君へ、僕より
***
1997年7月25日。
片田舎の僕らの遊びは、近所の子を鬼ごっこに誘うか、村の探検をするくらいしかなかった。
僕が好んでいるのは後者だ。
なぜなら、"あれ"がいつも僕を呼ぶから。
「由美ちゃん!これだよ。」
「これが廃墟トンネル?」
「そう、もともとは町とこの村をつなげるためにつくられたんだけど、ちばん?が緩くって途中で壁になっちゃったんだって。」
「すごい詳しいんだね。」
「父さんに聞いたんだ。工事の人だから。」
僕は怯えてる由美ちゃんの手を思い切り引っ張って暗闇の中に飛び込んだ。
二人分の足音が大きく響く。
真夏とは思えないひんやりとした空気が肌を撫でた。
「えっ、えっ、怖いよ。」
「なんにもないから大丈夫!」
「じゃあ行かなくても…。」
僕は手を離すつもりはなかった。
なぜなら大好きな由美ちゃんに、"あの声"を聴いてほしかったから。
「忘れないで。」
聴こえた。
「ほら!ねぇ聴こえ…。」
由美ちゃんは大声で叫びながらトンネルの入り口へ戻っていった。
僕はしょんぼりしながらも、自分の欲を満たせたことに満足した。
みんなこのトンネルを怖いなんて言うけど、僕はちっとも怖くない。
この場所は、僕を受け入れてくれる場所だから。
***
2017年7月20日。
上京して一人暮らしを始めてから一ヶ月経つ。
仕事にはついていけないし、液晶画面とにらめっこする毎日に飽き飽きしていた。
洗濯物と洗い物が溜まった部屋で寝転んでいたら、突然スマホが鳴った。
旧友である友樹からの電話だ。
俺は重たい体を起こして電話に応答する。
「よっ。元気してっか?勇輝。」
明るい声が耳を刺した。
「まあな。お前から電話してくるなんて珍しいじゃないか。」
「いやー実は今、村に帰ってきてんだよ。懐かしいとこ来たら懐かしい友とお話ししたいだろ?」
「なんだよそれ。」
思わず吹き出してしまった。
友樹は昔から落ち込みがちな俺に笑顔を与えてくれる存在だった。
そう、昔から。
「お前はなんも変わんないな。」
「俺だけじゃないぜ。勇輝もこっち戻ってきたらどうだ?」
その言葉にはっとした。
忙しない毎日から抜け出せる方法。
きっとすぐ帰ってしまうだろうけど、少しだけでも故郷の緑が癒しになりそうだ。
しかし…いいのか?
辛いからって、逃げようとしているだけじゃないのか。
一瞬だけだが、俺の中で何かがそう囁いた。
「俺そっち行くわ。」
「え、そんな急に…大丈夫なのか?」
「今週末から三連休だ。その前に仕事を一段落させれば大丈夫。」
電話越しに「ふっ。」と鼻で笑われた。
「じゃあ待ってるわ。俺もちょうど三連休が終わるまでだからな。」
別れの挨拶を告げたあと、電話を切った。
体に力がみなぎってくる。
数日耐えるだけ、自分に言い聞かせた俺はやらなければいけないことを確認し始めた。
2017年7月25日。
なんとか仕事を終わらせた俺は、行きの電車の中で懐かしい景色に浸っていた。
澄み渡った空が俺を褒めてくれているみたいだ。
電車を降りて、息を吸う。
子供のころ嗅ぎ慣れた、あの夏の匂いだった。
「よっ。」
友樹が駅で待っている。
しばらく顔を合わせていなかったが、俺の身長が追いつかないのは変わらないみたいだ。
「おかえり。」
「ただいま。」
俺らはお互いの近況を報告し合いながら村へ歩き始めた。
村の手前にある小さな橋の上まで来た時、友樹が口にした。
「よく、由美と三人で川で遊んでたよな。そんで、危ないからって大人に怒られてさ…。」
由美。
その名前を聞いた途端、俺たちの空気が重くなった。
蝉の声が五月蝿くなる。
「俺、ずっと聞きたかったんだ勇輝。お前…由美が亡くなってから、変わっちまったことを…さ。」
