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Musica Elaborate  作者: 柊
本編~学園編~
39/59

魔女名 2




私は必死に走りながら、ちらりと中庭の時計に視線をやる

体育が終わったばかりですぐ走ったせいか息は荒い。でも頭はいつにない勢いでフル回転していた


あの魔女とメモはパティに預けた

あれだけ証拠があれば然るべきに出せば犯人はあぶり出せる


問題は私のテスト結果!


メモには中庭・・・食堂に行く時の回廊沿いにある掲示板に張り出すと書いていた

今の時間は昼休み開始1分経過!マズイ、ちょっと気のきいた先生の講義ならとっくに終わって食堂に第一陣が到着してる頃じゃない!

どっかの馬鹿がいつ張り出したかわからないけど、昼前の講義とってない連中には確実に見られ、ああああああもう!なんで本人より先に赤の他人が結果知ってるなんて最悪じゃないのよ!


とにかくこれ以上晒し物になる前に回収しなくちゃ!

ああでも嫌がらせで張り出したって事は結果は・・・・・・・・・・・・・・・・・・考えるな!考えると気力が萎える!


考えている間に掲示板に到着

最悪の予想通りに、昼食に行くところだっただろう学生が群がっている


ああもうそんな掲示板なんて無視して食事に行ってくれればいいのに!

人間の三大欲求の一つが悲鳴上げてんのよ!?野次馬根性なんてドブに捨てて食べなさいよご飯を!



「どいて!!!」


叫んだ瞬間人垣がばっと二つに割れた

その間を突っ切り、息も絶え絶えに掲示板を見上げて・・・・・・・・・絶句した

確かにそこには手紙が張り出されていた


何故か送り主のところに私の名前が書かれた


何故か淡いピンク色で花模様の便せんの


何故か私の頭じゃひねり出せないような寒々しい文句が綴られた


何故か宛先がシェイドになった



ラブレターが



私はこのあり得ない現実を抹殺すべく指に力を込め



「こんなクソ寒い手紙誰が書くかああああ!!!」


叫び、問題のそれを握りつぶした

ちょっと掲示板を削っちゃった感があるけど気のせいだよね。気のせいにしておこう


ちなみにこの時ちょっと救いだったのは、私の叫びに賛同して野次馬の何人かが賛同してくれたからだ


ですよね

流石に恋する乙女が秋の夜長に書いた恋文だとしても、あれはありえませんよね?


まぁこれに尾ひれむなびれついた噂が流れるのは防ぎようがないだろうけど

この言葉にするのも寒々しいブツを私が書いたと思われないだけ、マシだとしよう



「あ、ほらやっぱり。僕の言った通りでしょールー

六花ちゃんはあんなの書かないよ~」


間延びした声に振り返ると、いつだったか会ったちっちゃい執行部会長スマルトさんと、金髪物騒美人のルイスさんがいた

全身白衣の天使科は死神科ほどじゃないにしても、他の科との交流が少ないからかなり目立っている


あれ、でも確か天使は生臭がだめだとかで食堂は別のはずじゃあ・・・


「こっちで騒ぎが起こってるって聞いたから来たんだよ。ったくどこの馬鹿だぁ?余計な仕事増やしやがって!」


心底忌々しそうに毒づき、拳銃を手で弄ぶルイスさんに周囲の人垣が3歩ほど退いた


「一応聞いておくが、テメェじゃねぇよな?」


もちろん私のもてる最大限の表現力を駆使して否定させてもらった

ルイスさんも形式的な質問だったようで、あっさり退いてくれる


「ん~でもこれ微妙だよねぇ、まぁ酷い悪戯だけど

執行部の出番があるかっていわれたらねぇ」


僕らも暇じゃないし~とはスマルトさん

まぁ私としても、このくらいで大騒ぎするつもりはない


これなら手錠事件の時に立てられた噂の方がよっぽど悪質だし

むやみに騒ぎたてると噂が広がるだけだしね


言うとスマルトさんは柔和な笑顔でじゃぁお仕事はなしで!と軽く片づけてくれた

こっちとしてもそっちの方がありがたい(ルイスさんはストレス発散できなくて不満そうだったけど)


それに


―――――この手の事は執行部より、魔女の方が有利なのだ









私は野次馬の何人かを捕まえて話を聞いた後、食堂に足を向けた

まだ肝心の試験結果が取り返せてないけど、野次馬の中に目撃者はいなかった


最初の発見者が出てからほとんどこの場を動いていないそうだから、目撃者がいるとすれば食堂!


