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らせんのきおく  作者: よへち
静編
65/205

第065話 『蜘蛛の糸』



「こ、これは…」



苦い顔で『永遠トワのコア』の分析結果をにらむ静。

『無機生命体』という聞いたこともない生物を分析したところ、やはり聞いた事ないような結果が得られた。


『永遠のコア』自体は生命として活動する、いわば細胞核のような存在だった。外部からの電気的な刺激で分割させ、そのコアを2つにする事はおそらく可能、いや出来るはずだと静は分析する。


だがそれを取り巻く『細胞質基質』のようなものが厄介だった。その物質が今の永遠が持つ量、およそ1グラムでもあれば分割したコアを安定させる事が出来そうなのだが…


「『六方晶の炭素結晶』ね。それ自体はどこにでもあるんだろうけど…こんな高純度で高圧縮なモノって地球上に存在するのかしら?」


『六方晶系の炭素』、最も馴染みのある同位体としては『黒鉛』がある。鉛筆やシャーペンの芯だ。

だが永遠のそれは、恐ろしいほどに『高純度・高圧縮』なものだった。

ともなるとおそらく硬度は10を越える。同じ炭素結晶で親戚とも言える『ダイヤモンド』を越える硬さだ。作ろうにも天文学的な数字の圧縮力が必要になる。そんなモノが地球ここで生成出来るとは到底思えない。

静は苦悶の表情で呟く。


「そっかぁ…地球外生物ってのも伊達じゃないわね。さすがにこれは…いや、まだよ」


静は再生された記憶をフル回転する。何かあるはずだ。何か…


その時、何気ない記憶の一コマが浮かび上がる。ある休日のリビングでの一コマ。


---


「へぇ〜。ダイヤモンドより硬い鉱物なんてあるんだな」


「何よ祐樹、そんなのあるわけないじゃない」


静がそう言うと祐樹は新聞を見せにくる。


「ほら、ここに書いてあるよ。このあいだ隕石が落ちて衝撃波が発生した事件があっただろ、あの落下現場から採掘されたんだって」



---


「…あった!」


この地球には質量の70%をも吹き飛ばす天体が衝突したのだ。それだけのエネルギーならばそれが生成されていてもおかしくはない。


「遥、その18億年前に天体が衝突した地点ってわかる?」


「衝突地点はその後の地殻変動や環境の変化により特定出来ません。ですがおよそと思われる地点があります。ここから東へおよそ2000kmほどのエリア、水深48000mの海底のあたりです」


海底48000m…見えかけた希望がまた遠のく。これで何度目だ。その理不尽な運命の仕打ちに静は神を呪う。だが諦めるわけにはいかない。


「じゃあ、その衝突の痕跡を残す地形をした場所って残ってない?」


「天体との衝突後、地球は永らくの地殻変動を経て球体へと戻りました。衝突の痕跡を残す場所はありません。ですが当時の地層の露出する場所ならば衝突地点の付近に存在します。その一部分は海上に隆起し、島になっています」


見つけた。ようやく見つけたそれは蜘蛛の糸のような細く儚い希望だ。もしかするとまた運命の神が嘲笑あざわらうかの如く、そこにそれは存在しないのかもしれない。


だがそれは『物理現象』の産物だ。決して神の奇跡などではない。おもむいて調査する価値は存分にある。


「永遠、元の姿に戻って」


静がそう言うと永遠は周囲にあった無機物をそのコアの周囲に取り込み、人間の形を形成する。


「なんでしょうか、静様」


「貴方、無機物を取り込んで身体を形成しているって言ってたわよね。じゃあ地盤の『味見』って出来る?」


要は成分分析できるか、という話だ。それを汲み取った永遠は


「はい。この地球上の生物が匂いで判別するように、ある程度近くまで行けばそこに何が含有されているのかは判別可能です。私のコアより繋がる100mほどの範囲でしたら『私の身体』として取り込む事や操作も可能です」


それを聞いた静、今度は遥に地図を出すように頼む。すると遥は床に衛星写真のような地図を表示する。

だがよく見るとそれは動いている。どうやらon timeの衛星からの映像のようだ。


「今、私はどこにいてその島はどこにあるの?」


静がそう言うと遥は


「今いる『イミグラ』はここです」


とオーストラリアのような形をした大陸の中央を指差す。


「『イミグラ』?移民船があるから『イミグラ』?そのまんまね」


と静は笑う。


「ごめん、話がそれちゃった。で、その島は何処になるの?」


すると遥は大陸の東の端を指差し


「ここから船で渡ったこちらになります」


と、さらに大陸から少し離れた所にある島を指差す。


「『船で渡る』って事は船が出てるのね。無人島ってワケじゃないんだ」


「はい。魔獣の多く住む島ですが、それを目当てに渡航する人々がいるので船は出ているようです」


魔獣。遥の誤解により生み出された存在の1つだ。魔法を行使する獣。だがそれだけだ。肉体を持つ生き物であるならば自分の敵ではない。静はそう確信する。


「決まりね。行くわ。永遠も連れて行くけど構わないわよね」


「構いません。ご子息のお二人はどうしますか?」


静は少し考えると口を開いた


「ここが安全だとは思うんだけど…あの子たちに聞いてみて『行きたい』って言ったら連れてくわ。そうだ、その島って名前あるの?」


遥は情報を検索したが、島に名前はないようだった。



「島に名前はありません。ですがその隆起した地盤は『ナワの樹海』と呼ばれる森林地帯の奥地にあり、その手前には『ナワ』と呼ばれる街があるようです」







『ナワ』の街のあるあの島、名前がないのですがその事に特に意味はありません。つけ忘れていただけです。

どうしよう?名前あったほうがいいですよね。何にしようかなぁ。

『アワージ島』とか。『ショード島』もいいですね。

『イン』の街もあるし『イン・ノー島』もありですね。

ちなみに『カンド』の街は『港街・神戸』から取りました。知人に『神戸』と書いて『カンド』と読む名前の方がいましたので。


そしてカンドの街の漁師『シド』の名前の由来になった、海人様が住むという『シードゥマジマ

シードゥマジマ。

ここまで書けば『海人様』って誰だかわかります?

だから結月は祐樹が『海人様の旦那』と呼ばれた時に驚愕したんです。



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