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らせんのきおく  作者: よへち
祐樹編
15/205

第015話 『今ならこのツボ、200万dです』



翌日。月出の朝。


皆が清々しい顔をしているのとは対照的に、今日は祐樹が二日酔いのような顔をしている。

て言うか二日酔いだ。

昨夜、エイが宿の主人から貰ってきた酒は、双頭の蛇が入った蛇酒だった。

度数も高かったのだろう。少し舐めただけで鼻から白い蒸気が出そうな、そんな酒に祐樹はやられてしまったようだ。


「なんじゃ、だらしないのお」


反論する元気も無い祐樹は、そのまま午前中一杯寝る事にする。

ふとある事に気付き、彼は情報カードを見る。

『condition[hangover]』

って書いてある。

そっか。二日酔いってハングオーバーって言うんだ。

と祐樹は無駄に関心しながらまた倒れた。


---


午後。

二日酔いから解放された祐樹は、とりあえずエイと街を散策する事にした。

広い街だが祐樹が知っているところと言えば宿とギムの店と入口の衛門を結ぶ中央通りくらいだ。

拠点の宿も決まっているせいか祐樹は行動的だった。あちこちの店や路地を見て回る。


食料品店も多く見られたが、干物や干し肉のような保存食的なものを置いている割合が多かった。

素材を狩る冒険者が携帯食にするんだろうか。

もしかしたら冷蔵庫のようなものがないのか?

色々と思案する祐樹に


「らっしゃい!兄さん。今日は鮮度のいい魚が入ったんだ。よかったら見てってよ!」


威勢の良い獣人のおばさんが声を掛ける。

顔は殆ど人間だが犬のような垂れた耳が頭の横に付いている。おばさんなのに何だかかわいい。

だが祐樹達は旅人だ。生魚を売られてもなぁと困惑の表情を浮かべていると


「なんだいアンタら知らないのかい?この辺の店は食材を持ち込んだら格安で調理してくれるんだよ」


その一言に祐樹は購入を決定。祐樹は魚を食べたかったのだ、とても。


「そうか。姐さん、これ買ったら調理して貰えるオススメの店ある?」


「そりゃあ何つったって『ガイル』の店だよ!あそこに持ってきゃ腐った魚でさえ最高の料理にしちまうよ!」


「『ガイルの店』って?」


「ああ、『鶏の達人・ガイルの店』だよ。鶏料理を主にやってんだけど食材なら何を扱わせても超一流さ」


鶏料理と聞いてピンと来た祐樹。


「そこの通りを曲がって真っ直ぐ行ったとこにある店?」


ギムの教えてくれたあの店だ。


「なんだい知ってんじゃないか。そこだよ。じゃあこれ買ってくかい?3000dだよ」


祐樹は例によってカードで支払う。


「まいどありっ!これは凍結の魔法をかけてあるから明日までこのまま凍ってるよ。ガイルのとこなら解除できるから今すぐ持ち込んでも大丈夫だよ」


「ああ。ありがとう」


「この街では滅多に出ない海の生魚だ。あたしが食べたいくらいだよ。堪能しておくれ」


「そうだな。今夜あたりガイルの店で酒と一緒にいただく事にするよ」


女店主に別れを告げ、店を出る祐樹達。手にはエラから荒縄を通した大きな魚が一尾。

買ったのはいいが、その後を考えてなかった祐樹。これを持ち歩くのはさすがに邪魔だし絵的にもどうだ?店によっては入店拒否のおそれもある。

困った祐樹は、とりあえずギムの店へ行く事にした。


---


「ようお二人さん。今日は…うおっ!なんだその魚!?」


祐樹の予想通りのリアクションをとってくれるギム。彼もなかなかのお人好しだ。


「やあギム。そこの食料品店で美味そうだったから買っちゃったんだ。あの鶏料理の店、ガイルの店って言うんだよな?そこで料理してもらおうかと思ってさ」


「おお、そりゃいい考えだ。で、どうすんだ?今から食べちまうのか?」


「いや、今夜あたり酒と一緒にいただこうかと思ってる」


「そうか。ならちょうどいい、会わせたいヤツがいる。今夜ガイルの店で少し時間を貰えねぇか?」


そう言うギムの表情は、少し真剣味を帯びている。


「ん?ああ、かまわないよ」


「すまねぇな。じゃあその魚、俺が預かってガイルに渡しておくぜ。今夜食べんだろ?」


「ああ助かるよ、ありがとう。じゃあ今夜、日が沈んだらガイルの店で」


「おいおい、俺の店じゃ何も買ってってくれねぇのかよ」


ギムのその言葉に祐樹は買い足す物があった事を思い出す。保存食だったウインナーは昨夜エイと食べてしまったのだ。

例によってカードで支払おうと祐樹がカードを取り出すと


「ああ、金はいらねぇぜ」


「えっ、なんで?」


「この魚、今夜食べんだろ?ユーキ、お前ぇさんこれ2人で食べ切るつもりか?」


「あっ」


「ご相伴に預かろうって魂胆だよ。だからそいつぁ気にせず持ってってくれ」


「そっか、じゃあ有り難くいただくよ。それじゃあまた今夜、店で」


そう言って店を後にした。


手ぶらになった祐樹達はあらためて街を散策する。

怪しげな魔道具の店で魔王崇拝の宗教の勧誘を受けたり。

スラム街に入ってしまって慌てて逃げ出したり。

夕方の色街に入り込んで目のやり場に困ったり。


そして日も沈み、街のどこかしこから夕食を準備する良い匂いが漂ってくる。



「ユーキよ。腹も減ったことじゃし、そろそろガイルの店へ向かわぬか?」






私の家から車で30分ほど行ったことにある漁港の市場では、近海で獲れた大きなブリが丸ごと一本2000円くらいで売られています。まあ値段は年と時期によるのでしょうが。いつも欲しいなぁと思いながら横目で見ています。

3人家族で10キロ近いブリ一本、消費できませんよね。食べてみたいけど。


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