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転生!? 悪役令嬢エリーゼの優雅な日々  作者: 桜庭恵斗
第六章 ドキドキ!? 初めてのお宅訪問!?
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「うわぁ~どしゃ降りですね~」


有意義な勉強会も終わりを告げ、帰宅の準備を進めていた。

しかしタイミングを計ったように突然の大雨が到来する。

外から聞こえて来る雨音に窓から程度を確認するエリーゼ達だが、

風の勢いに乗った雨粒が大量に付着していた。

まだ完全に陽が沈む時間ではないというのに薄暗く、

分厚い雲や雨風のせいで外の様子が分かりにくい。


「結構、やばくない?」

「これでは服が濡れてしまいますわね」

「私も服が濡れるの嫌です」

「春香、安心なさい。

貴方が濡れないようにわたくしと抱き合えば濡れませんわ!」

「却下です」


はいはい、分かってましたわ。

ラッキーパンチやラッキーパンツの一つや二つぐらい欲しいですわ。

と、ここでドアの向こうから水谷が現れる。


「お、どうだった?」

「かなり雨の勢いが強いらしい。さらに崖が崩れる危険性もある」

「崖崩れですか!?」

「え、それ僕たち帰れないじゃん」

「ああ、だから今日は泊まっていけ。部屋も空いてるしな」


水谷の後ろから数人のメイドが姿を見せ、部屋に案内する。


「あとは頼む」

「かしこまりました」


水谷はそう言うと、自らの部屋へと歩き出した。


「ではご案内させていただきます」


メイド達に連れ出され、それぞれの部屋に到着する。

連れ出された部屋には隅々まで清掃が行き届いており

、ベッドにはシワ一つない。

水谷の部屋のように本棚やパソコンなどはないものの、

化粧台やイス、コンパクトなテーブルが置いてあるので客室としては申し分ない。

どこかのホテルの一室と言われても信じられる空間だった。

不満を言うならば春香と同室でないことぐらいか。

大方の説明を終えたメイドは一礼して立ち去る。


「ふう」


エリーゼはベッドへ崩れるように倒れこむ。

やっぱり春香と一緒の部屋が良いですわ。

でも、春香は入れてくれるかしら?

どこかの国の風習によると、

深夜あたりにキュウリを持って行けば部屋に入れてもらえるらしいですわ。

ですが、困った事にキュウリを持っていない。

いっそのこと水谷家の冷蔵庫から盗みだす?

いえ、あの一件以来水谷との間に奇妙な空気が流れている。

そりゃそうですわね。

という事で、よば――キュウリ作戦はなしですわ。

初めて会った頃の春香なら余裕でしたのに……。

返して。

純真無垢だったあの頃に返してですわ。


――コンコン。


不意にドアをノックされる。


「どうぞ」

「おお、神の使いよ。新しい予言はありましたかな?」


ドアを閉めると鼻につくような物言いに、クイックターンで赤城が入ってくる。

とても気持ち悪いというか、見ていて背中がムズムズしますわ。

原因を作ったのはわたくしですが控えてほしい。とても。


「いえ、ありませんわ」

「あ、そうなんだ」

「で、用件はなんですの?」

「エリーゼちゃんさ、水谷と何かあった?

 二人とも目を合わせないようにしてたし、

春香ちゃんもなんかそわそわしてたし」

「ああ、それはですわね……」


エリーゼはあの時の事を語った。

水谷の部屋に潜入し、春香と一緒にエロ本探しをした事。

パソコンのフォルダを漁ってエロ画像探しをした事。

本人に見つかった事。

あの後水谷は声を荒げることもなく、

引き抜いた本は出しっぱなしだというのにあっさりとエリーゼ達を帰した。

妙に落ち着いた態度から察するに、隠し場所は別の所にあるのだろう。

本棚パソコンでもなく、わたくし達が触れていない所。

ハッ! ベッドですわ!

何故わたくしは気づかなかったのかしら!?

