表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Musica Elaborate  作者: 柊
本編~学園編~
19/59

雑草魂エクスプロージョン 1




「・・・・・・・・・・六花、生気が抜けてるわ」

「・・・・パティ」


あんたそれは抜けない方がおかしいってもんよ?

昨日はカナリア先生のとこでなんでか知らないうちに寝ちゃってて、起きたら夜でなんか流れで夕飯もごちそうになって


うん、ここまではよかった

さて帰ってお風呂でもいこうかー・・・・と思ったけど


わたし、女  ティエンラン、男

うん、入れるわけないね


トイレは・・・・恥を忍んでどうにかしたけど、流石にお風呂は無理、というかお互いに絶対拒否

おまけに女子寮は男子禁制、男子寮も同じく・・・・・いったいどこで寝ろと?



「三日間はうちの部屋つかっていいわよ?もちろん二人で」


と笑顔にのたまった紫ちゃん

うん、この状況に追い込んだのは紫ちゃんだけど、一応ありがとう


で、お風呂は?


「一緒に入れば?」


当然これには二人して大ブーイング

珍しいことだけど、当然の反応だと思います、はい


「仲良くなるには裸の付き合いが一番なんだけど」

「笑えない冗談はお願いだからやめて紫ちゃん」


わかってる、冗談よ

とは付け足してくれたけど・・・・絶対本気だったよ、あれ


まぁそういうわけでお風呂はなんとか免除されたもののベッドまでは許してくれず・・・結局一緒に寝る羽目に

まぁ寝付けなかったけどね



「あぁ」

「うん、なんかとてつもなく無反応に近いけど、今それがすごくうれしいわパティ」


えぇそりゃぁもう、なんてったって

朝、人目を憚って食堂まで行ったはずなのに、例の伯爵令嬢に一緒に紫ちゃんちを出たのを見られてて


また食堂で大騒ぎ→疾風の如く噂が流れて→陰口Verアップ・・・・・ふざけんな!


「あぁ・・・・焼きたてクロワッサンの味もしなかった」

「味覚障害なら病院行ってきなさい」

「そのくらい滅入ってるっていってるの」


隣のティエンランにいたっては聞いてるのかいないのか

・・・・ていうかちょっと青ざめてる?


「あんた気分でも悪いの?」


ビクゥッ


・・・・・・・・え、何その反応


「・・・・・・・・・・・何か用か」

「や、用っていうか・・・・なんであんた視線そらしてんの?」

「別に」


別にじゃないでしょその反応


顔を覗き込むと左を向き、左を向くと右を向く・・・・・・・だからなんなんだっての!!!


「・・・・六花、あんた何かしたんじゃないの?」

「覚えがありません、それに何かやってたらコイツだって黙ってないでしょ?」


と視線をやると・・・ティエンランは思いっきりあからさまにこちらから目をそらしました



「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・ちょ、あんた、なんで何もいわないわけ」

「いや、別に・・・」


別にじゃないってその反応は!


というか



「ちょっと!ホント私あんたに何したの!?」

「べ、別にっていってるだろ!!?」


思わず立ち上がって怒鳴り合う二人を止めたのは


「おっほん!」


咳払いと、教師からの鋭い視線



こうして昨日よりはマシだが決して良くはない始まり方で、手錠生活二日目が始まった











流石に一日目は往生際悪くあがいていた二人も、二日目には諦めていた

今日と明日さえ我慢すればこの悪夢も終わるのだ。と互いに言い聞かせて


さて人間諦めると思わぬ一歩を踏み出すもので


「あ、悪いんだけどその棚の上から二段目の・・・それ、緑の表紙の本とって!」

「・・・・これか」

「そうそう、ありがとー」


ちなみにこれ、急に仲良くなったわけではなく


六花の方は

『よく考えれば図体デカイ男手がいると助かるんだよね。踏み台いらず?』


シェイドはシェイドで

『剣の練習ができないのはアレだが、コイツ隣にいると宿題ははかどるな。必要な資料全部揃えてくれるから』


と、両者ともに相手を効率よく利用する方法を思いついたようで

お互いギヴ&テイク、ということで利用しつつされつつの関係に落ち着いたようだ


ずいぶん後ろ向きだが、それでも進歩したと・・・・言えなくもない


だがもちろん、イイコト(?)だけではないわけで




「・・・・・・・暇人が多いわね」


次の授業がある演習場へ向かう途中の六花とシェイドの数歩隣に落ちているのは、なんの変哲もない金属製のバケツ(付属品:カエル十数匹)


ちなみに中身だけ変えた悪戯、本日三回目(午前中)


魔女がカエルくらいで驚くかってーの!!!

