1 プロローグ
おかしい
確実におかしい
こんなにシリアスな顔してなんてことを言っているんだコイツは。
俺がコイツこと乙咩輝葉に呼び出されたのはついさっきのことだ。
神妙な顔つきで、
「ちょっと相談したいことがあるんだ。ついてきてはくれないか?」
と言うのでついていった。
告白の場所として定番な体育館裏につくやいなや、コイツは俺にこう言った。
「実は僕・・・。お、女の子かもしれないんだ。」
・・・・・、何を言っているのだろうかコイツは。
「きゅ、急にどうしたんだ?」
声が震えてしまったのは仕方のないことだろう。
だってこいつには男の象徴である例のアレがついているのだから、男でないわけがないのだ。
もしかしてアレか?女体化とかか?そんな非現実的なことがおこるものなのか?
輝葉は、俺の動揺に気付いていないのだろう。一人呆然とする俺を置いて話を進める。
「今までずっと不思議だったんだ。なぜ僕はよく女のようだと言われていたのか。でも、僕が本当は女の子だったとしたら説明がつくだろ?」
え、えぇーーーーーーーーー
そゆこと?な、なるほどねぇ?
確かに輝葉は、昔からよく女のようだと言われていた。
乙咩輝葉という名前が女の子っぽいし、顔も中性的で整っているほうだ。それに何より、コイツはドのつく天然だった。そんなこんなで、小さなころから女の子扱いされることが多かったのだ。
だからって普通、自分が女の子なんだって考えにはならないんじゃ・・・。
・・・まぁ仕方ない。輝葉の暴走を止めるのも俺の役目だ。一仕事してやろうじゃないか。
この時の俺は輝葉の暴走を簡単に止められると思っていた。だが、輝葉は俺が思っている以上に天然だったのだ。