20年以上友達をやってきて、初めて見せた表情だった。
そうだ、話す運命だったんだな。
あの日のこと。
***
トンネルから逃げていく由美ちゃんを必死に追いかけて、ようやく姿が見えた時。
由美ちゃんは道の真ん中でぜえぜえと息を整えてた。
「由美ちゃ…。」
こんな辺鄙な場所に似合わない、背の高いトラックが勢いを止めず近づいてきている。
もうすぐそこまで。
僕から由美ちゃんまでの距離はそんなに遠くない。
まだ間に合う。
まだ間に合うのに。
「足が…。」
震えて動かない。
言うことをきかない。
誰か救けて。由美ちゃんを救けて。
そんな声も出なかった。
唸るようなトラックの足音が僕の体に巻き付いて離れない。
間もなく、「ゴンッ」という鈍い音と共に由美ちゃんは轢かれた。
ピンク色のランドセルは赤に染まる。
トラックは止まらずに、どこかへ行ってしまった。
体のいたるところから血が吹き出した"それ"は、僕の大好きな人だった。
ぐらぐらと揺れた視界の中でやっと体が動く。
「ゆ…み。」
自分が気絶していたことに気付いたのは、病院の中で大人たちに起こされた時だった。
お母さんが、泣いた後のひどい顔で抱きしめてくる。
僕が抱き返すことはできなかった。
あれから数日経って、由美の葬式が行われた。
細く立ち昇る線香の煙が邪魔されることなく天井へと辿り着く。
お坊さんが御経を唱えている中、俺の隣にはお母さんと、片側に友樹が座っている。
友樹は目から溢れ出る涙の中で強く堪えていた。
俺は、泣かなかった。
これが成長なんだと思い知った。
もうあの場にいた弱い自分じゃない。
そう思ったら、涙の居場所も忘れてしまった。
一連の流れが終わり、厳かな会場の外で友樹と話をし始めた。
「…お前が無事で良かったよ。きっと由美が守ってくれたんだな。」
声の奥を震わせて友樹は言った。
「あぁ…。そう、かもな。」
大きな喪失感と胸の奥でくすぶる感情が混濁している。
「もしさ…あの時さ、あの場所に俺じゃなくて大人の人がいたら、由美は助かってたんだろうな。」
「え、なんだよ勇輝、なんか、お前らしくないな。」
「目の前であんなものみたら、おかしくだってなるだろ。」
「そ、そうか…。」
友樹は変なものを見るような目を向けた。
当たり前だ。
自分でも前とは違うこと、分かっている。
もう戻れないところまで来ている。
***
蝉の声が五月蝿く頭の中に響いた。
「俺の無力さが由美を殺したんだ。あの時、俺じゃなくて、もっと強くて、判断力がある人がいたら由美は、まだ生きていた。」
「それがお前を変えちまったのか。」
「え?」
鬼のような形相で言い放たれた。
「ずっと大人と自分を比べて、"お前"は居なくなっちまったのか!」
友樹の大きな声で、木にとまっていた鳥たちが一斉に飛び立つ。
その言葉は、俺の核心をついていた。
あの日から、あの時からずっとそうだった。
俺にとって『大人』は、なんでもできる人だった。
高いとこに手が届くし、頭もいいし、力も強い。
俺はずっと大人になりたかった。
そのために成長したかった。
でもそれは、思った以上にぎこちなくて、やるせなくて、"僕"じゃなかった。
でもやめられなかった。
生きることに、「変わること」はつきものであること、本当に辛かった。
きっとこれからも変わっていく。
もしかしたら友樹も、これからはこんな感情を見せてくれなくなってしまうかもしれない。
その前に"僕"は、伝えておきたかった。
「友樹、"僕"、あの頃に戻りたい…!」
叶わない願いと分かっていても、ぐちゃぐちゃの声は止まらなかった。
涙を流したのはいつぶりだっけ。
もしかしたら、あの葬式の時以来かもしれないな。
温かな夏の風が頬に当たった。
溢れんばかりの涙がこぼれ落ちていく。
