第五夜
第五夜
こんな夢を見た。
私の目の前にはガラスケースに収められた、一振りの抜き身の刀が飾られている。
私はじっとその刀を見ていた。正座をしながら。刀と対面するかのようにして。
この刀はどんな刀なのか。ただ飾るために造られた現代刀なのか。
それとも、藁束や畳を斬るためだけに造られた実用性を持った刀なのか。
はたまた、過去に人を殺めた妖刀と呼ばれる刀なのか。
私は見て、思い馳せるしかない。
私は刀を見ている。正座したままずっと。見て思い馳せている。
すると、私はある幻に心が、思いが囚われてしまった。
戦場で刀を振るい、相手を手にした刀で切り伏せている。そんな幻である。
斬舞血風。銀閃乱舞。相手の血を刀身に浴びながら、その侍は刀を持っていた。日中の戦場で。いつの時代かは分からない。けれど、その刀は確かに血を浴びていた。
そして、幻が終わる。刀はガラスケースの中に収められ、飾られたまま。
そうか、この刀は戦場で確かに振るわれたものだったようだ。その時のことを、使われていた頃のことを、幻を通して追想しているのかもしれない。
しかも、無限の時を。そのことに刀自身が気づいているのかいないのか。真実はどこにあるのだろうか。誰も知る由も無いだろう。
そこで、私は目が覚めた。あの夢は一体どんな意味が有ったのだろうーー。