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Musica Elaborate  作者: 柊
本編~学園編~
32/59

生徒会と執行部 2





例えば友達とお菓子つまみながらおしゃべりしたり、愚痴言いながら一緒に宿題したり、好きな人の話で盛り上がったり


ってのが、一般的なお休みの過ごし方だと思うわけで

あ、最後はお泊まり会の夜?・・・ま、いいわ



えーとにかく、平穏な昼下がりっていうのは決してツンドラ地帯みたいに極寒だったり、暗黒渦巻くカオスな光景ではありえないわけで

むしろそんな非常識的な風景は、現実のものではないと割り切ってスルーしても誰も責めないよね、っていうか責めてくれるなと私は主張したい!



・・・・・・・・・・なーんて

乾いた笑みがこぼれる


「この状況でなーにいってんの私」


アハハハハハ


えーっとこんにちは皆様、本日はお日柄もよく・・・って誰に話してるの私

・・・ま、いいや


えぇお日柄は非常にいいんです。そりゃぁもう理想の昼下がりの日差し!

中庭で本でも読んだら気持ちいいだろうなーなんて思うような素敵なお天気!


なんですけどね


そんな日に、なんで、よりにもよって




「消え失せろ」

「形だけの副会長が何を偉そ「耳障りだ、黙れ、邪魔だ、去ね」

「おい!せめて最後まで「これ以上喋るな、紫、六花を連れて別室に行っていろ。ティエンラン、篁、桜、血に汚れたくなければ下がっていろ。邪魔だ」


―――血生臭い予感漂いまくりなんですか?


しかもここ学校、それも生徒会室!

あっれー生徒会室って生徒の模範になるような生徒がいるんじゃなかったっけ?


ってこれは今更か。なんたってボス紫ちゃんだし


・・・・・・・じゃなくて!すっとぼけたこと言ってる場合じゃない!

見たとこ止め役がいない以上、私まで現実逃避の旅に出てる暇はない


正直、面倒だけどね!



「ちょーっと待ったくぅ兄!」


刀に手をかけたくぅ兄がなんだ、と振り返る

ホントに血が繋がってるのか疑わしいほど顔のよろしい従兄は、機嫌が悪いと迫力3割増しだ


「や、何がなんだかわからないけど、一応ここ生徒会室!学校内!

だから刃傷沙汰は控えよう、ね?」


くぅ兄がお願い、に弱いのはよく知ってる

昔よくねだって遊びに連れて行ってもらったのだ


って今はそれは置いておいて

まぁ確かに部屋が汚れるな、とかいいつつも抜きかけだった刀が納められる


あーよかった、んでまぁ後は間違いなく原因だろうローシェンナ(兄)にどっかに行ってもらって・・・




「ふん、お前の知り合いにも常識のある奴はいるようだな」


――――人がせっかく収めたってのにこの坊ちゃんは!


はっと鼻で笑う様は、初対面の私が見ても腹が立つ

というか殴りたい、っていうか空気読め?あんた死にかけだったんだからね?


ってほらまたそんなこと言うからくぅ兄刀抜いてるじゃん!


「くぅ兄~っ気持は十二分に分かるし正直私もこの手の奴は畳んで捨てたいんだけどっ!」


今は、いやこの場ではやめて!


羽交い絞めに・・・出来たらいいけど、頭一つ半は違う背丈じゃ無理で

とにかく止めようと背中からしがみつく


と、途端にピタリとくぅ兄の動きが止まった

ん?あれ、機嫌直った?いやでもまた刀抜いてるし・・・



とか思っていた矢先、紫ちゃんの呆れた声が


「紅、嬉しいのは分かるけどやせ我慢はやめなさい」


んん?