失っていたものがあまりにも大きすぎたみたいだ。
「じゃあ、行こうぜ、お前が好きなトンネル。」
友樹は僕の背中を優しく叩いてそう言ってくれた。
僕は泣きながら強く頷いた。
トンネルまでの道のりは途中まで、かつて僕と由美ちゃんと友樹が一緒に登校していた道だ。
足の裏から伝わるのは、毎日踏みしめていた砂の感覚。
ランドセルはいつも重かった。
「なあ、俺らのいつもの立ち位置覚えてる?」
「ああ、横並びの順番?僕が右で、真ん中に由美ちゃんで、左が友樹でしょ?」
「さっすが〜。」
僕は少し照れつつも、そのことを友樹も覚えているということに嬉しくなった。
「あ!この店まだあったんだ。」
それは学校近くにある駄菓子屋さん。
いつも学校終わりの子どもたちが、お小遣いを持って立ち寄っていた。
少し中を覗いてみる。
「あれ、佐々木さんじゃね!?」
店の受付をしていたのは、かつて由美ちゃんと仲が良かった佐々木さんだった。
「あれぇ、勇輝くんと友樹くん?偶然だねぇ。」
佐々木さんも昔と変わらない、独特なゆったりした口調だ。
「久しぶりだねー。」
「ほんとだな。ここで受付やってんのか?」
「そうだよ〜。漁業もやってるんだけどね〜。」
しばらくお互いの話をしていると、ふと駄菓子の棚に目がいった。
「勇輝、どうかしたのか?」
「いや…。」
「あ、由美ちゃんが好きだったお菓子でしょ〜、それ。」
見事な図星だった。
「勇輝くんが由美ちゃんとこのお店来てた時、わざと由美ちゃんと買うもの一緒にしてたの、可愛いかったね〜。」
「それ俺も知ってる〜。」
二人が僕のことをニヤニヤしながら見つめてきた。
自分の頬が赤みを帯びていくのが分かる。
「な、なんかお腹減ってきたからさ、それ頂戴。」
僕は慌てて由美ちゃんが好きだった駄菓子を指さした。
「あ、じゃあ俺も!」
「はいよ~。合わせて100円ね。」
駄菓子を買ってからは佐々木さんに別れを告げ、食べながらトンネルへ向かうことにした。
当時の僕は、この味があまり好きじゃなかった。
でも、どうしても由美ちゃんと同じ感覚を味わいたかったから頑張って食べていた。
子供らしいなあ。
今となっては、全然嫌な味じゃないけど。
「どうだ?なんか、あの頃っぽくなってきたな。」
「あぁ。本当に、幸せだよ。」
蝉の鳴き声が止んだタイミングを見計らって、ちゃんと言った。
「ありがとう、友樹。友達になってくれて。」
「へへ、いいってことよ!!!」
この夏が好きだ。
この瞬間も好きだ。
でも、もっと早く、言えたら良かったな。
そんなことを考えていたら、もうトンネルの前だった。
いつまでも変わらないこのトンネルは、昔に戻ってきたみたいだ。
「やっぱこえーな。廃墟トンネル。昔、お前に連れてこられた時もそうだけどさあ…中まで入るの相当"勇気"いるよ。…"勇輝"だけにってな。」
「つまんないよー。」
真夏の空気が凍てついた。
友樹の笑い声がトンネルに響く。
途端に、暗闇の底から僕ら以外の声がした。
あの声が。
「忘れてない?」
蝉の声がだんだん、遠ざかっていく。
「勇輝…。」
僕と友樹の足は自然とトンネルの方へ吸い込まれていく。
恐怖よりも、"あの頃"を感じていく。
***
気が付くと、そこにいた。
雲一つない晴天の下。
友樹と僕の目線は同じ。
とっても重い背中には、綺麗なままのランドセル。
「ゆう…。」
友樹が僕を呼ぼうとして、元気な声がそれを遮る。
「おかえり、二人とも。」
その声は、あまりにも懐かしすぎた。
後ろを振り返ると、元気そうな由美ちゃんが、にこにこしながら立っている。
彼女の周りの空気はなんだか、冷たい。
「おい…なんで由美が居んだよ…。」
友樹は僕と一緒にここへ来たようだ。
ここは、あの頃?
