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Musica Elaborate  作者: 柊
本編~学園編~
20/59

雑草魂エクスプロージョン 2



授業のあと、六花は割と機嫌が良かった

いつもは戦術討論になってもたいてい数回で終わり――――下手したらわざと発言させてもらえない時さえあったのだ・・・・・・・なにせ知識がある上に弁が立つものだから、誰相手でも言い負かされるので


だから久しぶりに思う存分討論出来たのは気分が良かった



――――――残念ながら彼女の上機嫌が長く続くことはない





意気揚々と(今日はチームでの練習の日なので)演習場に向かっていた時のこと


「白峰さん」


もう、その声だけで頭は逃げる体制に入っていた

がしかし手錠で繋がれたもう一人が止まってしまったためにそれは叶わない


ゆっくりと、出来れば聞き間違いであってほしいと願いつつ―――振り返り

頭を抱えたくなるのを必死にこらえた


一筋もこぼさずに後ろでキュッと詰められた緑の髪

吊り目気味の黄色い目は真っ直ぐ六花を見つめ、立ち姿は自信に溢れて堂々とした印象を受ける


ウイスタリア・フィ・クローヴァー

貴族の証しであるミドルネームを持つ、魔女科では珍しい彼女は真面目実直、完璧主義な魔女科の首席


「・・・・・・話す時くらいそれ、どうにかならないのか」

「出来たらとっくにしてるだろ」


不機嫌そうに眉をしかめて指を突き付けられたシェイドはもっともな答えを返したが・・・・無視

――――彼女は重度の剣士科嫌いとして有名だった


「あーあの、コイツはまぁ・・・・・空気だとでも思って

興味ないことにはとことん興味ない奴だから、別に何聞いても口外はしないだろうし

・・・・・・そもそも口外できるほど友達もいなさそうだし」

「オイ!」


怒鳴ったものの、多分私の考えは当たってるはず

だってまだ二日目とはいえ、私が会ったこいつの友達って灰くんだけだし

クラスメイトとして事務的、というか軽い挨拶くらいはしてる人いたけど友達って感じじゃなかった


ほんとにただのクラスメイト、みたいな(まぁそれも数人だったけど)

・・・・・・・ってコイツの考察なんかしてる場合じゃなかったわ


もうはっきりいってしまえば私は・・・・・・クローヴァーさんは苦手だ


でも別に嫌いとかじゃなくて、そう、いうなればアレだ。食べれるけど進んで食べたくはない野菜みたいな


そしてクローヴァーさんの方は私のことが嫌いだ


別にこれは被害者意識過剰とかそういうのじゃない。これだけは絶対に言いきれる


なぜなら



「・・・・・・・・随分と仲がよさそうなことだ、噂は本当のようだな」


・・・・・・・・・・・・来た


「まぁ別に他人の交友関係にとやかくいうつもりはないが」


じゃぁ言うな!・・・って言いたいけど言ったが最後、話が長引く

だからここはひたすら忍耐あるのみ


「あまり私達魔女科に迷惑をかけるような行動は控えてくれ。貴方は貴方個人であると同時に魔女科という団体の一員なのだから

貴方一人の行動が私達全体の評価に関わることだって・・・・・・(以下略)」


・・・・・・・・・・・・・・勝手に勘違いしといて人に説教かましてんじゃ

・・・・・いやいやいやいや、落ち着いて、落ち着いて私


今目の前にあるのはカボチャ、しゃべる緑のカボチャ

集まれ私の理性!


