おれたち、王子だけど報われません
おれは、びーま。
ぱーんどぅ家の五兄弟のひとりで、ちから担当。
まあ、戦いになれば、だいたいおれが前に出る。
うでっぷしだけは、昔から自信あったしな。
……でも、そんなおれでも、止められなかったんだよな。
あの、どうしようもない兄弟げんかを。
おれたち、ぱーんどぅ家の五人兄弟と、いとこのかうらゔぁ家の百人兄弟。
こどものころは、いっしょに育って、いっしょに笑って、
たまにけんかもしたけど、それでも仲は悪くなかった。
あのころは、まだ「家族」だった。
……たぶん。
でも、「王さまをだれが継ぐか」って話が出たとたん、
空気が変わった。
あいつらの目が、まるで別人みたいになっててさ。
とくに、かうらゔぁ家の父ちゃんと、長男のどゔりよだ。
あいつら、最初からおれたちのこと、信用してなかったんだろうな。
なに言っても、なにしても、心のドアはずっとクローズ。
最初は、口げんかだった。
でも、気づいたら、策略が飛び交って、
陰で動くやつも出てきて、
最後には、剣を抜いてた。
……なんで、こうなったんだろうな。
おれたちの物語は、ただの兄弟げんかから、
国をふたつに分ける戦争になった。
止められなかった。
止めたかったけど、止められなかった。
おれがもっと強かったら、
ちからだけじゃなくて、心のほうも強かったら――
なんて、今さら言ってもしょうがないか。
運命の歯車は、もう動き出してる。
あとは、神さまか、未来か、
あるいは、どこかの読者が「こいつ、ちょっとかわいそうだな」って思ってくれるか。
……まあ、どうせおれなんて、
主人公にはなれないタイプだしな。