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18才のファンタジェンヌ  作者: はねとら
第四話 ノーム村の決戦
17/25

フィールシャワーの中で


 エルゼが生み出した荒れ狂う強風の中で、わたしの体が風の刃に切り刻まれているのが分かる。

 だが不思議なのは痛みを感じない。

「なんで?」

 体を見渡すと、不思議な現象に気づいた。

 体に受ける鋭利な風刃の傷は、受けた瞬間から修復していた。


 ざん!!


「わっ!」

 風刃に手首を切り落とされたが瞬間に元に戻っていく。

 効いてない………

 エルザに刺された脇腹も傷が塞がっている。

 なんで??

「これはどういうことじゃ……」

 荒神の剣も同じように驚いている、わたしに何が起きているのか誰も分からないようだ。


 エルゼの魔法が止むと彼女は力を使い果たし、意識を無くしてその場に崩れた。

 風の渦が消え、無傷のわたしがアゴンを睨みながら立ち上がると、

「だろうな」

 笑みを浮かべて意味深に呟くアゴン。

「エルゼに何をしたの」

「知りたいか? なら教えてやるよ。

 二人の前で村人を殺してこの死体の山を見せた。

 怒り狂って襲ってきたガキは雑魚だからすぐ殺した。

 姉の方は魔法を操れて面白そうだから玩具にしたんだ。

 痛めつけた後、腰に刀を差した女を追っている、俺達がこの村に来たのはそいつのせいだと、お前を恨むように仕向け。

 その後は無理やり魔族の血を飲ませた。

 魔族の血は人を人ならざる者にする」


 

 ぬる――と。

 視界の端に影が動く。

 視線を向けるとエルゼが立ち上がっていた。

 上半身に力が入っていなく、まるで映画のゾンビのように、だらーんとしている。

「ヴヴヴヴヴヴ――ー―

 アァァァァァァァァァァァァァァァ」

 彼女の背中が膨れ上がり、血をまき散らしながら悪魔の羽が生えた。

 さらに、顔が腕が足が、徐々に膨れ上がり、それは人の姿を変えていく。

「な……に?」

 目の前で起きている光景が信じられず、後ずさる。

 エルゼは……いやエルゼだった人物はデーモンへと姿を変えた。

「なんで……」

 デーモンはわたしを確認すると咆哮し、右腕を振り上げて襲い掛かる。

「まって!」

 待ったをかけるわたしの言葉が、いまの彼女に届くはずがなく。

 荒神の剣でデーモンの手を振り払い、間合いをあける。

 なんてことを……なんて惨いことをするんだ。

「アぁゴぉぉぉン!!」

 デーモンを無視し、激昂してアゴンに向かって突っ込む。

 許せない、許さない!

 荒神の剣を握りしめ走るわたし。


 その刹那。


 眼前にデーモンが立ちふさがる。

 あまりにも速いスピード、わたしの方がアゴンの近くにいたのに。

 デーモンの拳が、わたしの顔面に突き刺ささる。

 あまりにも重い一撃に、人形のように吹っ飛ばされ地面にたたきつけられた。

 悲鳴すらも出ない、体中に激痛が走り、体が動かなくなる。

 息をするだけで体中に激痛が駆け巡る。

 これは体中の骨が折れたかもしれない……

 デーモンがゆっくりとこちらに歩む。

 クソ……アゴンに一撃も与えてないのに、こんな所で殺されるの?

 動け! 動け! せめて一発だけでも………。

 

 

 それは突如。

 音もなく静かに訪れた。

 仰向けに倒れるわたしの視界。

 はるか上空の雲から、光の粒が無数に降ってきたのだ。

「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 断末魔の叫びを上げるデーモン。

 それはルナがわたしに教えてくれた、あらゆる生物を葬る。

 悪夢の雨。



  ―― フィールシャワー ―――



 断末魔を上げたのはデーモンだけではなかった、奥にいるアゴンも苦しんでいる。

 だが、わたしにはまったくの無害だった。

 痛くも痒くもない、水のように濡れる事もない、まったく何ともない。

 首を何とか動かして周りを見渡すとデーモンやアゴン、それに死体の山から黒煙が上がっていた。

 半魔族であるアゴンは不気味な笑みを浮かべ、フィールシャワーに打たれながら、わたしにゆっくりと近づく。

 背筋がゾッとした。

 光の雨に打たれて数秒しかたっていないのに、まるで火の雨を浴びたように体が爛れていく。

 そんな状態なのに、当のアゴンは歓喜を込め笑いだす。

「はははははははははははははははは!!!!

 思った通りだ。

 お前には何も効きはしない!!

 魔法も、刃も、そしてフィールシャワーもだ。

 見ろこの姿を!

 半魔族である俺でもこの光には叶わない、こんな姿になっちまう。

 光の前に人間も魔族も無力だと諦めていた。

 お前を見るまでは。

 何故フィールシャワーを浴びても平気なんだ?

 何故、我ら魔族に致命傷を与えられる?」

 アゴンの髪が抜け落ち皮膚が爛れるがそんなことには構いもせず、嬉しそうに歓喜を上げ。

「お前は何者だ。

 明らかにこの世界では異質な存在じゃないか」

 そう言われてもね。

 何も言う気は毛頭ないが、そもそも言葉すら発する力が今は無い。

「今日は退く、このままでは俺も消滅しちまうからな。

 また会おう」

 アゴンは言うと姿をパッと消した。

 そう言えば女の魔族もいつの間にか姿を消していた……



 村人の死体は雨に打たれ塵と化していく。

 そして―――――

 デーモンとなったエルゼもまた、その姿が徐々に塵となっていく。

 体の右半身は崩れ去っていた。

 唇を噛みながら、抑えられない涙で視界が滲む。

 痛みなど構わず、震える声を絞り出す。

「え…エルゼ………ごめん……

 ごめんね……わたしが来なければ……

 村はこんなことにならずに済んだのに………」

「ヴ…ヴ……チガ……ウ」

 エルゼの声。

 違う? 違うって何?

「アリ……ガ………ト…ウ……」

 その瞬間、エルゼは塵と消えた。

 エルゼ………

 言葉に表せない、幾つもグチャグチャな感情が、わたしの中で渦を巻き。

 わたしは声をだして大泣きした。

 ただただ空しく光の雨は降り注ぎ、大地に消えて行った。

 



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