由美ちゃんが亡くなる前…なのか?
「私は由美だけど、由美じゃないよ。ほら、あそこ見てみて。」
小学校の校門で小さな佐々木さんと話している由美ちゃんが居た。
混乱した頭を必死に整理する。
「今日は、"あの日"だよ。二人なら分かるでしょ。」
僕らの後ろに居た由美ちゃんはそう言った。
「また後でね。勇輝くん、友樹くん。」
「え、待って…!」
由美ちゃんは霧のように消え去っていった。
消えていく背中を見つめていたら、佐々木さんと話していた由美ちゃんがこちらへやってきた。
「二人とも!今日はあのトンネルに連れてってくれるんでしょ?」
さっきの由美ちゃんの言葉を思い出した。
今日は、"あの日"。
僕がするべきこと、いや、ここで得るべきものがなんなのか、きっと少しづつ分かっていくのだろう。
「そ、そうだよ!友樹も一緒に行く…よね?」
「お、おう…。」
「あれ?友樹くんは習いごとがあったんじゃなかったの?」
そうだった。
あの日…いや、この日は友樹が習いごとで、僕と由美ちゃんだけトンネルへ向かったんだ。
「いや、俺も行くよ。」
友樹は何かを覚悟したような目で由美ちゃんに言った。
「いいの?じゃあ早く行こ。あと、トンネルの中には入らないからね。」
僕らは歩き始めた。
これからどんなことが起こるのか、何も知らぬ由美ちゃんの表情は、写真では映せない輝きを放っていた。
涙はまだ、姿を見せない。
見慣れていた帰り道。
うるさい蝉の声。
ずっと戻りたかった写真の中の世界。
子どもたちの足音。
澄み渡った青天。
叶った大人の夢。
頭の片隅に閉まっていた記憶の片鱗が今、断面を繋ぎ合わせて形と成っていく。
そして辿り着いたのは、ずっと僕を呼んでいたトンネル。
1997年7月25日。
片田舎の僕らの遊びは、近所の子を鬼ごっこに誘うか、村の探検をするくらいしかなかった。
僕が好んでいるのは後者だ。
なぜなら、"あれ"が今日も僕を呼ぶから。
「由美ちゃん、これだよ。」
「これが廃墟トンネル?」
「ホラーゲームにでも出てきそうだよな、由美。」
「ほんとだよ…。」
僕は怯えている由美ちゃんの手を優しく引いてゆっくりとトンネルの中へ入っていく。
三人分の足音が大きく響く。
真夏とは思えないひんやりとした空気が肌を撫でた。
「えっ、えっ、怖いよ。」
「なんにもないんだ。だから、大丈夫。」
「じゃあ行かなくても…。」
僕は手を離すつもりはなかった。
なぜなら、大好きな由美ちゃんに、生きていて欲しかったから。
「ねぇ、由美ちゃん。ここまできてくれてありがとう。それで…友達になってくれて、ありがとう。」
「え?何、急に…。」
「思い出して。」
聴こえた。
「…。」
由美ちゃんは固く繋いだ僕の手を振り払い、大声で叫びながらトンネルの入り口へ戻っていった。
友樹は切羽詰まった表情で由美ちゃんの名前を呼ぼうとした。
「友樹くん。」
もう一人の由美ちゃんの声だ。
「勇輝くんは分かっているみたいだね。私を止めないほうが良いってこと。」
「で、でも…!」
僕はもう一人の由美ちゃんに聞いた。
「この声、由美ちゃんだったんだね。どうりで、この時の僕がこのトンネルを好きになるわけだ。」
「な、なぁ、本当に止めねえのかよ…!」
友樹はまだ焦っている。
「友樹くん。過去は変えられるものじゃないんだ。ごめんね。」
由美ちゃんは悲しそうな表情を見せた。
