表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜人の異形と蛮族と  作者: 天樹 吾芽
一章:薬草摘みと襲撃者
1/21

竜人の異形と序章

SW2.0の蛮族作成が楽しくなり過ぎた為に妄想が治まらずについ書いちゃった作品。

TRPGリプレイではなく自キャラによる空想作品になります。

初めての投稿なのにも関わらず上記のゆるい動機の書き出しから中二な痛い設定とか都合のいい展開とか完全に誰得?作者得の自慰的な作品ですので生暖かい目で見て見ぬ振りをして下さると幸いですよ。

『その日はいつも通り、やっと慣れてきた道を歩いていた。


 ルキスラ帝国領の南部に属する城塞都市ディザ。

人々が賑わう大通りの隅を人目をはばかる様に速足で進む影があった。』


 広場からは噴水の周りで涼む市民の楽しげな声や噂話で溢れ、焼きたてのパンの香りと彩り鮮やかな様々の果物、溢れんばかりの肉汁を滴らせる串焼きなど立ち並ぶ露店の数々は、国領随一の食料生産量を誇るこの街へと他国からやってきたエルフやドワーフの旅人達を迷子にさせている。


 その傍ら喧騒と自身を遮るようにフードを深く被り、ロングコートの隙間に腰から自衛の為だけにある未使用のレイピアを携えたその人物は、自信なさげに身を縮め、辺りを見回しながら仕事へと急いでいた。


「きゃっ」


 挙動不審のあまり街角から現れた女性にぶつかってしまい、お互いにしりもちをつき、被っていたフードから素顔がはみ出す。


「あぁごめんなさい貴女…?」


 そう言いかけた女性はこちら性別を確認する様に顔を上げ息を飲んだ。


 彼女の瞳に映り込むのは、色白で華奢な体躯、肩まで伸びる栗皮色の髪、よく女性と見間違われる中性的な顔立ち。

  その視線がこちらの目線よりも上を向くとそこで人間でないことに気付き青ざめる。

髪留めのようにも見える若葉色の小さな双角。それが視界を確保するように前髪を分けていた。


 そして女性は声を殺し買い物かごから転がり落ちたリンゴにも気付かず逃げ出した。


「あっ…」


 呼び止めようとした声は続かず途切れ、その場に取り残される。


「冒険者じゃないと怖がられるばかりでまともに話もしてもらえないんだもんな…」


 一般的なナイトメア(異形種)に対する世間の認識は”忌み子”だ。

あらゆる人族から”穢れ”を持った突然変異として生まれ、その象徴たる角が時に母体を傷付け、その命を奪うことも珍しくない。

 そうして周りから蔑まれた目で見られることの多いナイトメア達は非行に走ることが多く、そのことで更に人々に避けられるのだ。


「ナイトメアってだけで…」


 しかし、先日までそれは本の世界の話だと考えていた。

なぜなら他種族出身のナイトメアとは違い、卵生のリルドラケン(竜人族)から生まれ平穏に育てられた自分の境遇はナイトメアの中でも更に異例で、恵まれていたのだと理解できたのは成人を済ませこの街へやって来て以降だった。


「はぁ…」


 諦めた様に溜息をつき、フードを被り直し立ち上がるとロングコートについた砂埃を払う。

こうして肩身が狭い生活がまもなく1年経とうとしているが、望みが叶うとは到底思えなかった。


「よぉ!゛草むしりのハイン″。今日もまた”草むしり”か?」


 突然の声かけに身体がびくりと反応する。

こちらをバカにするようにニヤニヤとしながらやってきたのは同業の冒険者だ。


「や、”薬草摘み”も立派な冒険者の仕事ですよ…」


 目を反らしながらフードを被り顔色を隠す。


「そりゃあ駆け出しにとってはな?」


 ハン、と鼻で笑いながら同業者は語りを続ける。


「未知の遺跡に果敢に挑み、人々を襲う蛮族を蹴散らし、珍しい宝を手に入れる。それができて初めて一人前の冒険者!」


 大袈裟なジェスチャーで高らかに謳いながらこちらに振り返る。


「それなのにお前は戦闘向きなナイトメアの癖に日和って草むしり…その穢れた角もただのお飾り」


 こちらの嫌がる表情を見ようとぐいと顔を寄せながら指を差す。


 ナイトメアは穢れにより他の人族より能力が優れることが多い。特に種族特徴の『異貌』は見た目を異形の姿に強調させ、魔法を使用する際の装備制限や発声をも不要にする力を秘めている。