もし探していたら絶大な破壊力を持つ武器になっていたというのに……。


「あははははは! そんな面白い事してたんだ!」

「春香を守るためには必要な行動ですわ」

「だからってパソコン覗く? ぷぷぷ」


赤城は目に涙を浮かべながら腹を抱える。

大層楽しそうな赤城に腹が立ちますわ。

天才設定の水谷とはいえ、思春期真っ最中の男子だ。

前世のエリーゼにも経験がある。

隠していたつもりになっていた場所に魔(親)の手が忍び寄り、

我が家宝が机の上で五十音順に並べられたことを。

その時の心中は穏やかなものではない。

例えばジェットコースターで真っ逆さまに落ちていく感覚。

体に穴が空き、冷たい風が通り抜ける感覚。

彼も男だ。勿論例外ではないだろう。

水谷とは知り合いの友達のような関係を築いてきたが、

今回の影響で知り合いの知り合いレベルにまで落ちるだろう。

これはエリーゼにとってかなり困る要素となる。

彼とは微妙な距離を置きつつ、赤城を利用して情報収集を行っている。

今のところ大きな情報はないものの、

春香の恋愛感情が絡んでくる終盤になると重要性が増してくる。

その情報を基に、

水谷へ適切なアプローチをかけていくというのがリスクを最小限に減らせる形だ。

しかしこれ以上関係が薄くなると難しくなる。

最悪、分かっていたのに行動を移せないという事態に陥ってしまう。

リターンを求めてリスクを無視した結果がこれですわ……。

彼らとは二回りも年齢を積んでいるのにこの失態。

もう少し慎重に行かなければなりませんわね。


「まあ事情は分かったよ。こっちでもなんとかしてみる」

「できるんですの?」

「まかせなって!」


赤城は胸をドンっと叩く。

猫の手でも借りたいがあまり彼には頼りたくはない、

だが現状がこのままだとまずい。

はあ、大丈夫かしら?


・・・・・・・・・・・・・・・


春香達と夕食を済ませた後、

ドアの向こうから「お風呂の準備が整いました」とメイドに言われたので、

かいた汗を流しに行く。

更衣室で服を脱ぎ、置いてあるカゴに畳んで入れる。

少し太ったかしら?

脇腹をつまみながら足を運ぶ。

頭に浮かんだのは高級銭湯。

ヒノキが香る木製の浴槽や大理石でできた浴槽。

中には横になりながら入浴できるものもあり、

自然をモチーフにしたのか大きな岩のオブジェが設置されている。

先ほどの更衣室は暖色系の照明に観葉植物が置かれており、

どこかの旅館のような雰囲気を放つ。

まずは備え付けのシャンプーを手に取り髪を洗っていく。次に身体。

入念に全身を洗い流した後、湯船に浸かる。

足先から肩にかけて緊張がほぐされる。

うっすら汗をかいてきたころ、更衣室から物音が聞こえてきた。

誰かしら? メイド?

まず、メイドが来る可能性は低い。

わたくし達は客人として招かれている。

常識的に考えて彼女らが入浴するのはわたくし達より後になる。

よってメイドではない。

ではメイド以外の誰か。

ぐへへ。

すぐさま岩のオブジェに隠れ、シャワーの音を聞く。

ふむふむ、今身体を洗っていますわ。

シャンプーは少なめでボディソープはやや多めですわね。

音を匂い、そしてわずかな振動を頼りに脳内でイメージする。

フフフ。彼女がお風呂に入って一息ついた所を狙いますわ。

わたくしはそこを潜水して近づき驚かせる。

驚いた彼女は足を滑らせて倒れるが、わたくしも一緒に倒れる。

わー、いててー。

そして偶然を装いラッキースケベ。

ぐへへぇ。完璧ですわ!

オーホホホホホ!

シャワーの音が止み、足音が浴槽へと向かう。

静かな波を作ると、湯が浴槽から溢れた。

十を数えたのち、エリーゼは決心して湯の中を潜る。

ターゲットまで十メートル。

幸い、白い湯気が大量に立ち昇っているのでバレる心配は少ない。

残り五メートル。

イルカやコウモリは目を使わなくとも、

超音波を発して周りの状況を得ることが出来る。

エリーゼもしかり

こちらも目を使わずにたぐいまれな感性によって把握できる。

残り一メートル。

今ですわ!

さあ驚きなさい!

足を滑らせなさい!

スケベさせなさい!


「んバァア!!」


ターゲットのすぐ目の前で急浮上する。


……。


何故か相手から声が上がらない。

驚いたような反応もない。

エリーゼはお湯で濡れた顔を拭い、閉じた瞳を開ける。


「なっ……」

そこにいたのは春香ではなかった。メイドでもない。

すまし顔の水谷がそこにはいた。


「な、な、な……きゃぁぁぁぁああああああああああああ!」


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