3
「賊だ。賊が復讐に来たぞ」
その声にリタは目を開けた。戦利品の査定中に寝てしまったのだ。どのくらい寝ていたのだろう。外はまだ明るいから、長い時間ではないと思う。
寝ているルッツをおいて、リタは外に出た。襲われる者の悲鳴が村中に響き、戦える者はそれぞれの得物を持って交戦している。
賊は口々に短剣の少女を探せと言っている。
リタは腰の短剣を抜くと叫んだ。
「リタ・マックイーン、ここにあり。賊どもの相手は私がしてやる」
その声の誘われ、賊が次々に集まり、円になってリタを囲む。
リタは内心笑いが止まらない。世界の救世主たる自分の名を売るにはもってこいの状況である。この程度の相手など軽くあしらえるだろう。そうすれば武名は上がり、村を救った英雄として名声も上がるのである。チャンスだ。
「お譲ちゃんみっけ」
低く、不快な笑い声をあげて、巨漢の男が現れた。見忘れてはいない。昨晩倒した、山賊の首領である。
「昨日はお世話になったからな。そのお礼にきたぜ」
リタはあきれた。言ってる言葉があまりにも月並みである。教養がないのか、馬鹿なのか。はたまた首領としてのお決まりのセリフを言いたいのか。少なくとも意外性ゼロ。よく山賊の首領をやっていられるような奴である。
「それで何?私と戦うつもりなの」
こっちも月並みで反した。月並み相手は月並みで十分である。
「まあな。今回は数が違うぜ。村人は逃げて行ってる。少年もいない。お譲ちゃん一人で戦えるかな」「まあ、余裕だね」
そう言いながらリタは相手の動きを覗った。なんせ相手の数は三十を超えてる。正面切って戦うには少々数が多い。相手を一撃で倒す気持で戦わなければ。そう思った。
リタは動いた。包囲の緩い一点。飛び込みと同時に剣を振う。二人倒れた。振り向きざまに一人を倒す。包囲の輪が広がり、相手との間合いが広がる。
リタの剣は他とは少々性能が異なる。剣と言いながら実際の切れ味は悪く、斬るというより打つと言った方がいいような品物である。つまり相手の急所を打たなければ、致死に至ることはない。鈍刀なのである。
相手の急所。そこを突かなければならない。リタにとっては致命的な弱点は、時間が経てば倒した相手が再び立ち上がる事を意味する。体力には限りがある。つまり長期戦は負けを意味する。
包囲の輪が広がっている今、狙うは賊の頭、巨漢のあの男である。敵は数を恃んでいる。護衛の者を除けば、まともな集団戦はできていない。
飛び込んだ。最も敵の堅いところ。護衛の壁を突きぬけられるか。そこが勝負の鍵だ。
こちらの動きに敵は一瞬遅れた。しかしその一瞬で勝負がついた。護衛の間のわずかな隙間を通り、首領に達したのだ。剣を振りぬいた。
首領は倒れた。笑ったまま気絶している。数を恃んでいる者にとって、頭が倒されたとなれば、大きな混乱が生じる。全力で逃げ出す者、武器を捨て逃げ出す者が次々と現れた。
護衛の者も形勢不利と見たか、首領を担ぐと村から出て行った。
呑気な奴だ。宿に戻ったリタはそう思った。ルッツは寝ているのだ。それも自分が宿を出た時と同じ姿で。
リタはベットで横になった。眠い。心底そう思う。