表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本四季の夢〜冬〜 白銀によろしくと添えて  作者: ハクタカ ヒバリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/14

第二章 第一段階完了

着いた家は、良く言えば趣がある、悪く言えば古臭い、なんとも昭和チックなものだった。

「爺ちゃん〜。帰ったよ〜。」

そう言って恋麗は戸をけっこう強くノックした。

そう、壊れそうな勢いで…。

しばらくして、中から足音が聞こえてきた。

「バイクの音でわかるぞ、恋麗。…おや、お客さんかいな。」

「ああ、爺ちゃんの話を聞きたいんだと。永之助、紹介する。私の祖父だ。」

「よ、よろしくお願いします。」

出てきたのは、物腰の柔らかそうな老人だった。

「ほう、何か訳ありだな?まあ、寒いだろうから、中に入りなさい。」

「失礼します…。」

通されたのは、いかにも客間といった部屋。あんまりこういう部屋に入ったことがないので、少々緊張していたりする。

「で、何だい、聞きたいこととは。」

「永之助が、記憶喪失になったんだと。このまま目覚めさせるわけにはいかないから、爺ちゃんに記憶を取り戻す方法を聞きたいんだ。」

「なるほどな。永之助君、君は自分のことをどこまで覚えている。」

「はい、名前と年齢だけです。」

恋麗の爺さんは、それを聞くとしばらく考え込んだ。

…取り戻すのは厳しいとか言われたら正気を保てない自信がある…。

「取り戻すことは可能だ。だが、それには長い時間をかける必要がある。見たところ、君は中学生あたりだろう?最低でも十三年分の記憶を取り戻さなくてはならないのだからな。」

「そんなことはわかってる。その上で爺ちゃんに聞いてるんだ。」

「人の話は最後まで聞きなさい、恋麗。けっきょく、生きた者である君には一週間しか時間がないのだ。それで使うのがコレだ。」

爺さんは、奥にあった棚から砂時計を出してきた。

ガラスを囲う、木でできたフチには、漢数字がびっしり彫られている。かなり年季の入ってそうな砂時計だ。

「なに、この砂時計。古臭いなあ。」

「コレは、生きた者の活動時間を使用者本人が意のままに増やすことのできる"未練の砂時計"だ。」

「未練の砂時計!?そんなもの聞いたことがない!」

「だろうな。心の中の球と違って、名が知られているわけではないし、滞在時間を増やすなんて、生きた者にとっては利点がないからな。ほとんど自然消滅した代物だ。現にワシは何十年とここで暮らしているが、コレを拾ったのはつい最近だからな。当然コレが何かも知らなかったさ。コレを貸す。時間が足りなくなった時に使いなさい。」

けっこう、この爺さんまずいことをしてるな…。落ちてるものを拾うとは…。まあ、それで助かったのではあるが…。

「で、問題の記憶の取り戻し方だが、とにかく"気になった場所に行くこと"が大切だ。記憶喪失は、記憶を"なくした"のではなく、"思い出せない"状態なだけなんだ。だから頭でわからなくとも、案外身体が覚えている、なんてことがよくある。

それに、この空間は来訪者の影響を受けやすいから、君の思い出の場所がどこかで再現されているかもしれない。どんなに小さなことでも構わん。行ってみろ。いや、むしろ細かいところまで気を配る必要がある。何がきっかけで思い出すかわからんからな。」

…そういえば、ここに来るまでに妙に気になった場所があったな…。あのときは何も気に留めずに素通りしてしまったが、今思えばあそこに何か変なものがあったわけではない。

「…どうした永之助。変だぞ。」

「ここに来る道中、妙に気になる場所があった。」

「ほう、すぐに行きなさい。そこがさっきワシが言った場所かもしれん。」

「はい、わかりました!」

オレは恋麗すら放って一目散に先ほどの場所へ走り出した。特に頭で何か考えたわけではないが、勝手に身体が動いていた。


先ほどの場所まで戻ってきた。やっぱり。ここだけやたら気になる。オレはその空間をジッと見つめてみた。少しすると、そこに昔行ったことのあるような、そんな気がし始めた。要するに、既視感だ。…何か見える。

物理的な話ではない。脳内で薄っすらと映画が流れるようにして…、何かが映し出されている。それは次第に鮮明になった。

男女と、小さな少年が見える。山の中で、その少年はセミに狙いを定めている。後ろでは、例の男女が見守っている。……!!父さん、母さん…。そうか、思い出した…。今のあの二人はオレの両親だ!

思い出した途端、少しばかり涙がこぼれ落ちた。

「おい永之助…。速いってお前。」

「…少しだけ、思い出した。オレの両親のことだ。」

「え、本当か!?」

「でも、親のことだけだ。他はまだ思い出せない。」

「…他の場所にも行かないといけないみたいだな。」

「ああ…。」

追いついた恋麗と話していると、爺さんも追いついてきた。

「わかっただろう。そのようにして記憶を取り戻すのだ。まだまだ長い道のりになるが、諦めるのではないぞ。」

「はい。」

よかった。ほんの少しだが、希望が見えてきた。

このまま全ての記憶を取り戻してやる…!

「恋麗、永之助の旅についていきなさい。この場所を知らん者一人では、この世界は"物騒"すぎる。」

「元からそのつもりでいるぜ、爺ちゃん。ほら、永之助、行くぞ。ここからはあんまりバイクを使うのはよしたほうがいい。細かいところも見ないとだろ?」

「ああ。じゃあ、行くか。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