 そして人族の街の中で唯一の居場所で生きる為に冒険者を営むナイトメアのほとんどは魔法も戦術も物心が付く頃には必死の覚悟で学んでいる為、自分と同じ年齢の同族は既に少なからず成果を持ち合わせ周囲からも期待されている。


 そんな中で魔法を勉強したことも無く、今から下手な魔法を覚えても実戦経験もないのに冒険に駆り出されることになれば、自分はおろか同行するパーティメンバーにまで命を晒すリスクが伴う。

そう考えてしまうと自分にとって種族特徴は在って無いものなのだ。


 冒険者として才を持つナイトメアとは言え、物静かなリルドラケンの親元で趣味人として生まれた自分にとっては「日がな本を読みながら歌を口遊むこと」が一番の望みであり、争いや諍いは本望ではない。

それ故に宝の持ち腐れと他の冒険者から舐められているのが現状だった。


「そんな簡単な話じゃ…」


 自分の耳にも聞こえるかも怪しい言葉が漏れる。

現実の冒険者という仕事はかつて夢に見た居場所とは違う世界だったのだ。


「ん?なんだこれ?」


 こちらの言い分は聞こえるはずもなく男は足元に落ちていた本を拾い上げる。


「なんだ…お気楽な吟遊詩人の本か…」


 ハッとして自分の荷物を確認し、女性とぶつかった拍子に私物の本を落としていたのだと気付く。


「あっ!それは…」


 自分のものだと手を伸ばそうとするが、怖気づき止まる。


「つまんね、金にでもするか」


 刹那、本を持つ男の腕を鷲掴む。


「ボクの本です。」


 唐突な冷ややかな言葉が、男に刃の様に突き立てられる。


「そ、そうか」


 予想だにしなかったであろう行動に彼の目には畏れの色が上塗りされる。

大声で冒険者が何たるかを語っていたのがウソのように震えた声。


「じゃあ、な?」


 男は静かに本を返すと逃げるように去っていった。

その背を見ていると、周囲の視線が針のようにつき刺さるのを感じる。

きっとまた忌み子が問題を起こしたとでも思われているのだろう。


「本のように簡単にはいかないよね…」


 そう呟くと南門へと向かい、ローラ川にかかる巨大な跳ね橋を越え、いつもの森を目指しながら故郷でのやり取りを思い出していた。



 リルドラケンは卵から生まれた子を誰の子と決めず共通の教育者のもとで平等に扱う風習があり、こちらに偏見の目を向けたりはしない。


「ハイン、また一人で本を読んでるのかい」


窓の外からは自分とは異なる姿の、同い年の子供たちが楽しそうに駆け回っている声が聞こえる。


「…本が好きなんです。先生。」


「…どうしてかな」


自分が先生と呼んだ竜人の男性は少し落ち込みながらそう返した。


「ボクに似た人達が夢に満ちた世界を冒険しているから」


返事をしながらも周りを一瞥することを避けるように本を読み進める。


「…他の人族はナイトメアを忌み子としてきらうらしい、私は家族がそんな目で見られるのは嫌だな。」


その眼には怒りと悲しみの色が見えていた。


「…すまない、大人げないことを言ったね。いつかハインが信頼できる仲間と夢を叶えてくれたら私も嬉しいよ」


自分を家族として扱ってくれることに胸が締め付けられる。




 草の茂みの前に腰を下ろし薬草を摘む。

手の届く範囲の目ぼしい薬草を一通り摘み切れば、立ち上がり次の群生地を探す。

それをひたすら繰り返す。

 手にはその汁の青臭い匂いが微かに染み付き始めた。


 数刻後には日が傾き始める。

いつもならそろそろ帰ることを考え出すが、ここ最近で一番収穫率が悪いためそれはできないと悟る。

やっと底が見えなくなった籠をよいしょと背負いながら森の道を奥へと歩みを進める。


「少し道を外れて森の中に入らないとノルマに満たないかもな…」


 正直に言って森の中は入りたくない。

日の光が遮られる森の影では、どんな危険があるかわからない。

 だが、この仕事を始めて以来、同じ道を歩きながら小脇の薬草を摘んできたためそろそろ収穫にも限界が見えている。


「冒険、か…」


 街でのことを思い出す。


「生活のために少しの危険は覚悟しないと…」


 このままいつまでも甘えたことは言えないだろう。

比較的茂みの浅い箇所をかき分け未開の地へと一歩踏み出す。


『その後、世界を変える一歩を。』

主人公の名前を決めてません。致命的。

*加筆修正で名前が加えられたことにより描写を一部変更しています。


技能構成はフェンサー1、セージ1、バード2

冒険者するに当たって仕方なくフェンサー(回避技能)とったの…


次回:ヒロイン登場

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