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らせんのきおく  作者: よへち
結弦編
198/205

第198話 『選択した未来』



結弦ゆづる。私たち『天人』は世界の真の姿を知る者として、世界とそこに住まう者たちとの間の『調停者』でらなければならない。それはわかるわよね」


相変わらずの無感情で言葉を紡ぐしず。それに対し


「ふんっ、そんなこと知ったこっちゃないよ」


結弦ゆづるは吐き捨てるように言葉を返す。


天人わたしたちは世界の継続を望み、『世界』と契約した。その責任があると言っているのよ」


だから、世界の秩序と安定の為に『ニースの消滅』を受け入れろとでも言うのか。結弦ゆづるは髪の毛がさかたんばかりに激昂する


「知るかっつってんだよっ!」


拳を握りしめた結弦ゆづるが今にも飛びかかろうとする、そんな時だった。


「待って!!」


ニースが結弦ゆづるを背後から抱きしめ、それを止めた。


「ねえユヅ兄、もうやめて…」


「なんでだよっ!やめられるワケがないじゃないかっ!!」


ニースの『世界からの消滅』、それは死ぬことと同義だ。

結弦ゆづるは振り返り、ニースの両肩を掴んだ。


「ニース、君がいなくなったら、僕は…僕は…」


そんな結弦ゆづるしずは追い討ちをするかの如く、さらに無感情に言葉を浴びせる。


結弦ゆづる、そのはもう諦めなさい」


次の瞬間!神のような速度、まさに『神速』で結弦ゆづるしずとの距離を詰め、猛烈な『怒気』とともに拳を繰り出していた!

だがそれはしずに見切られ、あっさりとかわされる。至近で、噛み付かんばかりの距離でははを睨みつける結弦ゆづる


「…かわりなんてすぐみつかるわよ」


「っざけんなっ!」


一旦後ろに跳んで距離を取り、再び拳を構える結弦ゆづる。だがその拳をニースがその手で優しく包み込んだ。


「ねえユヅ兄、もういいよ。私、ユヅ兄がそんな風にしてシズさんに逆らってくれて、怒ってくれて、もうそれだけで充分だよ。だから…」


だから…おのれの消滅を受け入れるというのか。いやそんなワケがない、現に微笑むニースはその瞳に涙を浮かべ、少し震えている。

当然ながら結弦ゆづるもそんな事を受け入れられるはずもなく


「よくないっ!そんなの僕がダメなんだっ!」


今度は結弦ゆづるがニースのその手を握りしめた。

一度大きく息を吸うと今度はゆっくりと息を吐き、若干の冷静さを取り戻すと結弦ゆづるはニースの瞳を優しく見つめる。


「聞いてくれるかいニース。僕はね、本当に愚かなんだ」


そう言って結弦ゆづるはニースの前にひざまずいた。


「ニース。僕は君の想いに返事をする事もなく、それでも君はなんとなくずっと僕のそばにいてくれるものだと思ってた」


結弦ゆづるはニースの手を取ると、その手を優しく包み込み、ニースを見上げた。


「でもね、自分の欲しい『未来』は自分で選ばなきゃいけない、勝ち取るべきなんだ。そんな当たり前のことが今になってやっとわかったんだよ」


そして結弦ゆづるは片手を胸に手を当て、告白する。


「ニース。僕と結婚してくれないか」


僕と共に生きてくれ、と結弦ゆづるは微笑む。途端、ニースはボロボロと涙を流し、ひざまず結弦ゆづるに抱きついた。

言葉も出ず、ただ涙を流してニースはうなずき続ける。


地下のホールにニースが鼻を啜る音だけが響く。


「ありがとう…でもまずは」


ここから逃げなければ未来などない。

だがあのメサイアから逃れられる場所なんて『仮想この世界』には何処にもない。それに最高権限者アドミニストレータである祐樹ちちははにはあの本による世界改編も通用しない。


「だからといって…!」


絶対に諦める事など出来ない。これからの未来、彼女ニースと共にあろうと決めたのだ。たとえどんな手段をもちいたとしても…!

ひざまずいて抱き合いながら、結弦ゆづるはニースの耳元でささや


「ニース。僕はもう決めた、僕は我儘わがままに生きる。僕は僕のために、君を守るために、その為に生きるよ。他の全てをブッ壊してでも!」


決意も新たにニースの手を取り立ち上がった結弦ゆづる

が、その目に飛び込んできたものは、先ほどまでの無感情とは打って変わり満面の笑みで微笑むはは、そして


結弦ゆづる、すまん」


と手を合わせ、若干の苦笑いで謝っている父・祐樹の姿。二人とも普段よく見るいつも通りの姿に戻っていた。

そんな様子に拍子抜けするのの、結弦ゆづるは油断をしない。


「な、何がおかしいんだよ!?ジャマするんだったらたとえ父さんが相手でも僕は容赦しない!」


僕は彼女と逃げ切ってみせる!と身構えた結弦ゆづるに、しずが優しく声をかける。


「ごめんね結弦ゆづる。ちょっとだけそのまま待っててくれる?」


そう言うとしずはドヤ顔でメサイアへと向き直り


「どう、メサイア?」


「………登録の変更を確認。最高権限者アドミニストレータとの条約により当該人物を脅威の対象から除外、いで脅威の消失を確認。現時点をもって警戒フェイズを破棄し、システムを通常ノーマルモードへと移行シフトします…」


そう言うとメサイアは目をつむり、その着ている衣装を白を基調にしたモノに変化させ、そしてその髪も漆黒から透き通るような水色へと変化した。

ハルカが戻ってきたのだ。その戻ったハルカが一言



結弦ゆづる様、ニースさん、ご結婚おめでとうございます」



そう言ってニコリと微笑んだ。







静の茶番でした。

まあ実際にニースは世界の脅威として処分されるところだったのですが、そこから救う方法の一つに『結弦との結婚』があり、静はそこへと誘導したわけです。


次回、時系列を少し戻してその経緯の説明回になります。








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