遠くの木の後ろから、恐ろしいトラックの音が聴こえた。
しばらくの間、静寂が続いた。
「覚悟はしてたけどよぉ…。辛すぎんだろ……?」
友樹はその場にうずくまって子供の頃と同じような大粒の涙を流した。
もう一人の由美ちゃんは友樹の背中をさすった。
僕は二度目の大きな喪失感と空っぽになった頭でまだ泣くことができなかった。
「行こう、友樹。」
僕は泣きじゃくる友樹の手を引っ張って、由美ちゃんに集る大人たちの方へ向かう。
僕の意識がやっとはっきりしてきた時には、葬式が始まっていた。
静まり帰った葬式場にすすり泣く声がぽつぽつと響く。
線香の煙が乱れた。
もう一人の由美ちゃんが来た。
「勇輝くん、これで最後だよ。」
僕に話しかけている由美ちゃんは、周りには見えていないようだ。
「ほんとに、最後。」
自分の心臓の音が聞こえる。
周りの泣き声も、服が擦れる音も、お経を読む声も、全て消えた。
ただ、どくどくと自分に問いかける。
僕に在った気持ちは。
後悔していた想いは。
ずっと心の奥に閉まっていた"僕"が叫んでいる。
そうだ。
僕はこの時、思いっきり泣きたかったんだ。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!」
瞳の奥から涙が溢れ出てくる。
拭っても拭っても止まらない涙に安堵した。
これが僕だった。
滲んだ視界の中で、由美ちゃんが微笑んでいる。
自分の泣き声がお経を遮っていることに気付いた時には、お母さんが僕を呼んでいた。
「よしよし、大丈夫よ勇輝。」
僕はちゃんと、母を抱き返している。
式を終え、友樹と話をし始めた。
「いや、数十年ぶりに見たぜお前の泣き顔!」
友樹は嬉しそうに僕の背中を叩く。
「ほんと、取り返せて良かったな。」
「うん。ありがとう、ここまで付き添ってくれて。」
「何言ってんだ。まだ現実の世界に戻れてねーじゃんか。」
それはそうだ。
戻る方法を、僕らは知らない。
「トンネルに行ったら…何かわかるかなぁ。」
「それは俺も思ってた。早速行こうぜ!」
友樹は無邪気に僕の腕を引っ張った。
向かう間、僕はこの空を目に焼き付けておいた。
「おい!もう一人の由美…いるか!?」
何回見たかわからないトンネルに戻ってきたが、見覚えのない光景が広がっていた。
「あれ…トンネルが…。」
「トンネルが塞がれてない!」
トンネルの奥に、白い光が差している。
途中で壁になっていたはずなのに。
もう一人の由美ちゃんが出てくる気配はない。
「行けって言ってんのか…?」
「かも…しれないね。」
僕らはトンネルの奥へ進み始めた。
「…2回目っていっても、辛かったけどよ。俺も子供心取り戻せた気がするわ。」
「友樹はずっと子供っぽいよ。」
「それ…どういう意味だ?」
「えへへ。」
昔から変わりのない、他愛のない会話をしながら元の世界へと進んでいく。
出口は怖くなかった。
僕が僕でいられる気がしたから。
「ただいま。」
僕は振り返ることなくトンネルを抜けた。
***
「本に書かれた結末は、誰も変えることが出来ない。けれど、そこから得られるものは、読んだその時々によって変わるんだ。
きっと"それ"は、未来に繋がる君の欠片になるから。」
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