と心の中で叫んでさっさとその場から離れる。カエルは放っておけば野に帰るだろうし無視だ無視




「・・・・どうして」

「空からカエルが、とかいわないでよね。気が抜けるから」

「お前絶対俺のこと馬鹿にしてるだろ!?こんなあからさまな嫌がらせ普通気づく!」

「あんた普通じゃないもの、私の辞書の中で」


ちなみに六花の辞書の中でシェイドは”世間知らずで空気の読めない、口が悪いくせにヘタレなムカつく天才男”

と記載されている。9割方はアタリだ


ついでにシェイドの中で六花の位置づけは”超がつくほど短気で本バカ、腹のうちは黒いし冷静さはない怪力魔女”

これもほぼ9割近くアタリ


お互いに人間鑑定眼だけは一人前といっていい・・・・欠点発見能力だけ取っていえば、だが





「嫌がらせってわかってるなら聞かないでよ」


まー多分8割くらいはアンタのせいだろうけどね。今朝寮の郵便受け見たら無記名の悪口レターで溢れかえってたから

残り2割は・・・・・・・まぁ日頃陰で何かいってる連中が便乗、ってところか


慣れてるからどーでもいいけどね、はっ!



「そういうこと言ってるわけじゃない」

「じゃーなんなのよ、そんなことより急がなきゃ授業に遅れるわよ」

「そんなことって」

「そんなことよ、心配しなくてもこれはアンタにじゃなくて十中八九、私宛だから

あっちだってアンタに当てるようなことはしないでしょ。だから問題なし!」


言い捨ててシェイドを半ば引きずるように六花が早足で歩きだす。授業開始まであと5分を切っていた

そればかりが頭に巡って、ただ前だけ向いていた。だから気付かなかった


柳眉をあげた、シェイドに







「授業といっても、出られないものに出てどうするんだよ」

「私皆勤かかってるの、休むわけにはいかないでしょ」


見学でも一応出席は出席だしね

ちなみに私達が今いる演習場は学園の西側にある草地に作られた演習場その1


辺りは魔術で強化した壁が念入りに、何重にも張り巡らされてる

・・・・んだけど2、3枚目の壁くらいまではたいていどこかが崩れてる


魔女科や獣人科の演習は・・・まぁ失敗すると色々おおごとになるから


手錠でがっちり繋がれた私達は、当然実習の授業は見学

見学席なんてものはないから、一枚目の・・・もう腰より下の高さしかない元壁に腰かけて


ちなみに今やってるのは魔女対剣士で『はちまき取り』

5人グループで大将を一人決めて、その人が付けてる鉢巻を奪われたら負け


ちなみにこれは魔女なら剣士を、剣士なら魔女を相手にした場合にどうやって戦うか。の演習

接近・スピード勝負なら断然剣士が有利だけど、遠距離戦なら結界もはれる魔女が有利


お互いの苦手分野を得意とする相手だから、実践練習にはもってこいってわけだ



「・・・・教科書通りなら結界を張って物理的攻撃を遮断

魔術で遠方から相手を狙って遠距離戦に持ち込む、ってとこね」


完全なる独り言、のつもりだったけど意外なところから返事があった


「それならこちらは短期決戦、誰か一人捕まえて脅せばいい」


声の元――横でつまらなそうに演習を見ているティエンランは、顔と同じくつまらなそうな声で返してきた

そんなの改めてやらなくたって分かってる、ってこと?


だからちょっと反論してみたくなった


「脅したって殺せないのはわかってるから、意味ないんじゃない?」

「演習ならな、現実なら違うだろ」

「相手が味方を見捨てない限りはね、じゃぁ捕まえる前に結界を張られたらどうする?」


考え込むかと思ったら、答えはすぐに返ってきた


「魔女の物理遮断結界の欠点は、後方の守りが薄いことだ

持久戦に持ち込んで疲弊し、力が薄くなったところを狙えば普通の剣でも破れるだろ

術式発動までのタイムラグを狙えば十分背後には回れる」


少し目を見開いて、けれど間を置かずに六花も返す


「でも大将以外の四人が並んで続けざまに攻撃してきたら?

