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転生!? 悪役令嬢エリーゼの優雅な日々  作者: 桜庭恵斗
第六章 ドキドキ!? 初めてのお宅訪問!?
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「な、な、な……きゃぁぁぁぁああああああああああああ!」


とっさに胸と股を手で覆う。

なぜこの場に水谷がっ!?

まさかエロ本探しのせいでわたくしの事をエロ関連OKな女だと思われた?

それでわたくしに発情して襲いに来た?

いやいやいやいや、初体験がこいつとか無理無理ですわ。

助けて春香ぁ! こんなやつに穢されたくない!

落ち着け、落ち着けわたくし。

きっと湯気が濃いせいで光の屈折率や反射がどうたらこうたらで、

春香が水谷に見えてしまっているんですわ。

姿形は水谷そのものですが、中身は春香ですわ。きっとそう。


「お前、何がしたいんだ?」


採取した音声サンプルから過去のデータと照合。

声紋解析完了。全て正常に作動。

判定結果――水谷。

うん、やっぱりですわ。


「い、良い湯加減ですわね。おほほ~」


エリーゼはカニのようにぎこちなく動き、彼と距離を開けて湯に浸かる。

もし襲ってきたらタマを蹴ればいい。

タマさえ蹴ればいい。

よし、今のわたくしは冷静ですわ。

腰を落としたものの、裸の男女二人という状況は変わらない。

さて、どうしたものか。

品行方正で眉目秀麗、

こんなにも神に愛されるわたくしが襲われる確率はゼロではない。

いや、エロOK認定されているならほぼ百。

出来るなら早く逃げたい。

彼は捕食者でわたくしは非捕食者。

今この場を離れるという事は、彼に背を見せるという事だ。

つまり襲われる。

後ろからなので、抵抗しようとしたって防ぎようがない。

ということで、エリーゼの行動はただ一つ。

水谷があがるのを待つ。

男の三大欲求である性欲にはある弱点が存在する。

それは温度だ。

性欲は熱すぎたり寒すぎたりすると無くなってしまうのだ。

なので、水谷がのぼせるという事は性欲が消えるという事に等しい。

ソースは前世の経験とネットから。

自信を持って言える。間違いない。

ぽつんと、滴が落ちる。

身の危険を感じながらも、エリーゼは居心地の悪さから口を開いた。


「ここは女湯のはずですが?

 もしかして、水谷様はわたくしの身体が目当てなんですの?」


あえて挑発してみる。

ここで乗るならタマを蹴る。

乗らないなら現状維持。


「はっきり言ってそんなことはない。それにここは男湯だ」


「……え」


「更衣室に赤城の服があったが、

お前がいるということはそういうことなんだろうな」


「ちょ、ちょ、ちょっと待って欲しいんですの。

理解が追いつきませんわ。ここは女湯じゃないんですの? 

わたくしはちゃんとメイドに案内されましたのよ?」


「どうせ赤城とグルだったんだろう。

あの人達は婚約者とか適当な事を言えば動きそうだからな」


「どうしてこんな事を?」


「それはお前が一番わかってるだろ?」


わたくしが?

確か赤城と最後に話したのは夕食前ですわ。

ちょっと前の記憶を探してみる。


『まあ事情は分かったよ。こっちでもなんとかしてみる』


あーこれですわ。

多分彼は水谷とわたくしの関係を気にし、このような行動に出たのですわ。

形はどうあれ、なんとかしようとした結果なのだろう。

赤城は馬鹿だけど実は良いやつかもしれない。


「もちろんですわ」


「俺もあいつがそんなやつだと思わなかったな」


ん? そんなやつ?


「まさかこうしてまでも石浪と二人になりたいとはな」


前言撤回ですわ。

赤城死すべし。

春香の元へ駆け出したい衝動に突き動かされるが、理性でそれを抑える。

赤城が春香目的だとしても動くべきではない。

それに水谷が嘘をついている可能性だってありますわ。


「お前は行かないのか?」


「わたくしは春香を信じていますわ。それに出ていくのは貴方では?」


「お前が先に入っていてもここは男湯だ。出るのはお前の方だ」


やはり体目当ての線はありますわね。

水谷が入ってきて数分、だんだんと口数が減ってくる。

未だ手を出す気配は感じられない。

チャンスをうかがっているのかしら?

