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三題噺もどき4

創造の人生

作者: 狐彪

三題噺もどき―ろっぴゃくろくじゅうよん。

 



 窓辺に座り、本をめくる。

 昨日とは打って変わって、美しく晴れた夜空に三日月が浮かぶ。

 ここ最近は、一日ごとに天気が変わって忙しない。

 4月と言えば、色々と始まりの季節だろうに……そこに気候の激しい移り変わりまで入ってくると、大変だろう。

「……」

 残念ながら、私の生活にはこれといった変化がないので、気候がどう激しかろうとあまり関係なかったりする。散歩に影響が出たりはするし、酷い時は精神的にも参ったりはするが、滅多にあるものではない。……つもりである。

 まぁ、多少仕事が増えたり減ったりすることはあるが、それはいつものことだし。

「……」

 あぁ、仕事で言えば、1つ。

 長期でやっていた仕事が終わったというかなんというか……担当が代わることになったらしい。詳しいことは聞かなかったが、少し自分の時間が取れるようになったということだ。

 とは言え、緊急で仕事が入ることだってあるし、それ以外のモノもあるので確実にそうとは言えない所はあるが。

「……」

 それの影響でもないが、今日は仕事が思いのほか早く終わり、時間が取れた。

 だから、久しぶりに読書にでも勤しんでみようと言うことで、リビングの窓辺に座っている。

 今日読んでいるのは、学生の話だ。若々しい心情や、生活のあれやこれやを眺めている。

「……」

 ちょっとした恋愛も絡んでくるのだが……体育館の裏に呼び出すのは、この手の話では当たり前なのか。

 他の似たようなものでも、同じことをしていたと記憶している。

 あまりこの手のモノを読まないのもあるので、一概には言えないんだろうけど……体育館裏ってそんなに簡単に二人きりにでもなれる場所なんだろうか……。

 生憎学校を―特にこの国の学校を―知識でしか知らないので、建物がどう建っているのかとかはあまり想像がつかない。

「……」

 主人公が好いている相手と言うのが、運命の相手とはこういうモノを言うのかという感じだ。実際にあるのかと言われれば分からないが……まぁ、これは創造の話だ。

 幼少の頃の幼なじみで、主人公は幼いながらに恋心を抱いていた。しかし諸事情があり長期間離れていて、ここで再会するまで会ってもなかった上に、お互いその時の幼なじみだと認識していなかった。

「……」

 しかし、転校生として戻ってきた少女に主人公は恋に落ち、想いを告げようと奮闘したり、その傍らで部活に熱を燃やしたり、あの時の幼なじみだと思いだしたり。

 告白に至るまでに、人生において大きな問題が発生したり、やはり部活に熱を燃やしたり。

 何とも忙しないながらに、どうにかと想いを告げた。

「……」

 まぁ、どうやら生憎その恋は成就しなかったようだが。初恋は実らないと言うのだろう。

 ……しかしこの主人公は、やけに体育館に行く。

 人に想いを告げるときにも、誰かと内密の話をするのにも、一人で考え込むにも。

 今だって、少女が去った後の体育館裏で1人静かに落ち込んでいる。

「……」

 幼い頃に別れ、ここでまた再会したのち、また二人は別れる。

 何だったか、まるでこう、「さよならだけが人生だ」というのを体現しているようでもある。

 そればかりではないことは分かっているが、そう思わざるを得ないような出来事が主人公にはあまりにも多すぎる。

「……」

 まぁ、創作である以上。

 主人公の人生を作るのは、作者であり、その人が作った人生でしかないし、この主人公はこの物語の中でしか生きていない。

 それをただこうして眺めているだけの身であるから何も言えはしないが。

 ほんの少しだけ、可哀想な人生だと思わなくもない。

「……」

 めくるたびに漏れてくる主人公の心の叫びは、幼く若いなと思うものがある。

 これぐらいの年齢の人間が実際にこういう思考ばかりだと言うわけでもないだろうが……なんともまぁ“らしい”と思ってしまう。

 これくらい若い時の記憶なんてないが、こんな時期も私にもあったんだろうか。……あるわけないか。人間と化物ではな。

「……、」

 もう一ページめくり、視線を落としていると。

 ふと、気配を感じた。

「……」

「……」

 そこに立っていたのは、いつもの見慣れた少年。

 手にはマグカップを持っていた。

「読書もいいですが、休憩しませんか」

「……あぁ、いただこう」

 本を閉じ、現実に戻る。

 今日のお供は何だろうか。





「何を読んでいたんですか?」

「○○という本だよ。読んでみるか?」

「いえ、読書はあまり……」

「たまに読むと面白いぞ」

「まぁ、機会があれば……」











 お題:「さよならだけが人生だ」・運命・体育館

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