四角の長テーブルの間をうろうろし、食事が終わりそうな人に目をつける

早い時間から詰めていけば、だいたいの犯行時刻がわかるだろう。なんかもう気分は探偵ね


と、ちょうどいいことに見知った顔を見つけた


「リーアンくん!」


叫んで、後悔した。隣に覚えていたくなかった見覚えのある顔がいる

確か前につっかかってきた剣士科の奴ね、カーデンだがカーディンだかいうお坊ちゃま(※正確にはカーディナルです)

そういえばリーアンくんの家ってコイツのとこと仲良いんだっけ。付き合いが合って面倒くさいとかいってたような。ああ、やなとこに声かけちゃった、でも今さらなかったことには出来ないしあーどうしようかな面倒くさい。よし無視しよう!(※結論まで0.1秒間)


声に反応して2人――リーアンくんだけでいいのに、お坊ちゃままで一緒に――が振りむく

お坊ちゃまを視界から排除してリーアンくんに近づく。お坊ちゃまの顔が苦々しげに歪み、リーアンくんが笑顔を見せ


なぜか次の瞬間、そろって視線を彷徨わせた


え?なに?なによ


はっ!


「まさか!アンタ達あの手紙が私のもんだと思ってるんじゃ」

「なんだいきなり!」

「え、なに。なんのこと?」


・・・なさそうね

坊ちゃまはともかく目ざといリーアンくんが知らないなら大丈夫だろう


「いや、ちょっとタチの悪い悪戯がね。ところで・・・」


ばっと振りかえると馬鹿坊ちゃまがびくりと肩を振りわせた

前にぶっとばしたのが効いたみたいで、ここ最近は絡んでくることもなかった。それはそれで鬱陶しいモノが減って嬉しいんだけど


「さっきからちらちらちらちら何なのよ」


眉をひそめる

関わりたくもない奴だけど、意味ありげに見られるのはもっと嫌


軽く睨むと馬鹿坊ちゃまは眉を吊り上げて何かを怒鳴ろうと大きく口を開き

・・・結局閉じた


だからなんだってのよ!


「なに、言いたいことがあるならはっきりいって」


こっちは早く情報を集めたい、焦ってるのだ。甘ちゃん馬鹿ぼっちゃまに手間取って場合じゃないのよ!


馬鹿坊ちゃまはなぜかリーアンくんに視線を向け、顎をしゃくって何かを促す

でもリーアンくんは笑顔を固めたまま無視した


ずいっと馬鹿坊ちゃまに詰め寄る

問い詰めるならこっちのほうが楽に決まってるもの



「普段は鬱陶しいくらいに絡んでくる奴が何よ気持ち悪い!こんな時だけだんまりしてないでさっさと吐け!!!」

「うわっ!やめろ!お、俺に近づくな!」

「こっちだって好きであんたに近づいてんじゃないわよ!」

「いやだから、ああ何でわからないんだ!やっぱり落ちこぼれだな!魔女!」


はあああ?このくそ忙しい時に喧嘩売ってんのかあんたは!


ちょうどいいわ。ストレス発散にその喧嘩買ってやらぁ!と言いかけた矢先、目の前に黒いものがかかり、視界が遮られる


「・・・・・・その辺にしておけ夜半(よわ)の月」


黒い何か・・・おそらくローブから顔を出し振りかえると、いつも通り(つまり無表情、というか顔が見えない)の篁さんが

ローブを外しているのに顔が見にくいのは、背中半ばまである黒髪のせいだ


・・・正直ローブで隠れてないと死神通り越して幽霊っぽいから怖さ三割増しだけど、この人に関しては今さらよね


「目立っている。日々の糧を得る場で騒ぐのは良くない。慎むべきだ」


淡々とした声で紡がれる言葉はもっともで、素直に頷くべきなんだろうけど納得はいかない

そんな不満が顔に出てたのか、篁さんは夜色の青い目ですっと見下ろして


「・・・・・・気にするな夜半の月。そこな剣士科達は文化的意識の違いから身の置き場が無いだけだ」

「はい?」


言われて視線を元に戻すと、馬鹿坊ちゃまは突然現れた篁さんに顔を青くし、さらに私に視線をやってかららしくもなく顔を赤くしていて


「コイツが足なんか出してるから!」


言われて、気付く。そういえば私まだ着替えてないから運動着だっけ(シャツにショートパンツ)

