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転生!? 悪役令嬢エリーゼの優雅な日々  作者: 桜庭恵斗
第三章 バチバチ!? まさかまさかの奪い合い!?
5/21

第二章スタートです。

次から主要キャラクター揃うと思います。

よろしくお願い致します。

「であるからにして……石浪さん。この答えはいくつになりますか?」


教師は黒板に問題文を書き途中まで解いた所で春香を指名した。

エリーゼはちらりと後ろを振り向き春香の様子を確認する。


「え、ええと……」


どうやらこの問題の答えがまだできていないようだ。

それもそのはず。

今出された問題は基礎の範疇からかけ離れ、

完全な応用の範囲に属する問題だからだ。

エリーゼは唐突に油性マジックペンを取り出し、

先が太い方で自分のノートにデカデカと文字を書いた。


「え!?」


エリーゼは先ほど書いたノートをめいいっぱい広げ、ドスンと垂直に立たせた。

勿論、後ろの席にいる春香には丸見えである。

ちなみに教卓に立つ教師にもバレバレだ。


「え、えーと。ステュ――ひっ!」


エリーゼは教師に向かって百パーセントの目力と、

悪役令嬢お得意の暗黒微笑によって黙らせる。

ステュアート家の地位はこの学園内において、

水谷家に次ぐ二位に君臨している。

従って今のエリーゼを止められる者は、

同クラスに所属する水谷だけなのだ。

しかしどうやらその本人は止める意思はないようだ。

以上から、ストッパーが機能しない今、エリーゼはやりたい放題である。


どうして答えを言わないのかしら?

もしかしてわたくしに気付いてない?


エリーゼは春香のために、分かりやすいカンニングをさせている。

しかし春香は答えない。

答えない春香に対してエリーゼは、ささやかな行動にでる。


「ふっふ~ん……」


まずはハミング。

恐らく気が付いていない春香をこのハミングで気付かせる計画だ。

次はノートを左右上下に小刻みに動かしてみる。

小刻みでは飽き足らず、

振り子のようにぶらーんぶらーんとノートを振ってみる。

しかし春香は答えない。

さすがに痺れを切らしたエリーゼは、

体ごと後ろに振り向いてノートを指さし、

口パクで『ここ! ここ!』と訴えた。

観念したのか春香はエリーゼのノートに書いてある通りの答えを言った。


「正解です……次からは答えられるようにしてください」


教師は苦し紛れに言う。しかしエリーゼにとってはどこ吹く風。

エリーゼは上機嫌に鼻を鳴らす。



あのイベントから数日が立ち、

元取り巻き達からのアクションは無かったが、

エリーゼの春香LOVEの勢いは加速し暴走の一途を辿った。

もはやキャラクター崩壊の域に達しているさまは、

学園中に瞬く間に広まった。

勘の良い生徒は先日の怪物騒動はエリーゼではないかと疑うが、

エリーゼは知らぬ存ぜぬ。

やがて怪物の話はエリーゼの異変という一大スクープによって影を潜めた。

退屈な授業は鐘の音と共に終わり、エリーゼは春香の元へと向かう。


「春香。どうして先ほどはわたくしのノートを見なかったのかしら?」

「え、ええとそれは……」


春香は助けを求めようと周りの生徒に視線を送る。

しかし、帰ってきたのは同情の目であった。

唯一のストッパーである水谷も我、関せずといった感じだ。


「いつもエリーゼに迷惑ばかりかけているので、ちゃんと自分の力で解かないとって思って……」

「え」

「で、でも勘違いしないで欲しいんです。エリーゼを嫌いになったわけじゃなくて……あ、勿論好きですよ? なんかこう……自立しなきゃいけないなって思ったんです」


春香は頬を紅に染め、そっぽを向く。


ぬぁぁぁぁあああああああああああ!!

ツンデレ? デレ期? 親離れ? 超絶百合展開?

なんでもいいけどキマシタワァァァァァアアアアアアア!!

転生してから早二年と数カ月。もしいるのなら言いたい。

わたくしを転生させてくれた神様ありがとう。

ああ、なんで春香たんはこんなに可愛いんですの?

ああ、この子を人のいない所に連れ出して、

あんなことやこんなことなどエッチな悪戯をしたいですわ!

しかしそれは不可能ですわ。

今日ほど自分が女である事を恨んだことはありませんわ!