そうはさせませんわ。


「そういえば、水谷様は絵を描くのがお好きなのですか?」


「夏休みに描いたアレか。暇つぶしに描いただけだ」


「暇つぶしにしては何か寂しさというか、

気持ちのようなものを感じましたが?」


「……あの絵にそんなものはこめていない。」


水谷は嘘をついた。

作中にてあの絵はそれほど重要ではない。

しかし、モデルとなった海辺の風景は彼にとっては思い入れのある場所だ。

幼い頃、彼には病弱の母がいた。

病院から外出許可が出るとその都度、あの海辺に連れて行かれる。

年に数度の貴重な時間。

だが、甘えたい盛りであった彼に母の死が訪れる。

以上から水谷にとってあの海辺は特別な意味を持ち、

彼を攻略するにおいて重要な伏線となる。

まあ、春香以外どうでもいいので関係ないのですが。


「前から気になっていたんだが、お前は本当にあのエリーゼなのか?」


「な、ナンノコトデスノ?」


ぐらっと頭が揺れた気がした。

心臓の音もうるさくなってくる。


「ステュアート家の令嬢と言えば傲慢で我儘な人間だと聞いていた。

しかし蓋を開けてみればどうだ? 

不本意ながらお前といたが、まったくその素振りを見せない。

まるで別人みたいにな」


「それは……」


確かに過去のわたくしと行動が一貫してないかもしれない。

それは春香と自分の為。しょうがないのだ。

しかし、彼はエリーゼの秘密に迫っている。

いっそのこと打ち明けてしまうか?

打ち明けて春香と結ばれないように嘆願するか?

いや、こんなこと誰も信じる訳がない。

言ったところで意地になって春香と付き合うかもしれない。

エリーゼの心は揺れ動く。

恐らく、彼の疑問は確信に近い物だろう。

話せば一定の理解は得られるかもしれない。

最悪ここまでがエリーゼの計算と受け止められるかもしれない。

一か八か。

エリーゼは賭けに出る。


「わ、わたくし、実は――」


「お、おい!」


瞬間、一気に意識が遠のく。

手足のコントロールを失い、身体が横に倒れる感覚を覚える。

腕を伸ばして駆け寄る水谷。

しまった。

これでは襲われてしまいますわ。

身体も自由に動かせない。

ごめんなさい春香。

初めては貴方にと、心に誓っていたのに……。

エリーゼは瞳を閉じた。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「あ、エリーゼ!」


目が覚めると春香がいた。

何故だかエリーゼはベッドの上にいた。


「あら、春香」


「大丈夫ですか? 

水谷さんがのぼせたエリーゼをここまで運んで来てくれたんです」


「水谷が……? ハッ!?」


股を触り最終防衛ラインを確認する。

痛みと状態、共に異常なし。

どうやら最悪の事態は避けられたようだ。

では、わたくしを襲う気などなかった?


「どうかしました?」


「い、いえなんでもありませんわ。

それよりもわたくしが入浴中に赤城と何かありませんでしたの?」


「赤城さんと? 

あの時はちょっとだけ二人と勉強してましたけど……?」


はい、有罪。赤城は許せませんわ。

不思議そうに首を傾ける春香。


「とりあえず皆さんに目覚めたと報告してきますね!」


そういうと春香は出ていってしまった。

すれ違いに赤城が入ってくる。


「エリーゼちゃんおはよう。調子はどうだい?」


「貴方のお陰で最悪ですわ」


「あれれ~、褒められると思ったんだけどな~」


「邪魔者を追いやって貴方は春香と過ごす。

これが褒められるとでも思いまして?」


「あちゃーばれちゃってるね。

でも本当はエリーゼちゃんも喜んでるんじゃない?」


「喜ぶ? わたくしが?」


「うん、証拠に顔が赤い」


「なッ!?」


両頬に手を当てると、ほのかに熱を帯びていた。

もしかしたら赤くなっているのかもしれない。

わたくしが水谷に惚れる?

そんな馬鹿な話ありませんわ!

わたくしは身体が女でも心は男ですわ!


「こ、これはさっきまでのぼせていたせいですわ!」


「本当かなぁ? 

入ってきたときはそんなに赤くなかったと思うけどなぁ」


赤城は目を細めてニヤニヤ笑う。

この状況では何も言い返せない。

ぐっ……覚えてなさいよ赤城!

いつかほえ面かかせてやりますわ!


そして一夜明け、エリーゼは春香のベッドにいた。

なぜいたのかは言うまでもない。

こうして水谷家での勉強会は終幕となる。



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