あー忘れてた。そうだよこのお坊ちゃん育ちめ


第二世界、つまり剣士科の世界って貞操観念とか価値観が古風なせいか、女の人は基本的に足を出さないんだった

流石に今はそんなことないけど、昔はスカートが足首より短かったら顰蹙(ひんしゅく)ものだったらしい


だから今でも普通科(第二世界の貴族多い)の制服なんかは、スカートがふくらはぎの半分くらいの長さまである


庶民でもひざ丈より上になったらはしたない、って言われるらしいからねぇ

今の私みたいなふともも晒してたらはしたない、どころの騒ぎじゃないんだろうな・・・ふともも半分までしかないミニスカ見慣れてるこっちとしては、信じられないことだけど


にしてもくだらない。そんなことでうだうだ引きとめられてたわけ!?


後から思えば、同じお坊ちゃん育ちなシェイドに会ってから何度も遭遇したカルチャーショックから、これからは気をつけようくらい思って退くべきだったわね

でも丁度この時私は頭に血が上っていて、ついでにかなり焦っていて


ようするに、他人のコトなんて考えてる余裕がなかったわけで



つい


「ふとももくらいで赤くなるなんて・・・・・・剣士科って、案外初心?っていうか子供ね」


そんなことで私の貴重な時間をつぶしたとかふざけんじゃないわよ!

なんて、嫌味半分で笑ってやったらどうもオトコノコの矜持とやらを傷つけてしまったらしく


「う、う、うるさいいいいいいい!」


馬鹿坊ちゃま、あぁそうだカーディナルだっけ。カーディナルなんたらローシェンナ

で、そのカーディナル馬鹿坊ちゃまは叫びながら食堂から逃走し(なんか光る液状物体が一緒に散らしながら)


「・・・・・・六花ちゃん、それはちょっと傷つくんだけど」


笑うべきか怒るべきか、それとも落ち込むべきか

影を背負って、実に微妙な笑顔のリーアンくん


そして


「・・・・・・・・・言葉は時に薬、時に凶器。使い処をわかっているな、夜半の月」



何故かうっすら笑う篁さん

―――――前言撤回。やっぱり怖さ6割増しだ!










結局食堂ではまともに情報収集もできず、さくさく着替えて次の目的地へ向かう


探知系の魔術が使えればいいんだけど、残念ながらまだその“形”は覚えてないからやめておく

中途半端な魔術ほど怖いものはないからね


だとすれば後頼れるのは・・・



「ゆずり」


イイ男データを集める時以上に真剣な背中が振りかえる

いやアレは真剣っていうか行きすぎた熱意って感じだけど・・・


「探索系の魔獣、貸してもらえない?」


手土産に差し出した魚の干物詰め合わせに、まだら色の獅子が鳴いた



マルーン学園北部には草原と岩肌の目立つ荒れ地が広がっていて、その中に点々と在るのが獣士科の獣舎だ

獣士科はその名の通り獣を従える者達を意味する


が、獣と一口に言ってもただの獣ではない


獣の納める世界―――第六世界で暮らす魔生物

他世界の獣と違い、人と意思を交わし、強力な力、時には魔力を持つ獣を使う


一般に獣士が従えるのは魔獣

魔力、もしくはそれに相当する力を持つ獣で、才ある者ほど多くを従えられる

形は獣に限らず、魚に似た魔生物もいるが、実用性の面から水中のみでしか使えない魚属の魔生物を持つ獣士は少ない


また、特別な契約によって獣士に従うのは獣人

そのため獣人科と獣士科は合わせて考えられることが多い。人と交わり、人と獣両方の姿を持つ獣人と獣士は互いを尊重して互いを“主従”ではなく“盟友”と呼ぶ

獣士は獣人の力を借りる権利を得る代償に、人の性に押さえられた獣の性を解放し、力の源となる“血”を提供する

魔獣と違い、互いに1人としか契約できない


そして魔獣の中でも始祖、神獣の血を色濃く受け継ぐ獣――王獣

王獣は人と交わることをよしとせず、そのため第六世界の王の座も獣人王に譲っているが、未だその権威は健在。そのため獣士と契約を結ぶことはないが、時に気まぐれに契約を結ぶものもいると聞く