春香たん、残念ながらわたくしは貴方を愛でることしか出来ませんの。

もし願いが叶うなら春香たんをお持ち帰りして、

フリフリのメイド服姿が見たいですわ。

神様、わたくしの願いを叶えて欲しいんですの。


「あ、そういえば次は移動教室でしたね! お荷物お持ちしますよ!」


春香はエリーゼの荷物を持とうとする。

だがこれをエリーゼが止める。


「え?」


春香は不思議そうにエリーゼを見上げる。


「春香、貴方にはわたくしの荷物を持たせませんわ。わたくしは貴方との関係をそういうものにしたくありませんもの」

「エリーゼ……」


春香はエリーゼを見つめ、照れたようにはにかむ。


ああ、本当に可愛いですわ。

守りたい、この笑顔、ですわ。

この幸せを誰かにおすそ分け――いえ、見せびらかしたいですわ。

見せびらかすのに最適な方、いませんの?


エリーゼは周りを見渡すと、見せびらかすのに最適な人間を見つけた。


「あら、水谷様。貴方もこれから移動するのかしら?」

「ウッ、あ、ああ」

「そうなんですのね。あ、そういえば水谷様はいつもお昼を一人で過ごされてますわよね? 良かったらわたくし達とご一緒しませんか?」


エリーゼは嫌がる水谷へ一方的にまくしたてる。

水谷は品定めするような目でエリーゼと春香を交互に見た後、

「考えておく」と言い残して去った。


なんですのあのクソボッチコミュ障は!?

わたくしのせっかくの誘いを生返事で返すなんて!

ムキー!! 許せませんわ!


「あのぅ、私がお昼をご一緒してもよろしいのでしょうか?」

「当然ですわ。わたくしが貴方を独りにすると思いまして?」


かくして二人は次の授業に備えて教室に向かった。


水谷修、待っていなさい。

わたくしに恥と敗北を味あわせた罪。決して軽くはないわ。

貴方に地獄をみせてあげますわ。

水谷修、待っていなさい。


授業の始まりを告げるチャイムが学園内に響いた。


 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●


「はい、春香。あ~ん」

「あの、えと……あー」


ぱくっ。

エリーゼの持つスプーン越しに春香の口内の感触が伝わる。


アヘアヘアっへぇぇぇぇぇぇぇぇ。


エリーゼの脳内に、中毒性のある危険な快楽の波が襲う。

その波は必然的に、自然にスプーンを動かし、

もう一口、もう一口とせがんだ。


「エリーゼ! 私は自分でも食べれます!」

「そんな! 殺生ですわ!」


春香はほっぺを膨らませ、普通に自分で食べ始めた。

エリーゼはあからさまに落ち込む。


「はあ」


しかし、これも計画の内であった。

エリーゼは悪役令嬢であり、天才である。

そんな彼女は春香にあ~んしたスプーンを、

他人に悟られる事無く自らの口に運びこみ、間接キスに成功する。

エリーゼは自画自賛する。

自分は正真正銘の天才であると。

スプーンを加えたまま、エリーゼは水谷を盗み見る。


どうですの水谷修。

これがわたくしの実力ですわ。

そうでしょう羨ましいでしょう。

ええ、羨ましいでしょうねぇ!!

貴方にこのプリティーキュートな春香たんを渡しませんわ!

オーホホホホホ!


対して水谷の反応はというと。


「ナッ!?」


思わずエリーゼは声をだしてしまう。

ガン見していた。

水谷は一直線に冷ややかな目でエリーゼをガン見していた。

まるで信じられない、とでもいうように。


見破られましたの!?

この完璧なる策略を!?

し、しかし同性間の間接キスはノーカンのはずですわ。

ぐぬぬ、様子から察するに、やはり見破られていますわね。

恐るべし水谷修。

やはり一筋縄ではいきませんわね……。


両者目が合い、目の前の料理を気まずそうに口へ運ぶ。

この状況に気づかなかったのはただ一人、春香だけであった。


「そ、そういえば、水谷様はお休みの日は何をされているんですの?」

「勉強」

「そ、そうなんですの」


会話が続かない。

これでは春香との仲を見せびらかすことはおろか、

自らの失態を見せびらかしただけとなる。

エリーゼは先ほどの失態流そうと、

何か会話に繋がるような物を探すが見つからず、

ただ悪戯に時間が過ぎていった。

焦るエリーゼとは対照にぱくぱくと料理を頬張る春香。


ああ、わたくし。

春香たんがいれば何でもいいですわ。

ああ、春香たん。

貴方はどうしてそんなにも愛おしいのかしら?


エリーゼは味のしない料理と共に、今ある幸福を噛みしめていた。

このまま幸せな日々が続けばいいのに、と心の中で願う。


しかしエリーゼは次に起こる、

とてもとても大事なイベントをすっかり忘れていた。


 

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