第九夜
第九夜
こんな夢を見た。
蝶。蝶が飛んでいる。紋黄蝶。紋白蝶。揚羽蝶が飛んでいる。畑の上で飛んでいる。田んぼの上で飛んでいる。
色んな蝶が飛んでいる。何故だろう。何故、こんなにも蝶を見るのだろうか。
私には分からない。何故、多くの蝶を見るのかが。
羽が青い蝶を見かける。あれはどんな種類なのだろうか。
蝶と言えば、胡蝶の夢の話が思い浮かぶ。
蝶であることを確信して、楽しげに飛んでいた。しかし、目を覚ました時には、人間としての自分になっていたという話だったか。
人間としての自分は蝶が見ている夢という疑問を残していたように思える。
他にも、愛や自由の象徴だったりするそうだ。
さて、大勢の蝶を見ている夢というのは、どんな意味があるのだろうか。
この蝶たち一匹一匹がそれぞれの人が見ている夢だろうか。
真相は分からない。誰かの自由の象徴だろうか。愛の象徴だろうか。死者の霊魂だろうか。はたまた、人間の抱く願望を勝手に乗せただけだろうか。私には関係ないのだ。
ただ、私は今、蝶の大群に取り囲まれている。私は花では無いと言うのにだ。振り払いたいとは思わない。ただ、蝶の大群を見ている。
この蝶の大群はどこに向かっているのだろうか。私はそれが気になってきている。
いつの間にか大群と呼べるまでに増えていった蝶たちはどこへ羽ばたき飛んでいくのだろうか。
北に向かっているのだろうか。東か西なのか。それとも南へ向かっているのだろうか。
私には分からない。ただの傍観者である私には。ただ蝶たちを眺めることしかできないのだ。
風が吹く。南風だ。南から北へと吹く風。そうか、この蝶たちは北へ向かって行くのか。どの蝶たちも無事に辿り着いてほしい。
私はそう願っていた。私をいつの間にか取り囲んでいた蝶たちに対して。
そこで、私は目が覚めた。あの夢は一体どんな意味が有ったのだろうーー。