略式魔術っていってね、威力は弱くなるけど詠唱なしでも発動できる力もあるのよ。魔弾っていってね、炎や氷なんかの塊を発射するの


それを銃みたいに連射されたら流石に避けられないんじゃない?」


そういうとシェイドの注意は完全に六花に向き直り、


「でもそれならお前達はいつまでたってもこちらに近づけないだろ。それじゃぁなかなか勝負はつかない

威力が弱いなら対魔術用の盾で防ぎつつ逃げれば持ちこたえられる。あとはじっくり、持久戦に持ち込めばこちらが有利だ


それに平原で勝負するとは限らない、森なんかの視界が悪い場合なら魔術は使いにくいだろ

対象が絞れないのに、下手に障害物が多いところで魔術を使えば危険だ」


「確かに結界と魔術の連用、しかも長期になると負担が大きいから魔女が不利ね

障害物のあるフィールドでもあんたの言うとおり


でもこっちだって馬鹿正直にあんた達と同じ土台で勝負はしないわよ?」


シェイドが困惑し、眉をひそめたので六花は軽い優越感を得て、ピンと


人差指で天を指した



「魔女にあって剣士には無いものその一、三次元の移動つまり空よ

平原だろうが森だろうが、手が届かない位置にいればそっちは攻撃できないでしょ?


その間に上から攻撃しちゃえば終わり」

「森は飛ぶには不便だろ」

「だったら森の上から攻撃すればいいじゃない」


今度はシェイドが小馬鹿にしたように笑う


「だったらこっちが有利になるだろ。上空からの方が遮蔽物は多い


木陰に潜んでいれば、いずれ降りてこざるは負えない

どうしても敵に近づかなければならないなら、なおさらな」

「残念でしたー」


だから六花はその2倍、憎たらしいほどいい笑顔を浮かべて


「魔女には使い魔がいるのよ

どこにいてもおかしくはないような小動物や虫、族によっては草花も使える魔女もいる

偵察させれば見えなくてもそっちの居場所は十分にわかるの


座標がわかれば後は魔術でドカン」

「・・・・・・・・」

「どーしたー、もう降参?」


ニヤリと笑う六花に、シェイドは眉間の皺を遙かに深くして

それから笑い返した


「いや、はなから自分の場所がバレるとわかってるなら逆にそれを利用すればいい

場所がわかれば、といっても見知った場所とは違って初めての場所なら座標は分かっても魔術はけしかけられないだろう

細かな状況がわからなければ、下手をすれば手足となる使い魔を失うだけだ

だったら囮をたてて、魔術を発動させたところで次の魔術を発動させるまでの間に銃で狙い撃てばいい


囮を囲むように四方に布陣していれば、どこかからは見えるだろ。最新式のライフルなら地上からでも十分狙えるはずだ」

「・・・・だったら下方に向けて物理結界を敷くわね」

「対結界用の特殊な弾を使えば?」

「その時は」



「・・・・・・・見学者のお二人、そういうお話は講義のときにしてもらいたいものですね」


ん?


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・


なんだかいつの間にやら、みんなの視線がこちらに


担当のライナ先生――――魔女科のすらっとした中年の先生で、主に実技担当。軍隊バリのキビキビした先生で、怒ると背景に落雷が映るほど怖い――――が腰に手を当てて

・・・怒ってるのと笑ってるのと嬉しいのとが入り混じった、複雑な顔で見下ろしていらっしゃいました



「二人の考察は良くできています、テストなら高得点は間違いなしね」

「あはははは・・・ありがとうございます」

「どうも」


でも今は実技訓練中ですから私語は慎み、見学に集中するように!


最後に軽い――いつもに比べれば格段に――雷を落として、演習が再開された



「・・・・・・アンタ達、実は仲いいんじゃないの?噂どおり」


パティの呟きに、否定の言葉が重なった







色々爆発編。ちょっとだけ進展した、かな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