「・・・・・貴方が軽い女だと勘違いされるのは貴方の自業自得だが、私達他の魔女まで勘違いされては困る」

「いや、これは学科混合戦の練習の一環で、チームワークを養うためのものであって決して趣味とかそんなんじゃないんだけど」


・・・・・とはいえ、ここだけは、ここだけは!訂正させてもらうけどね

誰が軽い女だ誰が、うちは代々身持ちが堅いんだから


ホントはもっと言ってやりたいけど、言いだしたらキリないし


「ほう、練習・・・・しかし他のチームや、ましてや貴方のチームの他の誰もそんなことはしていないじゃないか」

「いや、それは私達が要練習と判断されただけで」

「ならばそれは貴方のせいだろうな。練習が足りないならもっと練習しておけばよかったのだ

それを、そんな強硬手段に出なければならなくなるまで放置しておいた貴方が悪い


・・・・剣士科など称賛するのも腹立たしいが、彼は優秀なのだろう?おおかた、また貴方が失敗して足でも引っ張っているんだろうが」


・・・・・・・・・・・落ち着け自分


「ただでさえ貴方の爆発は剣士科が魔女科を馬鹿にするいいネタになっているんだ

貴方の能力で見返せ、とまでは期待できないがせめてフェアくらいには持ち込んでくれ


そのくらいなら出来るだろう」


言いたいことはそれだけだ



「・・・・・・ご忠告どうも」


よし終わった!良く頑張った私の理性!


「クラス代表として当然のことをしたまでだ。たとえそれが嫌いな人間であっても、私には貴方に関わる義務がある」


・・・・・・・・・はっきり言ってくれる分、他の奴らより正々堂々と褒めるべき?


カツカツという規則正しい足音が遠ざかるまで見送って


「あー・・・ごめんね、付き合わせて。クローヴァーさんかーなり剣士科嫌いで、急に合同授業とか入ったからイラついてるんだと思うのよ」


あはは、と笑って振り仰ぐと

――――見たことないくらい、堅い顔したアイツがいた











あからさまに嫌悪を込めた目に、初めは俺が嫌われているんだろうと思った

剣士科が魔女科を嫌うように、魔女科もまた剣士科を嫌っているからな

・・・・・・と思ってたんだが


「あまり私達魔女科に迷惑をかけるような行動は控えてくれ。貴方は貴方個人であると同時に魔女科という団体の一員なのだから

貴方一人の行動が私達全体の評価に関わることだって・・・・・・(以下略)」


・・・・・・・・・・どうもそれだけじゃなさそうだな

まぁだからって俺が口を出す問題でもないが――――


「・・・・・貴方が軽い女だと勘違いされるのは貴方の自業自得だが、私達他の魔女まで勘違いされては困る」


といって突然現れた魔女は、俺を睨みつけてきた

――――ちょっと待て、まさか俺はコイツとただれた関係だとか思われてるのか!?


だが俺が何かを言うよりも白峰が口を開く方が早かった


「いや、これは学科混合戦の練習の一環で、チームワークを養うためのものであって決して趣味とかそんなんじゃないんだけど」


そりゃぁそうだろ

俺も不本意ながら一応パートナーの相手がこんな趣味だったら嫌だぞ


「ほう、練習・・・・しかし他のチームや、ましてや貴方のチームの他の誰もそんなことはしていないじゃないか」


・・・・・・他のチームの代表まであんな突拍子もない人でたまるか


「いや、それは私達が要練習と判断されただけで」

「ならばそれは貴方のせいだろうな。練習が足りないならもっと練習しておけばよかったのだ

それを、そんな強硬手段に出なければならなくなるまで放置しておいた貴方が悪い」


言っていることはもっともらしいが・・・・・・・言い過ぎじゃないか?

我知らずシェイドは眉をひそめた


いや、それ以上におかしい・・・・・・・何が? ――――この状況が

確かに要練習だろう、出来ていないし


でもそれは



「・・・・剣士科など称賛するのも腹立たしいが、彼は優秀なのだろう?おおかた、また貴方が失敗して足でも引っ張っているんだろうが」


――――俺も同じだろう?

