第十二章 手掛かりは何処へ…
一通り探索を終えたオレたちは、すぐさま弥彦の家へ戻った。しかし、そのなかでは弥彦がしんみりとした表情で座っていた。彼の前には、一枚の紙が置いてある。
「…弥彦…?どうした?」
弥彦は黙ってその紙を渡してきた。その紙には、転生通達と書かれていた。
「…なんだ…これ…。」
「転生通達だ。死者は一定期間この世界で過ごした後、転生して現実世界で赤子として生まれる。弥彦、ここを出ていくのは何日後だ。」
「三日後。ごめん、永之助くん。ボクはもう君を助けることはできないらしい。」
「…なあ、それって断れないのか…?」
「それができるならやってるさ。」
そうたよな…。ここは死者の世界だ。そうなっても仕方のない。
「だからさ、怪しい場所をまとめてきた。ここに行けば記憶を取り戻せるかもしれないし、黒いバケモノの手がかりもわかるかもよ。」
「おおー!やるう弥彦〜」
「じゃあそこに行くか。どこがいいかなぁ…。」
「そうだな。ありがとう、弥彦。」
「うん。気をつけて。」
オレたちは弥彦の家を出た。
時刻は三時。まだ時間はある。
「ここが例の公園か…。」
「そうみたいだな。名前も間違いない。」
オレたちは川沿いの公園に来た。周りは住宅街だが、向かいには競輪場があり、少しだけ活気があった。
風景としては特徴的なのだが、ここになにがあるというのだろう…。
辺りもだいぶ暗くなってきた。…って言っても、まだそこまで時間はたっていないんたが…。
「珍しいな。今どきこのグルグ回る丸いジャングルジムがあるの。」
「ああ、それな。正式名称はわからんけど。」
小さい頃よく行っていた公園にもコレがあった。
ふっ飛ばされて救急車送りにされたっけ。それからすぐに撤去された覚えがある。
そうそう、今回みたいに頭をぶつけた。
…あれ、オレ、最近いつ頭をぶつけた…?
弥彦の仮定が正しいなら、オレは脳しんとうを起こしたってことになる。脳に強い衝撃を受けたのなら、どこかにぶつけたことになるが、一体どこで…。
「どうした永之助。何か気になることでもあったか?」
「…いや、何も。でも、なんかさぁ、こうして少し高いところから夕日を見つめてると、寂しくなるよな…。」
「…そうだな。」
俺の中学校生活のなかでも、何度かこういう景色をみた。
それは、いつのことだっただろうか…。
「…ダメだ。何も思い出せん。まあ帰ろうぜ。」
「そうするか。私も退屈になってきた。」
「この辺もけっこういろんな店があるよな。」
「確かに。スーパーにコンビニに学習塾に薬局に魚料理店…。スーパー…。からあげ…。」
「いつの話をしてんだよ。」
歩いていたらすっかり暗くなってしまった。早く帰らないと弥彦も心配するだろうな。
「夕飯でも買ってこうぜ。ちょうどスーパーの前だし。今回は大丈夫そうだぞ。」
「あー、恋麗、好きなもの買ってきてくれ。オレは入口で待ってる。」
「えーなんで…。まぁいいぞ。何買ってくるかわからんぞ?」
「はいはい、はよ行けよ。」
「……。さて、弥彦、ここまで来てどうした。」
「いや、…仲良くしてくれた君には、しっかり説明しようと思ってたんだ…。」
「…ほんとうは出ていくの三日後じゃないだろ。」
「さすが、君の洞察力には脱帽だよ…。ほんとうはこのあとなんだ…。あんまり心配かけたくないから、嘘をついた。でも、君は初めて仲良くしてくれたからさ…。」
「堅苦しいこと言うなよ。笑って出ていくほうが楽だぜ?」
「そうだね。じゃあ、僕の家に帰ってももう意味はないし、敵の居所を教えておくよ。…ここから少し北に行ってみて。山の中腹に廃校になった中学校の校舎がある。飛行中学校ってところ。そこの屋上を根城にしているらしい。」
「わかった。ありがとよ、弥彦。」
それを聞いて安心したのか、弥彦は笑顔で手を振り、何も言わずに近くのバス停に向かった。しばらくして、ユタカノミヤコ駅行きのバスが到着した。弥彦はそれに乗り込む。乗客は弥彦一人だったので、バスはすぐに発車した。
…自然と涙が流れる。変だな…。数日しか一緒にいなかったのに…。…恋麗に見つかると面倒くさくなるな…。サッと拭いておこう…。
「よー永之助ー!戻ったぞ。いやーからあげ買えたからラッキーだなぁ!!」
「…恋麗、オレ、急用ができた。ちょっと行ってくる。」
「まぁ待て。これ、弾薬だ。買っといた。使え。
あと、どうせ旧・飛行中学校に行くんだろ?」
「なんで知ってんだよ。」
「えー?予想だ。別にいいだろ?あと、ひとり行動はなしだ。私たち、相棒だろ?」
「…おう。もちろんだ。じゃあ、行こうか。」
「は!永之助はそうこなくっちゃなあ!」
オレは、恋麗から弾薬を受け取った。もうすぐ、大切な記憶をすべて取り戻せそうな気がする。
さて、向かうか…。
「そう前にさ、腹ごしらえ、しようぜ。お前の分もあるぞ。」
「えー、空気壊すなよ。まあ、食べるがな。」
まずは腹ごしらえだ。腹が減っては戦はできぬとも言うらしい。らしいと言う理由は、オレは国語が苦手だから。
何はともあれ、あと少しで迫れる。オレの記憶の全てとこの世界の謎に。