が、現在王獣と契約した獣士は存在しない



話は変わるが、獣士は時に召喚士とも呼ばれる

これは離れた場所にあっても魔獣・獣人を呼び出すことが出来るからで、魔術に似た力ではあるが根本的なものは異なる

そのため獣士と獣人は時に世界さえも異なる場に在る場合があるが、獣士科は


“獣士と魔獣は一心同体!みんな仲良くラブ&ピース☆”


という真面目なんだかふざけてるんだかなモットーを掲げているため、学園北部の獣舎で日々魔獣と共に絶賛共同生活中だ


で、六花が訪れたのはそんな獣士と魔獣の愛の巣(あながち間違ってない)の一つ、親友・桃山ゆずりと彼女の愛獣達の獣舎だ



「久しぶり、赤夜(せきや)。これあげるから、ちょっと中はいってもいい?」


獣舎では獣士と同じく魔獣にも声をかけるのがエチケット

魔獣はプライドが高いし、獣士にも自分の魔獣を親友!とか相棒!とか呼んで人間以上に可愛がってる獣バカが多いから、その人たちの前で魔獣をそこらの動物扱いしようものなら、全獣士科を敵に回すはめになるのよね・・・


赤夜・・・真っ黒のたてがみに赤と黒のまだら色の身体を持つ獅子はゆずりが一番最初に従えた魔獣で、私もよく知ってる獣だからあっさり許可は下りた

木造の獣舎の中は藁が散らばっていて、いくらかローブについたけど気にしない


赤夜をブラッシングしていたゆずりに並ぶと、うとうととしていた赤夜は金色の目を此方へ向けて


『久しいな御友人。昔は二日と開けずに通っていたものを』


低い声は微かに笑みを含んでいて、親友と同じく付き合いの長い魔獣の気安さに思わず笑った


「ごめんなさい。ちょっと最近忙しくて」

「ふっふっふ~六花ってば最近旦那が出来たもんだから、浮かれて「嘘だからね赤夜!」


慌てて否定するけど、人間並みに人間っぽい思考の赤夜はうっそり笑って


『否定する必要はないぞ御友人。伴侶を得るのは大切なことだ。やや子は一人では得られぬ』


・・・果たしてこの発言、どこまでが冗談なのか

赤夜は主に似て、いやむしろゆずりが赤夜に似てたちの悪い冗談が好きなのよね


ついでに


『・・・・・・して御友人、我が主に悪い虫はついてはおらぬか?私は滅多にここから出られぬ故、獣士科内ならばともかく他の虫共は中々はらえぬのだ』


超がつくほどの主馬鹿。というより父性愛かな

ゆずりが赤夜と契約した時はまだ6,7歳だったから、主人っていうより自分の子供みたいな感覚で相手してたから


「ご心配なく。相変わらず告白→玉砕ばっかりで男っ気はないから」

『うむ。主には悪いが、伴侶候補が出ようとも私が認めぬ限り、相手には消えてもらうしかなかろうな

御友人、今後も定期報告をよろしく頼むぞ』


年頃の娘を持つ父親まんまの台詞に苦笑する

昔から、ゆずりのことに関しては細かいなぁ赤夜は。前なんてちょっと犬触って帰っただけで


『主よ覚えのない匂いがするが、何処の雄に移り香がするほどに接近を許したのか!』


って吠えまくって大変だったもんね・・・にしても


「相変わらず、ゆずり以外は名前で呼ばないね。赤夜は」


私はずっと『御友人』だし、ゆずりの家族も父君・母君としか呼ばない。名前で呼ぶのは主のゆずりだけだけど、それも特別な時にしか呼ばないらしい


『私たちにとって“名”は特別。故に気安く呼ぶものではないし、呼ぶことも許さぬ

御友人は主が許したので構わぬが、他のものが赤夜よ呼ぼうものなら腕の一本は覚悟してもらわねばならぬわ』


さらーっと言ったけど、結構怖いね赤夜

まぁ魔獣達は主に従う代わりに名前を差し出す、ってくらいだから重要な意味があるんだろう

私たち魔女も、本名とは別に契約や魔術を使う時に使う魔女名・・・“力ある名”があるしね


『気になるならば御友人が魔女名を持ち、力ある名がそちらに移れば名を呼ぼう

だがそれまでは、御友人だ』