何のこと、と振り返ると、たまたま目のあったシェイドがバカ!と口パクでいう

途端にいつもの癖、というか一気に頭に血が昇る


「アンタにバカって言われる筋合いないわよ!」

「・・・残念ながら、今回だけはその筋合いがあるのよ六花ちゃん」


まぁ面白がってた私にも、原因はあるけどね



と、紫ちゃんが立ちあがってついっとこちらに近づいた

ローシェンナ(兄)が何か言ってたみたいだけど、そこら辺は軽く無視で


そして私からはよく見えないくぅ兄の顔を吟味するように見、それから視線を落として私が抱きついているところを見、そして私を見て



「六花ちゃん・・・・・・そろそろ話してあげないと、紅のあばらが折れるわ」


白峰六花、100キロの本棚を悠々持ち上げ、大の男3人を引きずるだけの怪力の持ち主

当然の如く、その抱きつきもとい絞め技は―――半端ではない


慌てていて、力加減を忘れていたなら なおさら



「ギャーくぅ兄死なないで!」


私この年で前科つきたくないっ!


「あら、紅が訴えなければ問題ないわよ。この程度ならすぐ直るだろうし」

「そういう問題ですか!」


珍しいシェイドのツッコミは完全にスルーでした

・・・すねないでよ










「それで、執行部会長副会長がお揃いで、何か御用?」


騒ぎが収まり、全員が一息ついたテーブルで二コリと微笑みながら紫ちゃんが切り出す

――――ただし会長さん(スマルト)の方だけみて


一瞬殺気立った副会長・ローシェンナ兄に冷や汗が流れたんだけど


「ボクはお仕事~ウォルくんは知らない。何しに来たの?」


いけしゃあしゃあと聞く会長さんを見て、あぁそういう役回りなんだ、と納得


「・・・しっかしまぁ、そうそうたる顔ぶれよねぇ」


誰か卒倒してもおかしくないわよ


「・・・・・・まぁな」


そう、あの他人に無関心シェイドが納得するくらい、ありえない顔ぶれだ



執行部――学園の秩序を守ることを第一とする、生徒による自警組織

ま、要するに規律違反者や問題児とっ捕まえてお仕置きするのが仕事な組織だ


ちなみに私は連中に準・要注意人物としてバッチリ目ぇつけられてます

主な原因の伯爵令嬢は何も言われてないのにね!まぁこれだけでもどんな組織かってーのはわかるでしょう


で、まぁどちらかというとカリスマ性重視な生徒会長と違って、厳格真面目、ついでにいえば御家柄の高い人が代表になるだけあって、一応上司にあたるはずの生徒会との仲はすこぶる悪い

・・・・・・まぁそれは生徒会がトンデモ企画おっ立てて授業潰してる、ってのもあるんだけど


とにかく代々顔を合わせればそれは下っ端だろうが空気が凍る生徒会と執行部


その学園二大巨頭のトップとナンバー2が顔合わせてるとくれば―――



「・・・・・・カオスだわ」


とはいっても、悪い空気放出しまくってるのは、くぅ兄とローシェンナ兄だけだけどね

いや、だけ、っていうには空気悪すぎるっていうか、まさに一触即発!って感じだけども


ちらりと視線をやる

それぞれの代表を挟んで、お互い視線で射殺そうとしてるみたいなくぅ兄とローシェンナ兄


・・・の、間で



「や~この紅茶なかなかだねぇ紫くん。どこのもの?」

「第2世界のウィングランドンよ。ちょっとこの間“お仕事”に行った時に買ってきたの」


とてもじゃないが、敵対組織のボス同志には見えない会長二人


えーちなみに注釈

紫ちゃんは、たまーに藍さんとかおばあさんの瑪瑙さんに頼まれて、お仕事というなの荒行をかましているそうです

ちなみに聞いた話じゃぁこの時の『お仕事』では山一つぶっ飛ばしたらしいです、紫ちゃん


・・・・・・や、うん、ホント何やってんだろう紫ちゃん

まぁ聞いたが最期だから知りたくもないけどね!



