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らせんのきおく  作者: よへち
静編
68/205

第068話 『カブールの廃墟』



馬車の操作は得意だと言うアレクに御者台を譲り、カブールまで案内してもらう事に。

しかし当日中に到着しそうにもなく、静の一行は途中で野営する事となった。


「皆さんもハーフエルフなんですか?」


アレク曰く、結月が静を母と呼んでいるのに、その静はどうみても結月と同世代にしか見えない。それはエルフの女性の特徴なのだが、そのエルフのもう1つの特徴である尖った耳が2人にはない。だからそう思ったそうだ。

その問いに答えようとした結月を目で制し、静が答える。


「まあそんな感じよ」


それで結月も何か察したのか特に口を挟まない。

アレクから集落を襲われた経緯を少々聞き、雑談した後、皆は眠りに就く。


が、それを見届けた静は永遠と共に馬車を離れる。


「永遠、あなた遥とはリンクしてるの?」


「はい。この惑星上でしたら問題なくリンクの範囲内に収まります」


それを聞いた静は永遠を経由して遥に2つ3つ質問し、確認する。


「そっか…やっぱりね。ま、関わっちゃったのにほっとくのも何だし、最後まで面倒見ますか」


と溜め息まじりに苦笑する。


「永遠、あなた睡眠って摂る必要ないんでしょ?悪いんだけどヘンなのが寄ってこないように番をしててくれない?」


「はい。仰せのままに」


そう言葉を交わし、2人は馬車へ戻った。


---


翌日。

日の出と共に動き出した一行は、昼時にはカブールの集落に到着した。

正しくはカブールの集落跡地と言うべきか。そこはもう既に廃墟だった。


「えっ!?なんで!?みんなどこ行ったんだ!?お〜い!!」


大声で呼びかけるアレク。そんなアレクに静は溜め息をついて話しかける。


「アレク、もういいわよ。私たちもうわかってるの。ごめんねアレク。いやアリエルさんだよね」


それを聞いたアレク、いやアリエルは瞬時に跳び退くと静から距離を取り、身構える。

そして廃墟のあちこちから現れる獣人達。


「…いつ、バレたのよ?」


眼光鋭く静を睨むアリエル。


「最初からよ。ごめんね、少年なんて呼んじゃって」


静はアリエルに心から詫びる。


「じゃあ何でここまで来たのよ?バカなの?馬車と持ち物を置いてくのなら追わないわよ」


武器を持った獣人達にすっかり取り囲まれてしまった静達。その数は50人弱といったところか。

はっきり言って多勢に無勢だ。普通なら降参しなければ殺されてしまう状況だろう。

そうやって旅人をここへ誘い込み、身ぐるみを剥いで奪い、生活をする。いわゆる『野盗』だ。今回もいつもの流れだったのだろう。

だが静も結月も、そして永遠もその状況を全く意に介していない。

そんな状況で静が口を開く。


「アリエル、あなた子供がいるんでしょ?こんなやり方で今は食べさせる事も出来るかもしれないけど、いつか破綻するわよ」


「はんっ!やっぱり只のバカだったんだね。いいよ皆、身ぐるみ剥いじまいなっ!」


その言葉を合図に一斉に静達へ襲いかかる獣人達。だが静も、そして結月も薄ら笑いを浮かべている。


「結月、永遠、わかってるわね?」


「はいはい、殺さなきゃいいんでしょ?」


「わかりました」


そして始まる、一方的な蹂躙じゅうりんの如き戦い。

50人近い獣人達は疾風の如き速さの2人を捉えきれず、そして神速の速さで繰り広げられる攻撃に武器を砕かれその身を吹っ飛ばされ、次々と無力化されていく。

動ける者が半数を切ったあたりで獣人達にも焦りが見え始める。


「アリエルっ!なんなんだこいつら!?なんてヤツら連れてきやがったんだ!?」


「バカ野郎!口を開ける余裕あったらさっさとやっちまいなっ!」


だがどう見ても静と結月は余裕綽々な表情だ。まだ薄ら笑いは消えてはいない。

永遠にいたっては、全く動かず獣人達の攻撃を全てその身に受けている。が、全く効いていない。

むしろ攻撃をした獣人のほうがその硬さに手を痺れさせ、そしてたまに永遠が獣人の頭を掴み『ぽいっ』と遠方へ投げる。


いつしか立っている獣人は残り2人になっていた。1人はアリエル、もう1人は隻眼の狼頭の獣人。

中東あたりで使われている『シャムシール』のような剣を後ろ手に持ち、手を前に出す構え。あきらかに他の獣人達とは一線を画するその存在感。


「なぁあんたら、もう十分だろ。ここは見逃してくれないか?」


その獣人は静達に交渉を求めた。


「何言ってんのよゲオ!さっさとやっちゃってよ!」


アリエルの言葉はもはや悲痛な叫びだった。


「なあアリエル、見たらわかるだろ。どう足掻あがいてもこの人達には勝てない。相手が悪かったんだよ」


そのゲオの言葉にアリエルは膝から崩折れる。


「なんでだよ…じゃあ子供達はどうすんだよぉ…」


アリエルは泣き出してしまった。その様子に結月はたまれなくなる。だが静は揺るがない。悪者は彼らのほうなのだ。

そして静は提案をする。


「ねえ、あなた。ゲオっていったわね、あなたがこの子に、結月に勝てたら見逃してあげるけど、どお?」


と結月を指差す。


「えーー!?何それ!?聞いてないよ!」


「だから今言ったじゃない」


親子漫才を繰り広げる静と結月。

アリエルは縋るような目でゲオを見つめる。

そのゲオはあまり乗り気ではない表情だ。だが他に道もない、あらためてゲオは剣を構える。



「姐さん、『ユヅキ』ってんだな。じゃあユヅキ、俺もあんたには勝てるとは思えないが…ちょっと胸借りるぜ」







罠に嵌められた静達だったのですが、まあ静は最初から気が付いていたようです。結月はなんとなく怪しいと思っていた程度ですが。

そんなワケで次回は静に無茶振りされた結月が狼頭の隻眼の獣人『ゲオ』と戦う事になります。




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