魔術の失敗はコイツに責任がある、でも息が合わないのはコイツだけが悪いわけじゃない


俺も悪い


コイツだけ一方的に責められるのはおかしい


そこまで考えて、固まった

そうだ、俺も悪かったんだ


――――――そして俺はそれをわかってた

わかってて、知らないふりをした


コイツが気に入らなかったとか、気が合わないとか、いいわけして

・・・・・・・・・・・・・馬鹿だな、俺も


これじゃぁ灰にバカって言われても言い返せない

気に入らないからって全部相手が悪いことにしてたなんて、子供みたいだ


―――――自分では、もっと大人になったつもりだったのに



「あー・・・ごめんね、付き合わせて。クローヴァーさんかーなり剣士科嫌いで、急に合同授業とか入ったからイラついてるんだと思うのよ」


耳に入るのは軽い笑い声・・・・・驚いた

浮かぶ言葉はたった一つだ―――――――どうしてだ?









「だからあんたのこと睨んだりしてたけどあんまり気にしない方が」

「・・・・・・どうしてだ?」


少しだけ驚きをはらんだ声で、シェイドが言う


「どうして、って・・・何が?」

「さっきあの魔女が言って―――」


それだけで、なんとなく言いたいことはわかった


「あぁあれね、うん、クローヴァーさんの言うことももっともだよねぇ

私滅多に魔術成功できないし、アンタの足何か引っ張るか!なんてエラソーにいったくせに

結局引っ張っちゃってるしさぁ。あはは、意地張っちゃって言えなかったけど、ホントごめん、ご」

「そうじゃない」


二度目の謝罪は強い声に遮られた

思わず目を見開く六花に、シェイドは気まずいのか、少し眉を下げて


「そうじゃなくて、さっきあの魔女が言ってたこと、辛くないのか?」


一瞬、意味が分からなかった

他の人に言われたらすぐわかったんだろうけど、なにせ相手はティエンラン


お互い口を開けば憎まれ口・・・・・だったはずなんだけど

なんか今のって―――――気を遣われてる?


「いや、そりゃぁグサっときたけど。ホントのことだし」

「でも辛くないわけじゃないんだろ、なのになんで―――笑うんだ?」

「なんでって


―――――――辛い時に、いつでも辛い顔するわけじゃないでしょ?」


言って、それからすぐ我に返った


「そ、それにさぁさっきのは別にそんな辛い顔するほど辛くないし!

クローヴァーさんはホントのこといってるだけだから、むしろそれで被害者面するのはお門違いっていうか」


ティエンランはどうしたのか、怒ったような―――それにどこか悲しいような

妙な顔をして、何かを言おうとした


その前に、続ける



「それに別にそんなの慣れてるから気にしないし、私!」


何かを言おうとしたまま、口を半開きにしてるティエンランは・・・・・・こんな時になんだけど、ちょっと抜けてるように見えて面白かった



「どうしてだ?」


・・・・・またどうして?ですか

好きだねその問い


「どうしてそこまで、慣れなければいけない(・・・・・・・・・・)くらい言われてまで耐えてるんだ?」


―――――全然、気なんか合わないし、好きでもないくせに

なんでこんなに、コイツは核心をついてくるんだろう



「それは」


でも、この質問だけは



「絶対叶えたい、夢があるから」


笑って答えられるよ



「小さいころからの憧れなの、だから絶対、諦めたくない


だからよ」


って・・・・・・・何言ってんだろ、私

コイツのことだから、どうせ夢より現実見ろよとか返すに




「そうか」


決まってると思ったんだけど・・・・・・

また私の考えを裏切ってくれましたコイツは


返ってきたのは肯定の言葉、それに



碧の――――私の大好きなあの海(・・・)と同じ、碧の目をゆるやかに細めて 柔らかく

とても穏やかな、その表情(かお)の名は――――――


「・・・・・・・うん」



それに一瞬、ホントに一瞬だけ・・・・見惚れてしまったのは

――――――― 一生の不覚だ








に、20話目にしてやっと打ち解けてきた・・・まぁまだ一歩前進、くらいですが

あと普段笑わない人の笑顔の破壊力は半端ないと思います(笑)

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