「なんていうか・・・のんびりしてるよね~会長さんの方は」

「そりゃそうだ、うちの昼行燈に久我紫と戦う度胸なんざねぇよ」


ぱっと振り向くと、立ったまま紅茶飲んでる美人さん

・・・・・・せっかくの綺麗なお顔が歪んでらっしゃいますが


「あの」

「なにかっつーと面倒面倒面倒面倒いいやがって!こっちの気もしれってんだよっ!だいたいあの馬鹿が代表になってから、すっかり執行部はふぬけたって先輩連中から言われてっ!つーかなんでその苦情があたしんとこ来るんだよ!!!」


・・・・・・・・・・・・・・・え、ん?今もしかして愚痴られてんの私?


っていうか苦労してるんだなぁこの人

スマルトさん、というか会長さんとは話したことないけど・・・あの紫ちゃんが面白いって“大絶賛”するくらいだから、子供っぽい顔して諸々あるんだろうなぁ・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんかそんなのばっかじゃない?うちの学園



「今さらだろ」

「美人さん、読心術でも使えるんですか?」

「全部声出てんだよ、あんた」


うっそ、うわーマズイな。暫くやってないうちに、腹芸できなくなった?


「心配しなくても、お前の性格の悪さはそう簡単には治らないぞ」

「よーっし今ここにアンタをボコることが決定したから、覚悟しなさいシェイド」

「断る」

「残念、意見なんか聞いてないのよ!さっさと面貸しなさいっ!!!」


ひょいっとゼリー(2個目)をつまみながら逃げるシェイド

あんた・・・伯爵令嬢やファンが見たら泣くぞ


まぁ泣いてくれた方が、日頃常々嫌がらせを受けてる身としては嬉しいんだけどね!


「アハハハ、元気だねぇ紅くんの従妹ちゃん」

「・・・・・・・・・・・・どっから湧いて出やがった」

「失礼だね、ルー。僕はフツーに紫くんの隣からルーの隣に来ただけだよ」


笑うと更に幼くなる顔に満面の笑みを浮かべ、ひと際空気が悪い方に顎をしゃくる

・・・見れば紫ちゃんの腰にくぅ兄が手をまわし、それにローシェンナ兄が噛みついていて


まぁ一言でいえば


「修羅場?」

「三角関係、っていうにはウォルくんが一方的すぎて笑えるけどね~」


さらりととんでもないことを言って、会長さんは私にニッコリ笑顔を向けて


「始めまして、僕はスマルト・G・バーガンディ。天使科の7年だよ

名字って他人行儀だから名前でよんでね~」

「へ、あ、白峰六花、魔女科2年です!で、こっちが」

「へいど「ちゃんと食べてからいいなさい!」シェイド・ラ・ティエンラン、剣士科の2年です

あ、おい!俺のだ、盗るなよ!」

「アンタがちゃんと自己紹介しないからでしょ!?」

「アハハ、仲良しだなぁ~。ねぇ、ルー?あ、この子はルーっていってね」


勝手に自己紹介を始めた会長さんの口をふさぎ、美人さんは口角を上げて


「ルイス・カメリア・X、この昼行燈と同じく天使科の5年。んで、執行部実行部隊だ

規律違反する馬鹿にゃ言い訳無用で鉛玉くれてやるから、覚悟しとけ」


その手に構えるゴツイ銃が怖いよ美人さん

一瞬動きを止めた私とシェイドに、まったく動じていないスマルトさんはまたもニッコリ


「ルーは短気だから、悪戯する時は見つからないように気をつけてね?

アハハ、見つからなかったら悪戯も悪戯じゃなくなるからね~」

「仮にも執行部の代表が、規律違反推奨してんじゃねぇよこの駄目会長!」


ルイスの蹴りが飛ぶ。ついでに銃声が響いたのは、普段の癖だ


ここしばらくの特訓で危機回避能力をしっかり身につけた六花とシェイドは、離れて完全傍観体制に入っていた桜と篁のところまで非難する


「・・・なんていうか」


何しに来たの、あの人達


「ふぁーは(さぁな)」


六花は無言で、ゼリーに喰いつくシェイドの頭をはたいた











「・・・つーか、結局何しにいったんだよ、アンタ」


ひと悶着終えて、結局後日仕切り直しということで生徒会室を後にした執行部

八つ当たりともいえるウォルナットの小言を聞き終え、ルイスは懲りた風もなく菓子をつまむスマルトを睨むが、当の本人は素知らぬ顔で


「だーから、言ったじゃない、ルー。紫くんのお気に入り見に行ったの~」


カラフルなチョコレートを一つつまみあげ、口に含む

ルイスは舌打ち一つし、苛立たしげに机をたたいた


「なんでわざわざ見に行ったのか、って聞いてんだよ!」


わかってんだろ、アンタなら!


