいなかった―――今は