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18才のファンタジェンヌ  作者: はねとら
第一話 荒神の剣に導かれ
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選ばれたワケ


「終わったぁ……」


 安堵と共にどっと疲れが押し寄せる。緊張、恐怖……多くの感情がやっと沸き起こり、整理しきれない中―――わたしはか細い声でつぶやく。

「なんなのよ…………もう……帰してよ」

 しばしの沈黙の後、荒神の剣は重苦しく口を開いた。

「申し訳ない、今のワシには元の世界に帰す力が無い」

「え……」

 刀の言葉にわたしは耳を疑った。

「連れてくるだけで力を使い果たした。帰す力がいつ溜まるかはわからん」

「ちょっと待って、じゃあ………帰れないの?」

「すまぬ」

 脱力感に体中の力が抜けて、絶望がわたしを支配した。

 何も考えられないとはこのことだろう。

 時間にすれば一・二分かもしれいが、この沈黙が何時間にも感じた。

 話しかけ辛そうに荒神の剣は口を開く。

「ここにいるのもなんじゃ、この近くに村がある。

 そこに行けば暖かい食事と宿がある、そこまで行こう。

 途中で全て説明する」



 呆然と空を見上げた。

木々の隙間から見た夜空は、白く光る幾つもの星々が僅かながら見えた。

こんな所にいても仕方がない……

 刀を掴み、杖代わりに重い腰を持ち上げる。

 ギャーギャー騒いで抗議の声を上げるが無視をして、

「あなた、鞘はないの?」

 刀身むき出しだと怪我をしそうだ。

 まあ、森の中を歩くなら小枝やつるを切るのには便利だけど。

 わたしの言葉に刀は小さく唸り、一瞬で刀身に黒い鞘を纏わせた。

「さて、それじゃあ村とやらに行きますか」

 半ばやけくそ気味にわたしは呟く、落ち込んでいても始まらない。

 こうなったら『なるようになれ』だ。

 デーモンが落とした幾つもの宝石を拾ってから、ズボンの右ポケットに入れる。

 そうだ、スマホ!

 ポケットにスマホが入っていたから直ぐに取り出して、画面をタップしてみる。

 ホーム画面には日本の時刻が表示されている。

 でも、やはりというか、当然というか電波は来ていない。

 お母さんに電話を掛けてみるが、ウンともスンとも言わず、音すらもならない。

「ダメか……」

 大きく溜息一つついて、スマホをポケットに戻した。

 左側のポケットには財布が入っていた。

 荷物はこれだけか……。バックとか買い物した物はおいてきちゃったのかな……。

 さらに嘆息をついて、刀が示す方に歩き出す。


 道なき道を少し歩くと山道に出た、あとは道なりに山を下るだけ。

 山道とはいえ足場は悪い、救いなのはスニーカーを履いていたこと、これがヒールだったら地獄だった。

 ………って、そんなしょうもない事を考えていても仕方がない。

「約束よ、何で私を連れてきたの」

 荒神剣に質問を始める、刀は数秒の沈黙後、語り始めた。



 話しの内容はこうだ。 

 この世界にここ数年で大量のデーモンが突然発生していた。

 元々デーモンなどという生き物が存在しなかったのだが、ある大陸に突如現れたデーモンは、人々を襲い五つの都と二つ王都を壊滅し、ついにはその大陸を占領した。

 その力はますます大きくなり、次の大陸に襲い掛かろうとしている。

 その大陸が今わたしがいるここである。

 デーモンがちらほらと出現しているのは、すでに上陸が始まっている事を意味する。

 この大陸にある王都も占領されてはたまらないと、デーモンに対抗する策は投じている。

 その中の一つがこの『荒神の剣』だ。

『とある方』が生み出した、この刀を扱える人間が見つからなかった。

 この世界にいないのなら、別世界から連れてくればいい、そう『とある方』が考えて荒神の剣はわたしを見つけた、ということだそうだ。

 わたしからすれば、本当に迷惑な話である。

 その『とある方』の素性を訪ねても「答えられない」としか返ってこなかった。




 それに関しては、口封じされていると考えるのが自然か…。

 強力な刀を生み出し、時空を超える方法を知りえる人物。

 当然、方々から狙われる可能性がある、その情報を他人にホイホイ話をするのは問題なのは分かるが……。

 こっちはその人の被害者なんですけど!

 知る権利ってのが、わたしにはあるんじゃないだろうか。

 心のモヤモヤは解消されるどころかますます大きくなるが、これ以上聞いても無駄な気もする。

 

 

「それで、わたしはこれからどうすればいいの?」

「まずは村で一泊してから、『とある方』の元に向ってもらいたい」

 わたしをこの世界に連れてきた黒幕、その『とある方』に会えば帰れるかもしれない。

 ちょうど山道を抜け、数百メートル先にこじんまりとした村が見えた。

 わたしは村を見据えながら意を決し「分かった」と答えた。




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