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18才のファンタジェンヌ  作者: はねとら
第二話 降り注ぐ悪夢の雨
6/25

半魔族アゴン襲来!!


「魔族⁉」

 荒神の剣の忠告にわたしは驚き言葉を漏らす。

 魔族ってなに? 

 説明してもらった登場人物に、魔族の『ま』の字もありはしなかった。

 抗議の目で荒神の剣を一瞥するが、刀は緊張を解かない、ただ一言「後で説明する」のみ。

 わたしが漏らした一言に男は笑みを崩さず。

「ブッブー不正解。俺は魔族じゃない。かといって人間でもない。

 魔族と人間のハーフ、半魔族だ」

 と言われても、んな事は知ったことじゃない。

 ってか、そもそもあんた!

「何でわたしの部屋にいるの!?」

「お前、デーモン倒しただろ。

 デーモンをぶった切るなんざぁ、たいしたもんだ」



 !?



 デーモンとの戦いを見ていたのか!

「お前に興味が沸いた、俺と戦わねぇーか」

 冗談じゃない!

 あたま狂ってるなこの男。

「戦わないわよ、部屋から出て行って」

「やだね」

 男は一歩、また一歩と間合いを詰めて歩み寄る。

 わたしは刀を中断の構え――――――に反し、

 刀が自分の意志で、刀身をわたしの腹部の前にガードするように移動した、まさにその瞬間。男はわたしの腹部に蹴りを入れてきた。

 刀身が蹴りを受け止めてくれたが、重い‼

 右手に柄を左手に刀身に手を添えているが、受け止めきれず体が吹っ飛ばされる。

 幸いベッドが後ろにあったため、仰向けに倒れるだけで済んだ。

 腰の痛みを気にする暇がないほど、瞬時に荒神の剣が左から右に空を薙いだ。

 距離を詰めようとする男は一撃を後方に飛んで回避する。

「へぇ~やるじゃん」

 笑みを崩さぬまま、男は楽しそうに笑う。



 はたしてこちらに勝機はあるのか……

 荒神の剣はすごいが、扱うわたしがヘボすぎて話にならない。

 ここは逃げるのが得策だろうが、逃げ切る自信は全くない。

 荒神の剣に策があるのか無いのか、わたしは口を開く。

「あんたノックも無しに部屋に入るなんて、礼儀がなってないんじゃないの。

 だいたい、いきなり『戦おうぜ』じゃないわよ、名前ぐらい名のったらどうなの‼」

 言葉に男は少し驚いたように目を丸くした。

 おそらくこの状況で、そんな事を言われるとは思ってもみなかったのだろう、男は声に出して低く笑ってから、

「これは失礼、俺の名はアゴン。

 失礼ついでに君の名前を教えてもらえるか?」

 名乗りたくもないが仕方ない。

「須藤美咲よ」

 

 突然、荒神の剣が叫ぶ。

「美咲『ベルドーラ』と大声で叫べ」

 不意を衝く荒神の剣の叫びに一瞬戸惑ったが、この絶体絶命の状況を脱する策があるのだろう。言われた通り力強く叫ぶ。



「ベルドーラ‼」



 叫びと同時に荒神の剣が強烈な光を発しだす。

 突如、刀にズシリと重さを感じ、力を吸われているような感覚がわたしを襲う。

「お互いこの状況は長くはもたん。一撃で決めるぞ!」

 刀がわたしに覚悟を求め、油断しているアゴンに向かって駆け出す。

 この重みを振り上げるほど力がない、だけど力の限り横に振ることはできる!

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」

 気合と共に、右から左へ全力で横に薙いだ。


 

 ぎぎいぃぃぃぃぃぃぃぃぃん‼



 一撃はアーマーの胸部分を大きく切り裂き、アゴンの苦痛の叫びが響く。

 荒神の剣に纏われた光は一撃と共に消え去り、わたしは部屋の壁にもたれかかった。

 が―――――

「今のうちに走れ、逃げるのだ」

 刀が叫ぶ、知っているのだ。

 アゴンがこの程度では倒れないことを。

 極度の疲労を体に感じる。だが深呼吸をして、苦しむアゴンの横を抜け部屋を飛び出した。


「待てえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」


 アゴンの叫びが後方に聞こえる。

 何気ない木造の床に躓きそうになりながらも、必死に走り、階段を駆け下りる、アゴンが後方から追ってくるのが微かに分かる。

 振り向く事もせず、宿屋を飛び出した。

 外は早朝。

 人けが無い村を煌々と日がさしていたが、雨も降っていた。

 まるで雨がキラキラ光っていて、光の雨のような綺麗の光景だ。


 そんな事を思いながらも、体が濡れている感覚が無いほど、わたしは必死に地を蹴って全速力で逃げた。

 荒神の剣が示す方向に向かって村を駆ける。

 先に何が待っているかは分からないが、もう目指すしかない。


 そこはもう村ではなく再び鬱蒼とした森の中。

 だいぶ長い距離を必死で走り、体力の限界に達して木にもたれかかる。

 こんなに息を切らせて全力で走ったのはいつ振りだろうか……。

 もう色々な出来事が一気に起きて疲れた。

 体が動かない……。

 わたしは木にもたれ掛りその場に倒れた。

 意識を切らしたらダメだとわかっていたが、極度の疲労に打ち勝つことはできず、わたしの意識は途切れた。



 アゴンは美咲を追い、宿屋の一階に下りて、しかし玄関で足を止めた。

 光が射す雨の中。美咲が走る後ろ姿を見ていた。

 さすがにこれほどのダメージを受けるとは思ってもみなかったが、そんな事は既にどうでもいい。

 アゴンは喜悦の笑みを浮かべていた。

 

 ―――――― 見つけた!

 デーモンを難なく倒し、半魔族の自分にこれほどの一撃を与える人物。

 そして―――――。

 アゴンは声に出して笑わずにはいられなかった―――抑えきれない感情が彼の中で爆発した。



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