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異界古書店『お伽堂』の異常な日常  作者: ながる
1章 縁は異なもの味なもの

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6/6

第6話 七つの世界

 案の定(と、諦め半分で納得してしまっている自分にも呆れるが)オマエは我が家に居ついてしまった。と言っても俺も昼は仕事だし、夜はオマエもふらっと()()をしに行くし、顔を合わせている時間はそう多くはない。

 まだ三十五パーセントくらいは家出人とかじゃないのかと疑っているけれど、酒と幽霊(?)しか口にしているのを見たことがないし、帰る家はないと言われると、多少の恩を感じているものだから、出て行けとも言いにくい。


「寝る習慣はないので布団も要りません。お酒は好きですが、くれとは言えないので、食費のかからない番犬だと思ってくれればいいですよ」


 そう言いながら俺の缶ビールを恨めし気に見つめられるので、結局分けてやることになるのだが……若干解せない。

 今まではどこにいたのか問えば「外をフラフラ。短時間ならお伽堂に」なんてつらっと答えた。


「そういえば、『お伽堂』の店主とはどういう関係なんだ? 俺は結局会ってないが。お前が、その、妙なものだってのは……」

「もちろん知ってますよ」

「なら、『お伽堂』に厄介になってた方がいいんじゃないか」

「それがですねぇ。あそこ、異界や異世界とあちこち繋がってるものですから、ものすごく()()()()()()()()()()んですよね。目の前をごちそうがひっきりなしに横切るので、我慢するのが大変なんです」

「ごちそう……って。幽霊が飯なんじゃないのか? あー。妖怪や怪物系も食えるって言った、か?」


 半分寝惚けながら聞いた話を頑張って思い出す。

 オマエは「うーん」と言葉を探すように天井を見上げた。


「なんていうか……美味しいと感じて、栄養になるのはこちらのゲームでいうところのMPらしくてですね。マジックポイントとか、メンタルポイントとか? なので、人間やこちらの食べ物も食べられないわけではないんですけど、栄養源としては非効率なんですよ」


 しれっと怖いことを言う。


「人間を食べようとすると、解体、調理過程が必要になる上に、ちっともお腹が膨れない。ですが、面白いことに、それぞれが持つささやかな精神的エネルギーが相互作用しあって、幽霊みたいなものを作り上げることがあるんです。先日の『手招きする女』みたいなものですね。噂が噂を呼んで、みたいな」


 ほへー、と、間抜けな顔をしたのだろう。オマエは少しだけ笑った。


「で、異界とか異世界はそのMPっぽいエネルギーでできてるところの方が多いんです。住んでいる人や物もそういう(ことわり)で成り立ってますから」

「……もう、いっそその異世界に行けば食うに困らないんじゃ」


 オマエはうんうんと頷いて、今度はにやりと笑う。


「行きましたとも。というか、元々あちらが本拠地だったというか。世界をいくつか食べつくしましてね。大魔王とか、混沌なる者とか大仰な呼び名をつけられたりもしましたが、店主に成敗されて監視されてると……まあ、そんなところです」

「食べつくす……!?」


 俺の貧相な頭では、オマエが地球を飴玉のように口に入れてガリガリと噛み砕くような想像しかできなかったけれど、それでもスケールの違いは肌で感じる。

 俺はめまいを感じつつも、一筋の光を見出した。


「店主には、敵わなかったんだな?」

「というか、引き分けというか。あの方も七つの世界を救った勇者ですが、おかげで人間性を半分失いましたから。だからかどうか「『七』にはツキがねえ」ってぼやくようになりましたよ」

「……勇者? って、あの、ゲームに出てくる?」

「世界を救った人をそういうのでしょう? でしたら、間違いなく」


 まだまだ半信半疑ではあるけれど、俺は早急に店主に会うことを決めた。


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