苦々しげに眉根を寄せるルイスに対し、あくまでスマルトはのんびりした調子で


「それは~ルーの買被り過ぎ~。あ、チョコレート食べる?」

「いらねぇよ!んなことより、あんたはもっと前に出張れ!これだから前の連中にウダウダと!」

「僕にウォルくんのマネしろって~?やだよ、命がいくつあっても足りないじゃない」

「そういうことじゃ・・・は?命?」


そうそう、頷き、それからやっとチョコレートに向けていた視線をルイスにやって


「ところでルー、今日はちゃーんと六花くんとシェイドくんの顔覚えてきた?」

「あ?まぁ、白峰六花は前から準・注意人物で覚えてるし

シェイド・ラ・ティエンランも有名だからな、覚えてっけど・・・」

「じゃぁいいや、忘れないでね。紫くんの“お気に入り”だから」


疑問符を浮かべるルイスに、スマルトはまた二コリと笑って、それから思い出したように


「あ、そうそう。悪いけどさぁ、そこの失敗作捨ててきてくれない?」


視線の先には紙の山――ちょうど、ルイスが生徒会に運んだものと同じくらいの量が

訝しげに一枚ぬきとり、ざっと眺めてルイスは目を見張った


「ちょ、おい会長!これ生徒会に持っていくはずの書類じゃ」

「だーかーらー失敗作なの、それ。失敗してたの捨てていったらそんなになっちゃって

非力な僕じゃーゴミ箱まで持ってけないからヨロシク~」

「はぁっ!?おい、ふざけ「あ、だーいじょうぶ。ルーはいい子だから大丈夫だったよ」

「んなこと聞いてんじゃ・・・」


眉根を寄せ、再びルイスは書類に視線を落とし―――片眉をはね上げた


「・・・こーりゃ確かに失敗作だな」

「でしょ?」

「っとに、最近の部員は弛んでんじゃねぇの?書類もまともにつくれねぇなんて、よっ!」


しごかねぇとな、なんて部員が聞けば震えあがりそうなことを呟きながらルイスが部屋を後にする

何だかんだ言いつつ、きっちり紙束も持って行ったルイスの背中に笑みをくれ



「ホントにルーはいい子だねぇ―――そう思わない?紫くん」

『確かに、執行部員にしては出来た子じゃない』


机の上に散らかされたチョコレートと共に無造作に置かれた石が、ぼうっと光を放つ

―――通信石だ


「でしょーボクのお気に入り、いいでしょ~いい子でしょ~あげないからね」

『貴方のお気に入りを盗ろうなんて、命知らずはいないんじゃない?』

「そ~かなぁ、君に嫌がらせしにかかるおバカさんがいるくらいだから、いるかもしれないよ?」


へにゃりと笑って、先ほどまで生徒会宛の不備書類が積まれてあった場所に視線をやり


「ほんとにねぇ、みんな面倒なこと好きだよねぇ」

『貴方の様な、面倒くさがりばかりだと私も楽なのだけどね』

「頑張って人に迷惑かける、なんて。世の中上手く出来てないものだよねぇ~」


クスリという笑みを残して、通信は途切れた



「ま~ボクはせいぜい頑張らないで行くさ~」


何か色々間違ったことを呟きつつ、スマルトは縦縞模様のカップを2つ引きよせ、茶を注ぐ



ちょうど彼の“お気に入り”が文句を携えて、帰って来たところだった







キャラ増量編は終わりです。ごっちゃごっちゃしてますが話が動き出せばそれぞれもっと濃く出来るかと・・・


次回からちょっと話が動きます。テスト編です

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