第八夜
第八夜
こんな夢を見た。
私は美術館に居た。不思議と窓が無い。いや、あるには有るのだが二階にあるのだ。
幾つか展示されている展示品を観る。宝石が展示されているが、どれも身分が低いように感じる。豪華さや煌びやかさが無いとは言わないが、どこかひそやかに感じるのだ。観ている限りどれも。
展示されている中で、一際大きい宝石を見かけた。その宝石は今まで展示されていたのとは違い、大きめのガラスケースに金の土台。真紅のクッションに乗せられた大粒のダイヤモンドが美しくカットされている。
あまりの美しさに思わず膝をついてしまいそうになる。女王。まさしく、宝石の中の女王と言うべき存在である。
そして、それがガラスケースの中で眠っているように飾られている。
眠っていると言うのに優雅さは損なわれていない。見蕩れてしまっている。
手に取って、その重さを確かめたくなる。が、それは叶わぬ夢であると言えよう。
幾重もの厳重に閉ざされてしまっているのだから。幾多の鍵によって、閉ざされている女王を目覚めさせないようにしている。目覚めてしまえば一巻の終わりと言うように。
ただの宝石ならば、そこまで厳重しなくてもいいはず。なのに何故、このダイヤモンドだけがここまで厳重に保管されているのか。
その理由を知りたくなってくる。自分でも分からない。何故、ただの宝石。炭素の塊に過ぎないのに、そこまで気を惹かれるのか。
分からない。けれど、知りたくなってくる。
興奮している。彼女のことが、宝石のことが、女王のことが、知りたい。知りたくてたまらない。息が荒くなってきている。それほどまでに私の好奇心を刺激しているのだ。ただの宝石に過ぎない物に対して。
ダイヤモンドであることは、その輝きから分かっている。けれど、その名称は何だろうか。気になって、名称を調べてみる。
そこに書かれていたのは、希望のダイヤモンド。即ち、ホープ・ダイヤ。
何ということか。私は、ホープ・ダイヤに心を奪われていたというのか。
名付けとは裏腹に所有者を鬼籍へと誘ってきた、あのホープ・ダイヤに。
もしや、このダイヤモンドが、ホープ・ダイヤが幾重もの厳重に保管されているのg由来に関するものだとしたら、この美術館の館長はもう……。
そこで、私は目が覚めた。あの夢は一体どんな意味が有ったのだろうーー。