剣を向けた相手が、血を分けた兄弟だった件
かるな。
あいつは、敵だった。
でも――ただの敵じゃなかった。
かるなは、強かった。
誇り高くて、孤独で、でも、どこか優しさを持ってた。
どゔりよだなとだけは、心からの友情でつながってた。
あいつらの絆は、ほんものだった。
それだけは、だれにも否定できなかった。
でも、皮肉なことに――
かるなは、おれたちの兄弟だったんだ。
生まれてすぐに捨てられて、
自分の出自も知らないまま、敵として育った。
おれたちと血を分けた兄弟なのに、
ずっと、剣を向け合う運命だった。
それを知ったとき、胸が痛んだ。
どうして、こんなことになったんだろうって。
もし、もっと早く知っていたら――
そんな「もし」ばかりが、頭をよぎった。
でも、戦場では、容赦できなかった。
情けをかけることは、できなかった。
それが、運命だった。
どんなに悲しくても、どんなに悔しくても、
おれたちは、それぞれの立場で、戦うしかなかったんだ。
かるなは、最後まで誇りを捨てなかった。
おれたちも、最後まで剣を握りしめてた。
そして、戦場で交わした沈黙だけが、
おれたちの兄弟だった証だったのかもしれない。
……報われないって、こういうことを言うんだろうな。