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異界古書店『お伽堂』の異常な日常  作者: ながる
3章 禍福は糾える縄の如し

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第17話 付喪

 大きな事故もなく大型連休を終え、休みの皺寄せで本業が少し忙しくなった。

 休日出勤、とまではいかないが、在宅で残業代の出ない作業をする羽目に。かと思うと、懇親会だの草野球だのに誘われだして休日が潰れていく。

 野球よりはフットサルの方がまだ戦力になるのだけれど、上司のお誘いでは意見してもどうにもならない。せめてもの救いは「人数合わせだから」とエラーしても盛り上がってくれるところだろうか。


 気づけば月が替わっていて、久々に『お伽堂』に顔を出したのだが……

 テディがオマエに揉まれていた。

 ちなみに、オマエは自宅用にと買ってきた地酒目当てに毎晩やって来るので、嫌というほど顔を合わせている。テディは『お伽堂』預かりなので、会う(?)のは久々だった。

 優しい手つきとは程遠く、ぐにぐにと遠慮のない力加減に、テディが抵抗むなしく力尽きている。

 止めようとしたところでオマエがテディの耳に嚙みついた。


「こらこら。喧嘩でもしたのか? 噛みつくなよ」


 その手からテディを取り上げれば、オマエは不服そうにこちらを見上げる。


「健康チェックみたいなものですよ。そろそろ神社に持って行かないと」

「神社に? なんで?」

「ここにやってくるのは害のないものばかりではないですからね。ソレも元々いいものではないですし、影響しあうんですよ」


 指差されたテディを見てみれば、手の中でにやりと笑った。


「まだ大丈夫ですけど、神気は薄れてきてますので、どちらにせよ補充してもらった方がいいでしょう」


 俺の手から飛び降りて、テディはカウンターへと向かって行く。

 いつもの定位置に陣取ると、オマエに向かってあかんべぇをした。

 以前はオマエに怯えて涙目になっていたから、確かに少し雰囲気は変わったかもしれないけれど、いいのか悪いのかは俺には判らない。


「しばらくあなたが来なかったので、以前を思い出してちょっと悪化が進んだのもあるかもですね」

「て、言われてもなぁ。忙しかったから……」


 オマエはこくんと頷いた。


「ですから、必要以上に構うと駄目なんです。面倒見きれないなら、無視するくらいで丁度いいんですよ」

「そうもいかないだろ」


 一応、守ってくれているようだし。健気な様子を見れば情も沸く。


「割り切れないもんですかねぇ。まぁ、ですからこの世界でも食べていけるのですが。でしたら、定期的なお祓いも祈祷もやむを得ないでしょうね」


 なんか、いい感じのことを言っているけど、舌なめずりしてるから神気とやらを少しでも味わうのが目的にみえる。

 思わず半眼になったが、その程度で安心が買えるなら……まあいいか。


「そういえば、この間コンビニであの巫女さんに会ったんだけど、オマエのこと訊かれたぞ。芸能人みたいって褒めてもいたけど、妙な感じに見えるとか……」

「ああ。彼女、何か見えてるみたいですから」

「……何かって?」

「さあ。本質を見抜くのか、違いを見分けてるのか。ご本人に訊いた方が早いですよ」

「いきなりそういうこと訊くのも変だろう……」

「ああいう職業ですからね。変でもないと思いますが。人間には害のないものだとお伝えしたんですけどねぇ」

「は?」


 余計に怪しいだろ!


「そんなこと、いつの間に? ちょいちょい盗み食いしてるんじゃないだろうな?」

「人聞きの悪い……してませんよ。チャンスは窺ってますけど」


 窺ってるのかよ!?


「ほら、最初にお祓いに行ったとき、あの時ちょっと怯えられたので安心させようと」

「逆に不安になりそうだけど?!」

「見える方には下手なごまかしは効きませんから。別に騒ぎも起こしてないですし、大丈夫だと思いますよ」


 にこにこと、のんきなものだ。


 *


 久々のカウンター仕事は途中まで順調だった。

 マニュアルにないことが起きたのはそろそろバイトも終わる頃。

 店内をうろうろとしていたゴブリンが、カウンターにやってきて何事か話しかけてきたのだ。

 もちろん言葉が解るはずもなく、マニュアルをひっくり返している間にテディが臨戦態勢に入ったので慌てて掴まえる。そのまま奥に向かってヘルプを叫んだ。


「店主さーーーん!」

「なんですか……っと」


 やってきたのはオマエだった。


「店主さんは?」

「ちょっと手が離せないと。困りごとですか?」

「何か言われたんだけど、言葉が解らなくて……」

「ああ」


 ゴブリンを一瞥したオマエは、そのまま謎言語を話し始めた。


「$%*#@」

「※+!♭¥$%」


 話しながら、連れ立って入口横の棚に移動していく。

 オマエが開いた本の中にゴブリンは無事吸い込まれていった。

 面倒だからと食っちゃいやしないかとちょっとだけ心配してたのでほっとする。


「なんだって? ってか、店主さんもオマエも言葉解るのな?」

「言語切り替え機能、ついてないんですね」

「なにその機能!?」

「初めてで、どの世界に行くのか度忘れしたみたいです」

「そ、そうなんだ。テディが手を出しそうだったから助かったよ」


 テディはオマエにもファイティングポーズで威嚇している。


「面倒にならなくて良かったですね。ゴブリンはあんまり美味しくないので、さっさと帰ってもらうに限ります」


 オマエはつまらなそうにまた奥へと戻って行った。

 ……迅速な対応は、美味しそうかそうでないかで決まるの?


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