竜人の異形と蛮族と名前
自己紹回です。
幼き頃から好きだった風で揺れる草木の静かな音を余所に、ハインは目の前の女蛮族の言葉の意味を解析することでいっぱいいっぱいだった。
(名前…?蛮族の傍で働く…!?
ついさっきまでは命令を聞いて当たり前だって態度が、急に褒美…
いや、もしかして蛮族じゃないことがバレて近くで監視しようってこと…?!)
思い返してみると確かにただの蛮族が落下を配慮しながら罠を解除するような知的なことはしないのかもしれない。
(相手の機嫌を損ねないようにすることに思慮を張らせ過ぎた?!)
「どうした早く名前を教えろ」
偉そうに座ったままの女蛮族のこちらを見る目に訝しげな色が見える…気がする。
「は、ハインです!」
相手が疑いをかけているかもしれない以上、相手に不審ととられる反応を見せるのは得策ではない。今は大人しく従いながら隙を見て逃げる。
「ハイン、か…」
女蛮族は刻み込むように名前を繰り返しながら立ち上がる。
「あたしはルシハだ!覚えていいぞ!」
自信満々にのけ反る様に(あまり無い)胸を張り満面のドヤ顔を決めている。
あまりに無防備で得意げな彼女の振る舞いに少し気が緩む。
(さっきの警戒は必要なかったみたい…だけど)
ルシハと名乗った蛮族は160㎝半ばのハインよりも10㎝程背は低く角の先端がちょうど目線の高さにある。実際にドレイクを見たのは初めてだったが、性格も踏まえてまだ成人をしてないように見えた。
(幼い蛮族が単独で生きているとは考えにくい…ということは近くに他のドレイクがいる可能性があるよね…)
彼女の身に着けている軽鎧装備は、戦利品から得たにしては彼女にぴったりで戦いで付けられたであろう傷の多さに対して蛮族と思えないほど手入れが施されている。
そのことからも彼女が蛮族の組織内で上位に位置しており、装備を特注させたり手入れをさせたりできる立場であることが予想される。
(着てる物から考えて、この上からな態度も不自然じゃない…)
今の彼女から猜疑心がある様に感じない事が現状の救いであり、未成熟ゆえの知識不足に助けられているだろう。
だが、このまま群れに合流されてしまえば何をされるのか、想像は難しくない。蛮族達に玩具の様に扱われるビジョンが頭を過る。
「ではハイン行くぞ」
ルシハは自身の武器を拾い上げるとハインの腕を強く引きながら歩き出す。
「ええ、と、どちらに行かれるのでしょう?」
せめて逃げ出すまでは作り笑いを絶やさないように心掛ける。
「今夜は人間の村に襲撃をかけるのだぞ?お前の一族には伝達はなかったのか?」
ハインの自然に振舞おうとする意識を余所に冷や汗と震えが体を覆い、作った笑顔から血の気が引く。
「夜になる前にハインが来てよかったぞ!なにせ今日はあたしが初めて指揮を執って村を襲うのだからな!一番近くであたしの力を見ていいぞ!」
ハインの腕を引きながら蛮族は無邪気な笑みを向けた。
書きながら出来事を簡単にまとめてるだけで細密な描写を考えてないと思い至り、今後の課題にしていかないと、と考えつつも改善されるかは不明。後々加筆することも検討。
あまり気負わずにやって行く所存。
次回予告:逃走