赤夜が軽く笑い、生温かい風にひげがそよぐ

・・・・・・で、思い出した


「そうよこんなこと、いや赤夜との会話がどうこうじゃなくて!のんびりしてる場合じゃないの!ゆずり!」

「御褒美が魚だけじゃねぇ「リーアンくん提供、普通科イケメン男子プロフィール」のった!」


ふっ、どうせそんなことだろうと思って用意しておいてよかったわ!

前に普通科(金持ち科)はガード堅くてデータ集まりにくいとかぼやいてたからね


私が密かにガッツポーズを決めてる間に、決断したら即行動派のゆずりが魔獣を呼び出す


「探査系なら赤夜でもいいんだけど、目立つから・・・白砂(しらさご)!」


ゆずりの声に合わせて現れたのは、手のひらサイズのコウモリっぽい魔獣

なんで“ぽい”かっていうと、コウモリにしては毛がふさふさだから。ついでに色も黒じゃなくて、白をベースにところどころ淡い砂色の毛が混じっている


「この子は目は悪いけど耳と鼻は良いから探索にはオススメ~

で、あんたのことだから用意してるんでしょ?捜し物の手掛かり。匂い覚えさせるからちょっと貸して」


言われて、例の薄ピンクの便せんを差し出すとゆずりはぶはっと吐き出してから、白砂にそれを差し出す

ちびっこコウモリは可愛らしい仕草でその匂いを嗅いだ後、耳をピクピク動かしてゆずりの手から飛び立った



「さっすがあたしの魔獣!優秀、優秀!んじゃ行くわよ六花!」

「わかった・・・ってあんたも来るわけ!?」

「こんな面白そうなこと見逃すわけないでしょ~このゆずりさんが!というわけでどんな状況なのかキリキリ吐きなさーいv」

『主・御友人、気をつけて行くように』


赤夜の声に見送られ、私とゆずりは獣士科のエリアを超えて、中央の校舎が立ち並ぶ学科棟エリアへ向かう

その中で白砂が向かったのは中央の共通棟から見て東側、≪紅蓮の魔女の森≫に近い棟・・・・・・ん?


「ねぇ六花、この方向って」

「・・・もしかしてもしかしなくても、魔女科の方ね」


まぁ第一容疑者は魔女だからそれはいい。それはいいんだけど、何が問題かって白砂ちゃんが向かっているのは魔女科の棟の2階、それもこのまま真っ直ぐ飛ぶとしたら、さっき私が着替えに戻ったロッカールームで・・・


「・・・・・・犯人は現場に戻る?」


まさにそのロッカールームの前で、褒めてと言わんばかりに羽をばたつかせながら白砂ちゃんが飛びまわる

ゆずりが追いつくと彼女の肩にとまってここーここーと可愛らしくアピール


ってことはやっぱりここなわけで


嫌な予感に眉を寄せて、戸を開く




「・・・・・・・・・・・・・・はい?」


我ながら間の抜けた声だと思うけど、予想外な光景があったんだからしょうがない


ロッカールームには私と同じ2年の魔女たちがほぼ勢ぞろいしていた

黒いローブが円を描くように蠢いていて、その中心で青い顔をしているのは、呪詛まがいな視線を送っていた件の魔女

その隣で面倒くさそうにそっぽを向いているのがパティ。探査用の道具・羅針盤を持ってるから、頼んだようにあのメモと預けた魔女を使って犯人を探してくれていたんだろう


それだけならいい。流れからして犯人は青くなってる魔女なんだろうし、ありがとうパティ、持つべきものは友達ね的なお決まり文句を言えば終わりだ


問題は


その魔女の正面、対峙するように―――周囲の魔女達を引き連れるように一歩前に出、冷徹な目で彼女を見下ろすその人



ウイスタリア・フィ・クローヴァー



「・・・どーなってんのよこれ」


背後でゆずりが呟く


私も全く同じ気持ちだった






だんだん面倒なことになっていく事態。基本的に六花はこんな感じです

好転ならぬ悪転必至(笑)

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