怖い話ー
『首。』
なんて?
ごめんなさい。僕いま寝てた?
——
夜中のタクシー。その車内。後部座席のシート。
うとうとしていたら、ドライバーさんがフレンドリーしてきた。
行き先はアプリで指定してあるから、あとは寝るだけぐう。今、寝てました。
『おもしろいお話を聞いたですよ。』
は。寝てた。んえ?
ドライバーさん何か言いました?
『昼に乗せたお客様がねえ、面白いお話をしていたんです。真夜中に女の子がコンビニにお買い物に行くために歩いていると……』
は。ね、寝てた。
お話始まっちゃった。
『オフホワイトのシルク素材と、上品なレースをあしらったそんなデザイン。の薄着の髪の長い女が、ぼんやりと空き地に立っている……』
うわあ。怖い。
『こんな夜中に不思議だな。なんかやだ。
女の子は最初そんなふうにしか思わなかった。
空き地の前を通り過ぎ、コンビニで
ショッピをングして、その帰り道、再びあの空き地の前を、とおりかかると……』
うわあ。怖い。ねむい。
『さっきの女がまだいる。暗闇の中で』
怖い。
『ぼんやりと立っている。』
ねむい。
『怖い。嫌だな。って思った女の子は少し早足で空き地の前を通り過ぎる。その途中、なんだか寒気を感じて後ろを振り返る。何もいない。
怖い。嫌だ。早足。』
……。
『自宅に着いて、ショッピをングした、ブロッコリーのヘルシーなヤツを食べる。お風呂して、ゲームして、寝る。』
………。
『翌朝、女の子バイトに行きました。バイト先の先輩が女の子に雑談を。』
あ。寝てた。お話どこまで進んだの?
『空き地から首なしの女の死体が見つかったんだって。今日の朝。空き地で。草むら。』
え? もうクライマックスじゃん。
『女の子はゾッとした。恐怖した。死体が見つかったのは、昨日のあの空き地だったから。』
怖い。
『じゃあ、昨日見た
空き地にぼんやりと立つ女は………』
ねてた。
『はい。お客様つきましたよ。起きて。』
ねてた。おあよう。
僕はタクシーを降りて、エントランスを通過、エレベーターに乗って、フロアの廊下を歩いて、
後ろを振り返る。何もいない。
無事にお家に帰れた。
お風呂に入って、ブロッコリーのヘルシーなヤツを食べて、少しゲームをして眠った。
明日はバイトだ。
首。
今どこにあると思う?




